若さ故の過ちを

●部室に遊びに行ったら学祭準備の真っ最中。明日本番だからな。OBの特権として何するわけでもなくぼやぼやしてたら、後輩の人に「親にエロ本見つかって大変だった、てな話ありますか?」と訊かれた。何でそんなこと訊かれるかって、まあそういう集団だからとしか言えませんがな。


うーん、すまんが大した経験はないのだよ。隣の弟の部屋に忍び込んでエロ本を拝借したことはあるけどさ。ええとそうだなあ、あるとすればだなあ、あれは中学生時分か。深夜のそのそと起きだして寝室のある二階からリビングに降り、深夜のセクシャルな番組をうひょうひょ言いながら見てたとき、かなあ。


こういうケースでは、他者にバレた時を考慮しておろそかにしてはならない幾つかの留意点がある。無難な裏番組をちゃんと確保しておくこと、リモコンは常に手元に置いておくこと、ヘッドホン(当然だ)のコード長は正確に認識しておくこと、などである。それらを正しく遂行する上で、大前提となる条件がある。


ヘッドホンは片耳だけにしておくこと、だ。


当然であろう。周囲の状況に変化が訪れた時にすばやく対処することが必要なのだ。そのために音響センサは外界に対しても開かれていなければならない。…が、その時のワタシはどうやら入れ込みすぎてたようでしてなあ。完全にヘッドホンを装着していましてなあ。状況の変化に気づいたのは親父がリビングの引き戸を開けたその瞬間でしてなあ。


人間、ウロが来ると感情の起伏が平坦になるものですね。親父も多分、下でゴソゴソやってて煩いなあってんで叱りに来たのだろう。「こらボケ」だの「やかましいんじゃ」だの、そういう単語の一つでも吐こうと思ってたんだろう。がしかし、彼が見たのはセクシャルな画像を前にした息子の姿。ええ、息子の姿。振り上げた拳の落し所に困ったのでしょうなあ。「…も、もう寝なさい」とかわいく言ってから寝室に去っていった。


翌日の朝食の冷ややかなことといったら、んー、そらもう極低温下ヘリウムIIの如し。ああ、ワタシに超流動があったならこのまま床に染み込んで行けるのに。ああ。


…とまあ、この程度の挿話しかないのだよ。と言ったら、やっぱし「なんや中途半端な話しやがって」てな目でワシを見る後輩の人。しょうがねえじゃん、それ以外は上手いことやって来た(お互いに)んだからさあ。ワタシだって、経験さえあれば「友人を招いて親父の棚の「ロッキー4」鑑賞会をしたら夫婦スカトロビデオだった」てな話でもしたいよ。…したいか?