氷菓/もやしもん/夏雪

氷菓・18話。記憶にある教師の一面は奉太郎と里志たちの間で少々の齟齬がある。「ヘリが好き」という先生の言葉の背後にあるものは何だろう。またしても奉太郎は過去の事象に触れ、そして少々ほろ苦い思いをするのである。…うむ、相変わらず細かしくてトリビアル、しかし相応のヘビーさもある掌編ミステリであってなんかワシ好み。毎度言うけどアシモフ短編っぽいよなあ。

ヘリ好き先生についてのミステリを通じ、今回語られるのは奉太郎さんの「意外な一面」である。奉太郎本人にとってはそれは「基本省エネだけどたまには動くヨ俺」ってことなのだが、ちたんださんの視点からは少々異なるものとなる。ちたんださんが「上手く言葉に出来ない」と言うそれは、奉太郎が他者に正対するその態度、虚飾なく他者と構築する関係性のことだろうか。カンヤ祭りの時にちたんださんが「他者を操るのはこりごり」と言っていたけれども、今回の話のコアもそれほど離れていないような雰囲気がある。ま、ちたんださんって奉太郎に対しては無意識にやらかしてるコトのような気はすんですけどね。まあ。

とまあそんなお話ですけど、それ以外の側面だと今回は「奉太郎とちたんださんの図書館デエト」っちうことになりますわなあ。野菜とか虫(フンコロガシ)の本に目ェキラキラさせてるちたんださんが何かもう、そらかわいいよなしょうがねェよなって感じですよ。田舎の農家のお嬢さんっていいよね、というお話ですよ。ねえ。…あと、「ヘリが好き」から始まる謎話ってことで、「ははあそれは乗り物のヘリコプターと教室の端っこたるヘリのダジャレだな? そうなのだな?」とか思ってしまったワシは実に浅い男である、ってのが判りました。はい。

もやしもんリターンズ・7話。収穫祭のシメであり、まァ何だかんだで感慨深いものがあったりする面々である。ついでにお祭り一番の称号を期待していたのだが川浜と美里のデコボココンビの姦計はあっさり露見して全てがパー。それもこれも樹教授の掌の上でありましてね…っちう話。

てことでフランス編に突入、学生野郎三人組の異文化道中である。この作品だけあってメインのネタは食文化だけど(やたら量が多くてしょっぱくて、気を緩めてたらやたら高価い…っちうのは妙なリアリティがあるな)、どこ行こうかという話題で「美術館行こうや」「いや街だ街、街こそパリだ」ってな川浜と美里はやっぱ大学生やね。興味対象が文化構造に行ってるのがエエなあ。ワシもこういう先輩に振り回されたい。いややっぱ遠慮したい。

夏雪ランデブー・7話。自分への思慕と亮介さんへの告白を同時に受けて、もうどーしたものやらのアツシさんである。なんつーか、三人のだれも素直に得をしない方向に関係性が進みつつあるな。それは主にアツシさんのせいなのだが、この人にとってもう損得がどうこうってのはあまり問題ではないのだろう。少なくともあとあとの影響を考えて行動している、ようには見えない。ま、そうなっても仕方の無い、特殊な状況ではあるんだけどね。

微妙な距離感の海デートの後、なかなか型どおりで王道の「朝チュン」展開と相成る亮介(中身ダンナ)とロッカちゃんである。…ホンマに朝の空気にチュンチュンスズメが鳴いてる絵ってのも実は久々に見た気もするが、まいいや。とにかく、この状況が全体話数の真ん中辺りに配置してあるってのがこの作品のジャンルとして判りやすいやね。セックスすることがゴールでもないし、かといってセックスから始まってそれが横溢する展開でもない。そんな人々の話、であるのな。

あとなんか箇条書き的に。■メルヘンパートの水中シーン、三次元的な機動や立体感が妙に丁寧で面白かった。いや、あんましダイナミックな動きの多い作品でもないもんで。■現実世界の亮介(中ダンナ)はメガネにしてますが、やっぱメガネって便利だな! 状況によって白く不透明にして心情を隠す、ってのはコミックの表現の中でも結構な発明だと思うわ。■相変わらず中村悠一による福山潤エミュレートはやたらに精度が高いなあ。福山さんもそない特徴のある口調の人ではないと思うんだけど、声優さんってプロいね。何と言うか、単なるモノマネじゃなく、「重層的な存在となってる特殊なキャラ」というのがちゃんと見えるくらいなのが凄い。■メルヘン世界で人魚姫ロッカちゃんに「色ボケ」と言われた亮介さんですけど、現実世界ではしっかりロッカちゃんの方が「色ボケ」ってた。自覚的だからこそそういう言葉を使ったのか、な。