未来日記/夏目友人帳/ラストエグザイル

未来日記・23話。ユッキーとユノの二人の世界。何だかんだで接近してゆき一線を越えるお二人であるが、ふとユッキーの漏らしたアキセさんのメッセージの話で一気に様相が変化する。そしてムルムルより明かされる「二人のユノ」についての謎。この世界は「二周目」であり、一度時間を巻戻してやり直した時間軸であること。今のユノは一周目よりの存在であり、二周目の自分を殺害した者であること。…いやー、なんかいろいろ超越的な話になってきたなあ。


とまあ話のメインの流れはともかく、この作品の毎度のことながら登場人物の心情がちょっと荒いんだよね。毀れつつある世界に二人きりというかなり虚無的な舞台に居るにしては、(ユノさんはともかく)ユッキーの感情が無頓着過ぎる。こんな状況下らぶらぶしてる場合かいな、いやするにしてももっと逃避的にならねェ? っちうね。あとユノさんの正体についてあそこまで衝撃を受けるという感覚もちょっと判りにくい。ワシなら「えええ、でもまあユノさんの性格ならやりかねん」とか思うところだけど。以前「ユノが偽物である」と知らされた時の反応と呼応していると言えんこともないのだけれど…ね。


えー、てことで、結構デカい話になってきましたな。前回も言うたけどもう、ルールに則っての残酷頭脳ゲームという話ではなくなってきた感じ。グダグダにならなければエエけど、さてどういうオチを付けるのかしらん。


夏目友人帳 肆・最終話。承前、実家への路の途中でアヤカシに心乗っ取られた夏目さん。心奥底への旅はそのまま過去への旅でもある。夏目さんがこの地で経験した日々の記憶がねえ、これまたどうにも辛いというか切ないというか…。誰がどう悪いワケでもなく、それこそアヤカシでさえそこに居るだけの存在でもあるのに、それが見えてしまうことがこの状況にどれだけ悲しみをもたらすか。そこで「いや、その記憶も自分の一部だ」と言えるようになった夏目さんの強さっちう話ですわな。


長い寄り道の末、夏目さんはご実家にたどり着く。記憶の中で結局完遂できなかった旅路。そこで何をするわけでもないのだが、ただ縁側に寝て夕日を見ているだけでも彼の心は満たされてゆく。…さあ帰ろう、今の夏目さんには今の「家」がある。てことで、ちょいとゆったりしすぎたかとも思うが、シーズンのシメとしてはエエ感じだったのではないでしょうか。


夏目さんに取り付いた妖怪が、最後に黒い蝶の群れとなって散り去ってったのが面白いな。ある意味、キレイな絵でもあった。胡蝶の夢の例を挙げるまでもなく、多分この妖怪は半ば夏目さんの記憶と不可分になってたのかもしれまへんな。…同時に蝶は変化変容のシンボルでもある、ってのは羊たちの沈黙で言ってたネタ。あれは蛹だったっけか。まいいや。


●総評。そーか、これでもう4期目なのか。てことは今まで纏めると分量的に一年分のシリーズってことですな。昨今は2クールモノもじわじわ増えてきてるような感じではあるが、もっともっとでここまで細く長く支持されたアニメってのもそこそこ珍しいと思う。いや他にも例はありますけどね。


長い話を通じて少しずつ夏目さんの立ち位置も変わりつつあるように見える。ガラッと変化するんじゃなくて、その場所に立っていることの難しさや意義が顕在化している、というか。人と妖との境界線上に立ち、どちらかの色に全て染まることはない存在。それは境界から離れた位置に立つものの純粋な強さにはとても及ばないだろうが、それでも彼のその「中途半端さ」には大きな意味がある。…カタギとプロの境界線と置くならば、ブラクラのロックさんを思い出しますな。彼も同じくコウモリ性に自分の意義を見出そうとしていたような気がしますが。


この第4シーズンの特徴としては、前後編が多かったことが挙げられますかね。そんなけゆったりと話を語っているとも言えるけれど、ワシとしては初期によくあった「奇譚的な味わいの掌編」もかなり好きなので、そっち方面の色が薄まったのはちと寂しく思う。そないたくさんアイデアもひねり出せないかもしれまへんが。ま、それは個人の感想。


