水星の魔女

●水星の魔女・最終話。いろいろあって大団円。前も言うたけど、各陣営の利害愛憎ゴチャついた関係性の束を、クワイエットゼロを軸としてすっぱりと、強引に、単純な構造に持ってったのが力業。都合のいいハッピーエンドだがその為のギミックは今までの話で周到に仕込んである。…ポッと出のラスボスおっさん以外は、ですけども。あのキャラの弱さは多分狙ったものだろうなあ…登場人物それぞれの思惑、善悪のグラデーション構造を描くには出ずっぱりの巨悪ってのは邪魔だったのだろう。ペイル社の4人ババアでさえも、ですな。

大枠の闘争構造をテンポよく交通整理した上で、各キャラのエモーショナルな描写にはちゃんと尺を取ることに注力している。ここでデータストームという魔法の杖で、0話の面々どころかエラン4号まで出してきてちゃんと役割を振ってんのが気合入ってんなと思った。エリクトさんもワケ判んない機序によってスレッタ・ミオリネ新婚夫婦のウザいマスコットキャラに落とし込んでんのもご愛敬。いろいろ遺漏がないなあ。…そういやデリング総帥はどうなったんですかね。内田直哉は一応「うーん」つってたんで出演料は発生してましたけども。

●総評。練って練られたプロジェクトだったなーってのが一番の印象。キャラクタドライブの為の各人の立たせ方と関係性、ストーリードライブの為の周到なシリーズ構成の両輪に、相当な手間かけたんだろうなってのが感じられる。このアニメが気に入らない人は、出来の悪さじゃなくてその方向性によるものだろう。ここが足りないここがダメって場所があっても多分、良くも悪くも制作陣の所期の出力結果だろうなーって思わされる。総じて、完成度が高い。

うん、つまり余裕や遊びが少ないのね。例えば上記のキャラクタの立たせ方で言うなら、地球寮の各人にあっては目立った数名以外は今一つこっちの思い入れが薄い。このご時世に1年スパンでのんびりとロボアニメ作るなんてリスキーなことができるワケもないし、そらもうしょうがないことではあるんだけど、出来ればもう1クールほど尺取って学園でのどうってことないドラマを盛ってあったらなあ、と思う。サブキャラ担当回があったり1話使ってバカネタやったり野球回があったり。

そうでなくても話の構造がきっちりし過ぎてちょっと息苦しいとこはある。不必要とは言わんが想像の余地のありそうなフレーバーやディテイル、そういうのがもっとあればなと。これは私が本筋ではないフィラーエピソード好きだってのもあるだろうけどね。…別な言い方をすれば、ちょっと駆け足気味だった最終話シーケンスは、この作品の前置きシコミ規模からすると「まあいい感じじゃないかしら」って思った。もう少し喰い足りないくらいが逆に上記の「余裕」を感じさせるみたいな。重ねて言うけど個人的な嗜好です。

ともあれ、作品の熱量と物量と完成度には異論がない。スレッタとミオリネの主役二人は魅力的で対照的で、がんばれーっつちゃうエモさがあったし、エアリアルを筆頭にMSどももかっちょ良かったしねえ。チュチュのスナイパーカスタムが量産機からの一芸特化メカでとても好きです。これで制作側の期待通り、新たな世代のガンダムタニマチが増えてくれるといいですなあ。そう思います。