夢の話は誰も聞かない

●夢を見る。なんか大勢で中華料理屋にて食事してるようなシーンがあったがそこはもう記憶が希薄、めんどくさい人物が居たような気がするが定かではない。とにかくその人物が「この店は俺の懇意なんだ」とかなんとか言うてて、そういえば自分も何度かここにメシ喰いに来てたことを思い出す。地方都市の幹線道路脇にある店舗で、そこそこ交通量のある活発な通りだが道の脇に立ち並ぶ家屋や店舗は年代も形状もまちまち、実に雑然とした古臭い町並みである。そこに建っているこの中華料理屋の屋号は「にらみのみ」。黄色地に赤い文字、プラスティックかアクリル素材の横長い看板である。どうも「ニラ味」がどうこうってな意味らしいがよく判らない。ここから道の一方に進むと我らの住んでいる場所へ向かうのだが、確か一旦路地に入って別方向に向かっても帰れるはずだという確信がある。スマホで地図検索すると実際に行けるようだ。自転車を押してその路地方面に向かうのだが、その狭い道は複雑な路地になり、家同士のこみいった境界線のような狭苦しい通路になり、やがてどう見ても建造物内の廊下の様相を呈してくる。向こうが見通せないほどに曲がりくねり、地面ではなくて薄汚れたカーペットだったりフローリングだったりするその通路はしかし、一定の通行人が居て「確かにここは通れるようだ」という雰囲気がある。すこし通路幅が広くなり、明らかにホテルの宴会場やイベントホール横の廊下みたいになるのだが、やはり自転車も通過するような「道」である。薄暗い廊下から大きなガラスサッシ越しに外が見え、午後の気だるく明るい風景は郊外の草野球場のようである。舗装されていない砂利道が緩やかにワインディングしつつ運動場を回りこみ、その先はちょっとした森に入り込んでその先がどうやら自分のウチの方向である。あの森の中もしばらく行くと立体的に複雑な町並みを通ることになるんだよな、さて進むかと思ったら目覚ましの音で目が覚めた。

雑然とした構造物の中を進むってのは自分にとってかなりの快感情をもたらす行為であるので、ここで目覚めたのはストレートに悔しい思いである。目覚めてちょっとの間はあまりの喪失感に声だして嘆いたりした。寝起きの多少混濁した意識状況だし、しょうがない。