●京極夏彦「虚実妖怪百物語・序／破／急」読了。タテだかヨコだか判らんステーキのようなすさまじい分厚さにしてスルスル読めるってのは相変わらず。物語は水木しげるを親玉とし、荒俣宏と京極夏彦本人が番頭を務める妖怪バカのギョーカイ人たちが加藤保憲／日本と戦うという仲間内同人誌の究極版みたいなヘンな小説。しかしこれでも根幹は大掛かりで人を喰ったギミックありきの構造であり、ご丁寧に初っ端からちゃんと必要なカードを切ってある…というね。バカであることを是とし、そのバカはほぼ妖怪関係者にしか顕現しないというのはいささかズルい…俺だってこの分野じゃバカやってんだぞ、という気もするのだが、読み終わればその辺も一応「…うーん、じゃあしょうがないか」と思わされちゃうところもある。その辺の丸め込みチカラは流石なものだなあ。
京極夏彦は登場人物としてすげえおいしい位置からほぼ動かない。古今作者が物語に登場してアレコレする話は多いし、このいけしゃあしゃあ具合はその辺のオマージュもあろうけど、京極先生ならまあやっぱり「じゃあしょうがないな」って気がしちゃうという、もうそんなキャラを作って出来上がってんのが卑怯ったらしいよな。カラダヨワイネン属性で弱点アピールするならもっと息絶え絶えにしゃべんなさい。かっこよく疲れやがってこのやろう。
全体的に面白かったですが、まあ映像化は無理だなこれ。あと加藤保憲がこの世に現れたという状況を受けて「いや僕じゃないっすよ」ちう嶋田久作と「何言ってんのお前じゃん」ちう佐野史郎が面白かったです。このシーンだけでも実写で見たいな。
