フリーレン

●葬送のフリーレン・5話。Aパートは対象人物の記憶から「大切な人」のデータをハックして疑似餌に使う人喰い幽体の話。フリーレン先生はこいつをして「狡猾」と言うけど、これが悪意の人間魔術師であれば本編のように勇者ヒンメルの記憶情報をそのまんま使って失敗なんかしないだろうなってことで、やっぱり魔物野郎にはヒトの情感は理解できないってこったろうねえ。恐るべき理外の存在だが、理外という齟齬があればこそ対処の余地もある。このリクツはずっと通底してるネタではあります。にしてもあの状況で「俺を撃て」「あんたならそう言うだろう」とヤれる、ヒンメルとフリーレンの関係性(まあフリーレンの脳みその中ではあるけど)はエモい。

Bパートは新規参入前衛役のシュタルクさん登場。アイゼン師匠の弟子→勇者然とした若造→ヘタレの臆病者→村思いの好青年→無茶苦茶なパワーキャラ…とまあ、視聴側が受け取る印象をクルックル変えてくる脚本が凝ってることで。「コイツダメですよ」つって屠殺場に向かう豚を見る目で彼を眺めるフェルンさんに、ある種の人々はある種の好意的な感情を抱きそうだなと思った。よく判んないですけど。

前回放送分から引き続き、大振りなアクションも然りながらちょっとした仕草や行動を表現する作画/演出的な傾注具合が尋常でない。部屋へ入る前に手荷物を持ち直す、路上の丸太をやっこらせと乗り越える、etc。こういうディテイルの積層は作品に余裕と奥行きをもたらす大きな効果がある一方、大容量の人日的スタッフパワーを要する上にコンテ段階、いやもっと前からキッチリとディレクションしてないと容易に全体のバランスを崩しちゃう。本作は正しく奏効しており物語の味わいに貢献しているけど、それにしてもまあ贅沢な作品だなあとは思う。…アニメは画面上全て作画されているので平板になりがち、故にどんどんディテイルを盛り込まなければならない…ってな押井守のお説教を思い出すことであります。

村のおばあちゃんに土井美加。こっちも贅沢。そういや実写版ワンピースのコビーを引き続きやってんだっけ? これもそのうち見てみたいけど。