弱虫ペダル/ジョジョ/ユリ熊嵐/アルドノアゼロ

弱虫ペダル GRANDE ROAD・最終話。デッドヒートの末、小野田さんはマナミさんを下して優勝するに至る。いやあ、ここまで長かっただけに流石にドッシリとした情感が届いてきますわな。レースクライマックスで関係者皆さんの言葉をリレーで繋ぐという感動的なシーンがあるんだけど、何かホラーじみた御堂筋さんのご様子が挿入されるだけで可笑しいのがずるい。ゴール後の各人の描写でもやっぱりホラーだし。遊佐兄さんの演技も怖いし。ある意味、一番印象に残るサブキャラになっちゃってますなあ。

優勝の小野田さんはやっぱり小野田さんである。マキシマ先輩にジャンピングハグされたり今泉さんに高い高いされたり、もう自転車サーのヒメヒメ状態とでも言うべき扱いですな。一方のマナミさんと箱学メンツにはほろ苦さもあり。飄々としたペルソナを脱ぎ捨てて、本心で思いを語るマジ顔のマナミさんと、それぞれのキャラに相応しい言葉で彼を称える先輩たちの絵はなかなかよろしい。泉田さんは荒北さんに「来年は任せた」と言われてましたが、今の連載辺りではちょいと頼んないぞ泉田さん。まそれは先の話。

●そのまま総評。大河自転車マンガの原作で、ここまでキッチリと尺取ってもらってのアニメ化ってのは相当幸せな作品であったと思う。原作マンガは週刊連載のノリや何やでバランスが悪かったりするトコもあるのだが、それを極力まとめて再構成してあるってだけでも価値がある。その上で、アニメ化に伴う諸々によってちょいダレたりもしてたんですがね。ま、それにしても、長いシリーズってのはこういう溜めに溜めた上でのゴール! ってのが醍醐味ではある。

自転車レースという、作画が難しい上にポーズのバリエーションが少ないというジャンルがちゃんとアニメ化できたってのは、ひとえにコンピュータ普遍化の恩恵だよなあ。体はCGで顔は手作画というめんどくさいシステムを採用し、総CGアニメにしなかったのは原作の風合いを生かす為でもあろう。実際、性格的にも外見的にも「日本マンガっぽい」アクの強さのキャラ目白押しのこの作品では、日常芝居は特に手描き作画の方がニュアンスを拾い上げやすいだろうしね。いやホント、キャラの立たせ方は満点だったと思いますよ。大きなスジは何も変化ないのに、呉の闘犬があそこまでグッとドラマを背負って立つキャラになるとはね、って感じである。…今泉さんはCパートによってアニオタキャラになっちゃいましたけどね。

てことで、歴史に残る大傑作と言うつもりはまあ無いけれど、長いシリーズに付き合う価値のある愛らしい作品だったなあと思います。まだ原作はグングン続いてるし、映画化も控えてるし、終わったコンテンツでもないけれどね。…下世話な言い方するなら、ここまで盛り上がったネタを秋田が手放すワケは無いだろうしな! 秋田にとってあんまし無い大口ネタだしな! …「実は私は」は大丈夫なのかねえ…。

ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース・36話。ホルホースとボインゴ・前篇。どっちも再登場キャラでペアを組むという再利用感あふれるコンビであり、また「なんでこの組み合わせ?」って気もするとこではあるが、結局なんか面白いことになってんので流石やなあと思います。キャラ的に面白いホルホースと絵的に面白いボインゴ、といういいとこ取り精神なんかしらん。しかしホルホルくん、人気高いのも判るよな。コメディリリーフとしても面倒な敵としても使いやすい。アヴドゥル殺し未遂が無ければジョジョパーティ入りがあったかも、という噂もまあうなずけるところである。

さて、お話はとりあえずポルナレフの鼻に指を突っ込んだとこまででヒキ。この鼻突っ込みのシーンだけ作画がすげえ走ってて、あー力の入れどころ適切だなあと感心した。笑うよそらァよ。作画と言えばタクシーの中のボインゴ、あれだけ真正面からゲロを作画するとはちょっと思わなかった。こんなんって大概光り輝く流体で描かれたりすることが多いんで、見てて「おおすげえ」とひざ乗り出したけど、別にゲロが生々しく描写されてもちっとも嬉しくないことに気付いて冷静になった。…ジョジョって案外、こういう下ネタ系多いよね。うんこちんちん。