てことで、この作品に期待するものはほぼ十全に提供されたってとこではないでしょうか。大興奮でテレビにかじりついたってな作風ではないが、駘蕩としてお付き合いするには心地よいアニメだったな。まだアニメとして先の道のりがあるのかどうか判らんが、もしあればまた視聴してゆきたいと思います。


ラストエグザイル-銀翼のファム-・最終話。ルスキニアとグランエグザイルの崩壊、そしてその後の世界。ラスト舞台にてラスボスと対峙して決着、大団円を経てグランレースでシメる…という、構造としては王道の運びではあるんだけど、どうでしょうねえ。ちょっと脇が甘かったような印象が残る。


まずルスキニアさんの行動原理がワシにはイマイチ腑に落ちなかったことっすかね。言動からすると自滅すること前提での行動だったようだけど、とするとやはり「にくまれ屋」として世界の結束を図るための横暴だったということだろうか。ちょっとそれでは底が浅いような気がするので、ワシどっかでディテイル見逃してたのかもしれない。劇中でファムに「大人ならやったことの責任とれ」と言わせているように、制作側もルスキニアを完全に超越的な存在としては描いていないことは判るのだが…ねえ。


そしてやはり、ファムについて。上記のルスキニアの行動は全て本人承知でやりきったことであり、実際ファムが状況に対して何か影響を及ぼしている部分は多くない。いやまあサーラ様をお救い申し上げたのは大きいけど…ってよう考えたらルスキニア! てめえそのまんまだったらサーラ様と心中するつもりやったんか! この主君不幸者め! …ええと閑話休題。無論小さな力しか持たない主人公という物語形式ってのも大いにアリなんだけど、この作品における主人公ファムの造形は明らかに「積極的に物語に関与してゆく」キャラなんだよね。それでこの、物語からの疎外ぶりはちょっとかわいそうな気がする。ラストのこの話だけじゃなく、も少しチート主人公っぽく盛ってあげてもよかったんじゃないかな、とか思う。


それでもまあ、最後に平和かつ活気のあるグランレースでシメにかかってんのは、判っててもちょいとほのぼのっちい気分になっちゃったのは確かなので、その辺である程度ワシの負けではある。つーか繰上げ三位入選ってのが地味に酷いな! もっとお頑張んなさい!


●総評。前作についてはこの作品中の総集編で見ただけなので特に言及しない。さて、独特の世界観とメカ/キャラデザインでお送りする異世界…じゃないのか、まあいいやSFっぽいアニメ。今挙げた本作の特徴的部分はかなり魅力的でして、それはワシが村田蓮爾やら小林誠やらのお仕事が好きだから、ってのも大きいかもしれない。実際序盤近辺…村田キャラが小林メカを駆って青い蒼い空を自在に飛び回ってる辺りの雰囲気は、今でも好きだ。


こっから後は上記最終話の感想ともかぶるんだけど、まあ、いろいろと惜しい所の多いアニメではあるよなと思う。かなり大きな情勢を語ろうとしてるのはいいが、その分後半に行くにつれて散漫かつ詰め込んだ印象の話が増えてきてんのがまず残念。各陣営の優勢劣勢の流れがあんまし面白みに繋がってこないんだよなあ。


一つにはファムさんがあんまし主人公として物語のヘソになってくれなかったことがあるかもしれない。いや何も、超人的膂力でもって軍隊相手にばったばったと切り結べと言ってるワケじゃなくてね。狂言回しでも傍観者でもいいんだが、物語の流れにちゃんと引っかかってくれれば問題ないんだけど、どうも流れにはじき出された感じが強くてね。ある程度意図的なものではあるだろうけど、それでもね。


あとは敵役のルスキニアさん、構造と外見は結構魅力的なラスボス悪なんだけど、「悲壮な覚悟で必要悪を推し進める」という相対悪っぽいバックグラウンドの割にはそのリクツに穴が多いのが気になってな。そらあんた、考えが性急で足りてないところがあったんと違いますか、思い込みもあったんと違いますか、とかね。


てことで、美点を持ちながらもちょいと中途半端な点も否めない、っちう印象だったかなあ。あと前も言ったけど、村田キャラってやっぱし動かすには難しいデザインなんだな、っちうのを再認識したりした。服装にも小物が多いしねえ…それにしてもかなり作画的に厳しい場面も多かったのだけれども。まあ。