●新番組・バビロン。制作の為に周到に取材を重ね、またじっくりと練った展開を構築しているのがよく判る第1話であり、お話のツカミとして充分なパワーを持っている。どんどんと繋がり転がってゆく展開は30分枠を飽きさせず、それを支える細かいディテイルに遺漏は無い。…とまあ、こんな感想に乗っかってくる重要な要素は「原作が野崎まど」だってことだよねえ。私が実際に鑑賞したのは「正解するカド」だけであるが、この1作に限っても相当な賛否両論ぶりだったワケで(個人的には「賛」側の人間だけど)、当然その経験が下敷きにあると、今のこの面白さが最後にはひっくり返る…まあその、面白さは盛り込んであってもその質と方向性がぜんっぜん違う、とかそういうことになるのではないか、という予断予兆予測があるワケで。当然このままの方向性で面白く続く可能性もあるワケで。さあ、どうなるんでしょうねえ。いろんな意味で先が楽しみな作品である。にしても、物語が一気に展開を始めるキーアイテムのあの「書類」のエゲツなさは流石だ。こういうおかしなディテイルも、多分この作者の味わいの一つなのだろうなあ。
●キャロル&チューズデイ・最終話。最期はまあ、期待を裏切らず「奇跡の7分」をストレートにお見せしてシメ。ちょっと面白いのはいろんな問題を解決するそのものの所を見せず、「奇跡」の様相を視聴側に提示したうえで「あとは各人の想像力が解決してね」で終わらせたとこ。これはその描写に自信がないとできないだろうし、またその自信にふさわしい…期待させただけの出来上がりになっている。最終回として十分なパワーのある、そんなお話であった。
総評。なんというかその、レベルを上げて物理で殴るような作品だったなあ。骨子や設定はベタもベタ、展開も本当に素直。王道と言えば聞こえはいいが、意外性のなさは一種の弱点ではある。それを有り余る手間とカネ、十全すぎる作画、びっくりのアーティスト起用によって成立させる…というね。どっちかっつーと渡辺監督って、作家性的にトリッキーさよりもこういうド正面な話が得意なのかな。なので、俯瞰で見るとイマイチ喰い足りないところはあるのだが、見た後はそらそれでなんだか満足しちゃうというね。…それにしてもこの贅沢さは、この人の経歴がないとでけへんかったことではあろうなあ。
てことでまあ、うん。いろいろ言いたいことは無いでもないが、上記の通り最終的に満足しちゃったので、そりゃしょうがない。個人的には次回作として、もう少々バカチンな話を期待してみたい。うえのきみこメインとか。ダメですかね。