ダンタリアン/うさぎドロップ/夏目友人帳

ダンタリアンの書架・2話。さるお屋敷のさるご令嬢に書物群の鑑定を頼まれたヒューイさん。しかしそのご令嬢にはよろしからぬ噂が付きまとう。彼女に関わるものは何者かに殺される…と。そして現れる謎の巨大でく人形…というね。


この世界観には「幻書」というものがあり、それは特定の者に大きな力や災いをもたらす。…とまあその程度しか設定が判らないのはよろしい。くだくだしく説明されるよりはそっちの方が好きだ。でもねー、どうせなら登場人物、少なくともヒューイさんはある程度「それって畢竟どんなもんやねん」等の好奇心を持ってほしいなあとか思う。何だかフツーに馴染んでるのでダリアンさんからいろいろ訊いたのかな、と思ったらそうでもなさそうな感じだし。幻想文学的と言わば言えるけど、割合とカッチリした表現になりがちな地上波アニメにはそぐわない技法ではあるよなあ。


などと文句はつけているが、しかし今んとこ割と楽しんで見てます。やっぱ「本の話」は面白い。今週はどんな書籍が出てくるのかな、とかそういうのだけでも楽しいのであってワシはちょろい。今回の幻書は二冊、一発目はケイロンにステュクスというギリシャ神話だが、もう一冊はなんとウガリト神話。粘土板が出てきたのでメソポタミア近辺ネタかと思ったがそっちでしたか。まあ考えてみれば、ヘブライユダヤ)由来のゴーレムを斃すのにそのご先祖の伝承を使うのは平仄があっている。んでもってやってることはサンダガなんですけどね。ま、バアル神さんは雷神ですから。


そんな様なおかるちっくなモノを出しときながら、ご令嬢の乱心は呪いではなく「幼少時の虐待によるものではないか」と何だか合理的な解題をくっつけてくるのがなんか面白い。…この辺のバランスがイマイチつかみ切れてないワシだが、おいおい慣れてくるじゃろ。あとクライマックス前の晩餐シーン、それ自体に物語的な意味は無いものの、ご令嬢が持ってきたお料理のお肉、この生々しさは妙に印象的だった。アレは状況の不気味さにエエ薬味を添えてたなあ。


うさぎドロップ・3話。夜に朝に、仕事に子育てにと流石に忙しい大吉さんである。職場の先輩母さんである後藤さんの助言、そして彼女のサバけた性格を参考にして、大吉さんはもうちょっと余裕のある部署に移動することを決意する。大吉お母んとこに精神的なパイプも作れたし、生活もなんとか安定しそうだし、まあよしよし。…あと気になるのはリンさんの母親、正子さんについて。いまだその姿が見えない彼女については、周囲からもリンさんからもあまり良い言葉が出てこない。さて…ね。


リンさんのおねしょは死に対する恐怖によるものである。彼女にとって「死」ってのは、こないだ爺さんが居なくなったこと、そして(自分よりはるかに年上である)大吉もまた居なくなってしまうのではないかということ、そんな具体性を伴った恐怖でもある。…大吉さんがおねしょのことを「怒らないよ」と言ったのはとても大きい。リンさんの不安や恐怖を見えなくしたり断ち切ったりするのではなく、認めて共有したってことだ。こういう不安感をムリクリ抑え込んではダメだから。人生の大先輩である自分が一部、受け持ってあげよう…っちうことやね。子育ての経験や才能はともかく、大吉さんは人を人としてガッチリと向かい合える強さがある、っちうお人なのだろうな。


大吉のお母んに妹にいとこさん、先輩の後藤さんに謎の正子さん…と主要キャラに女性が多く、そのだれもが特徴的な性格と役割を持たされているのが面白い、っちうか女性作家らしいなと思ったりした。あと今回特徴的だったのは音ですかね。妹さんの「あの仕上がり」な傍若無人さ、正子さんがリンさんにとって苦手な存在であるという表現、それらを跫や掃除機の音で提示している。…怖いとか嫌いとか、そういう感情は言葉や理屈じゃないからねえ。こういう生理的な情報で表すってのは効果的ではあるよな。


あとは、まあ…やっぱしリンちゃんかわいい。また遊びに来ていい? の台詞をお母んじゃなく、大吉っつぁんにしか言えないってのもいいけど、そのあとのバイバイにヤられた。そら陥落するわい。


夏目友人帳 参・4話。桜の妖は枝上に座っている。誰にも見られることなくだらだらと過ごしている彼女には、しかし一つの心残りがある。唯一自分のことを認識してくれた(基本的には脅かしてただけなんだけど)あの少年、アイツはどこにいったのだろうか。んーもちょっと言い方あったんと違うかなーワシー、というお話。


てことで基本的には今回、ほとんどイヴェントは起こらない。夏目さんが過去に出会った妖に再会するという、アバンにて同窓会のことを話す塔子さんのエピソードとパラレルな構造だけっすな。モチーフは「別れの言葉の心残り」ですか。人から見えないので一人ぼっちな妖、妖怪が見えるので一人ぼっちの少年。「一人で生きていきたいなあ」とひとりごちていた少年が、ちょいと年月経た後に妖に会いに行くようになる…という、ただそれだけのことが30分の作品として十分に成立する豊かさを持っている。


…にしてもまあ、夏目さんはあんな辛い時期を経てよう今の性格になれたものです。多少引っ込み思案気味とはいえ、歪みも何も無く健やかでよろしい。マンガだからっちゃそうなんだけど、やっぱあの世間的に孤独になってる描写はリアルにしんどかったしねえ。