少女終末旅行/キノの旅

少女終末旅行・5話。前半でまず住居跡、家という概念は彼女たちにとっていささか現実味が薄い。ユーの言うようにケッテンクラートが家と言えるのかもしれない。椅子に座ってぼんやりしつつ、本棚だのベッドだのを仮想的に部屋に並べて妄想してる辺りが妙に切ない…いや、本人たちにとっては別に悲しくもないことだろうが、脇で見てる方にとってはねえ。流しにあの「さかな」がごろんと横たわってるだけという、そんな想像力の限界描写とかね。

ひるねで何やらフロイトさんが下卑た笑いしそうな夢を見てるチトさんの話(この夢のシーン、非常にシンプルなラインの取り方でざくざく動くアニメートがとても良かった)を挟み、雨宿りの話に繋ぐ。雨だれをヘルメットや空き缶で受け、それ聞いて喜ぶという大トトロみたいなことしてんなーとか思ったら「これが音楽というやつかしら」とか言い出してまた少ししんみりする。人の世界が構築してきたもの、その大部分はもう失われてしまっているのだなあという寂寥感。…雨だれの音がリズムを取り出し、そこからシームレスに特別エンディングに繋げる演出はキマりすぎてちとイヤミなほど。話を詰め込んでるのとは真逆のペースだが、それだけに余韻の残し方には絶妙なものがあるなあ。

キノの旅・5話。掌編二つでご機嫌を伺うの巻。前半は建国の英雄、その彼が使っていたモトラドの話。前フリとして「伝説的に持ち上げられている英雄の歴史」を見せといて、その上で骨董品の如く祭り上げられもう走ることもない彼のモトラドを見せる。「走れないことは地獄だ」と嘆くモトラドに「いや自分ただの旅人なんで」と返すキノさんが相変わらずの他者との間合いである。そして国の去り際、旅人に憧れる少年に「あの英雄モトラドの話聞いてやったらどないや」と嗾けることも忘れない。うん、こういうささやかな「悪意」は好きだなあ。

後半はうそつきたちの国。こちらにも英雄は出てくるがいささか悲劇的な経路を経て、今や帰らぬ人をただ待ちつつそわそわと過ごす毎日。彼を知る周囲の知己、彼のメイドである女性、それぞれにどこか人間らしくも優しい「嘘」で彼を処遇する。がしかし、その彼も実は…という、何となく星新一的な重層性のある話。それぞれにストレートじゃない方向性が上手いことかみ合って一つの小さな世界を作ってる、その辺りに作者のドヤ顔が見えるようなエエ話ですな。

英雄モトラド斧アツシ、頼んない待ち人男に石田彰とやはりゼエタクなキャスティング。特に斧アツシ、前も言うたけどもんのすごい「エロアニメ竿役声」のおかげで、この人が出てくるとアニメに面白い演技的厚みが出てくるのだよな。