氷菓/坂道のアポロン/つり球

氷菓・10話。イリス先輩におだて上げられちゃって俄然やる気になってる奉太郎さんである。いろいろ考えた結果「このミステリ映画実はカメラマンが犯人でした」というネタをひねり出してイリス先輩に承認を受け、映画は完成するのである…が。どーも古典部々員たちの反応が芳しくないのが気にかかる。そういやザイルってどうしたっけ? というお話。

ストーリィの構成要素としてはこの奉太郎の結論は「真実手前の暫定的地点」っちう扱いだろうけど、単品映画として見た場合はまあ、これでオッケーですよな。ちょっとメタミステリ的なツイストもあって、素人が学園祭で制作した映画ということで普通に面白い。観客の反応も上々だしね。しかしそんなこと…映画の評価云々は、多分このアークの中ではあまり関係ないことなんだろう。部員たちの反応の悪さはそういう、スクリーンのさらに奥にある「何か」を感じ取った結果のことであろうか。

イリス先輩からいろいろ褒められたのでやる気になった瞬間、奉太郎の視界がぱあっとピンク色になるのが何つーか。「自分は特別なのか?」とわざわざ自答したりして、ちょろいちょろいよ奉太郎さん。んでもっておだてられたから一所懸命やってんな、ってのが部員たちにモロバレなのもおかし悲しい。奉太郎さんは推理モノの推理担当としてクールかつ頭の回る人ではあるが、そういう年相応のスキや弱点も多いよね。…ここでまた里志さんがあからさまに「伏線ですよー」ちうてカゲのある態度見せてますが、そのバラシは本エピソード中にやるのかしらん。それともまだ先に引っ張るか?

坂道のアポロン・11話。千太郎の父帰る、そのわだかまりを嫌って千太郎が家出する、ボンは何とか引き止めて文化祭に向けてセッション練習する、おやじさんとりっちゃんが加わってエエ感じになる、千太郎バイクで事故って妹を危機にさらす、ボン今回は慰労空しく千太郎は家出する…というまあ、そんな30分。うーん、これは流石に詰め込みすぎた! オリジナル作品ならこの、二度の失踪シーンをまとめたりなんだりでシンプルにする所だろうけどねえ。苦労してはんな。

とまあ、いささかバタバタとした1話となったので、そこここにあるエエ感じのシーンもちょいと影が薄くなったキライがあり。例えばそれは地下室で練習に励む三人の若者の姿であり、あるいは翩翻とシーツたなびく病院の屋上でのボンと千太郎の会話であり。特に後者、今までもちょいとホモっぽいシーンはあったものの、この抱き寄せての涙はそんな雰囲気が更に濃厚な状況である。けどまあ、野郎二人の朋友ドラマとなれば、一種のプラトニックなホモっぽさは自然と出てくるものであるしね。話の流れも然りながら、空の青にシーツの白、そして登場人物の服の白赤黒という画面のコントラストも印象的であった。

あとこれはすげえどうでもいいネタだけど、千太郎のバイトシーンで出てきたオトコビールね。確か「人狼」でもそんな銘柄出てきてたけど、何か元ネタあんのかしら。男だったら男ビール。

つり球・11話。アスロック直撃の釣具店からはなんとか助かった船長さんである。まね、あそこで人死にを出すと話のシリアスバランスを取るのがスゲエ難しくなるしね。そして万端とはいえないが準備整い、ダックさんたちの制止を振り切って最後の大物釣りに漕ぎ出す四人の姿。…この辺の協力セッティングは、脚本上でかなり気ィ使って丁寧な構築がされてんな、と思ったりした。それぞれに見せ場と役割があり、素直に感情移入させるように流れを設えてある。そ、それこそダックさんたちにも、ね。ちうかやっぱし、見た目のうさんくささはともかく、あいつらも一応ちゃんとした目的意識持ったエエモンではあるんだよな。

そこまで気合入れて状況に挑むも、しかしここで万事丸く収まっては割とお話としてアレなので、善戦空しく希望潰える展開となるんですけどね。うん、いかにベタだの何だの言われようと、こういうラス前クリフハンガーは良いものだ。大きな谷がありゃこそ、その後の盛り上がりが聳え立つというものだ。…こっからそのまま大バッドエンドへ一直線、という作品構成もアリっちゃありだけど、この作品ではやっちゃダメよ? 主にワシがショック受けるから。

主にCGによるものだと思うが、荒れた海原のシーンはかなりダイナミックな見た目になってて迫力あったな。一瞬だけ海上に跳びあがる「龍」の絵とかも良い「エヘクト」であってよろしい。あと今回、いつもよりキャラの顔立ちが整い気味だったのが気になった。いや気にしなくてもいいけど。