エンディングは予想通りアク役協奏曲のホルホース・ボインゴバージョン。こないだの兄弟バージョンに比べると微妙に語呂が悪かったりムリクリだったりするのがまた面白い。合間々々でバキュンバキュン言うてるピストルSEがバカバカしいアクセントになってていいな。ひょっとして後編のケツでやるかなとも思ったが…このタイミングでやるってことは多分、後編はペットショップのちょいマジシーンでヒキとか、そういうことなのかもしれない。ま、次週を楽しみに。

ユリ熊嵐・最終話。ギンコとクレハは捉えられ、今まさに処理されようとしている。透明な嵐吹き荒れる中、まずギンコが人の姿を失ってクマとなり、そして…クレハはユリ裁判にて真実を言明することとなる。ギンコさんが人となりしはクレハさんの「傲慢」の罪によるもの。今、クレハさんはその罪を認め、雪ぎ、ここに晴れてクマとなる。…マジメな文書いてる中ですいませんが、クマモードのクレハさんがかいらしくてエエなあ。クマコスプレ状態も、100パークマ状態もどっちもかわいいよね。うん。

劇的なクマリア様(スミカさん)の降臨と二人のアセンションが行われるも、しかしその後の学園は何も変わらない。いつもと同じく透明な嵐は吹き荒れ、排除の儀式は挙行される。しかし物語は「世界は変えられる」と云。それを示すが如く、均質化された少女たちの中で新たに一人、自ずから立って歩くものが現れたことを示し、ここにお話は閉じられる。世界を革命する為にまず人が変わるのだ。…いや、良いシメだったけど、まさかゲスゲスのクマの人まで救いの手が得られるとは思わなんだよ! 半分メカになった彼女がユリーカ先生の箱に入れられて「動作不良」の紙を貼られ、例の花壇に捨てられてるという絵面でここまで悲しい気分になるとも思わなかった。なんというか、「予期せざる美」というかね。

●総評。ピングドラム以来の幾原監督の新作アニメ。そして予想通りのぶっ飛んだ作品であり、どうやってもこの人以外には作れないよなーってのがよく感じられるお話であります。しかしこれはワシ個人の感想だけども、前二作に比べると割と、というよりかなり判りやすい口当たりになってたような気がする。これは1クールという尺のコンパクトさによるものかしらね。尺が短いから舞台設定や語りたい要素を絞り込んで、結果ストレートに視聴者に届くボールになってると。当然ながら主題は少女間のユリ話、それも結構きわどい描写もアリという状況ではあるけれど、そこら辺もまるまる呑み込んだ上で「普遍的な物語」になってたんじゃないかなー、と思う。

それにしても幾原監督アニメって、主人公(たち)に降りかかる艱難辛苦がどでかいのよね。その圧力に時に屈し、折れたりもするけれど、しかし主人公は必ずその純粋さを捨てず、純粋さ故に圧力を撥ね退ける。世界を変えるには至らなくても、そのトッカカリである自分と周囲は変えられる。紆余曲折はあっても最後はちゃんと前を向いている、そのポジティブさが実は監督のカラーだなと思います。…前作群と比べると明確な、というか象徴的な「悪役」が居ないのが今作の特徴ですかね。対立者が文字通り「透明」である現象だったからねえ。クレハさんたちは誰かではなく、世界と対峙していたってこってすな。

上でも書いたとおり1クールアニメであり、作品のボリューム的には小品っぽいところもあったけれど、それ故にカッチリとまとまった後味の話でもあったと思う。うん、面白かった。幾原アニメを他者に紹介するに良い作品じゃないかしら? いややっぱりゆりゆりしてんのは人を選ぶか。まいいや。

アルドノア・ゼロ・最終話。大方の趨勢は決着するも、しかし個々人においてはそうはいかない。それはスレインとイナホにおいても同様である。何も得られず失うものなく戦うお二人であるが、確かにスレインさんの言う通り、その無為なものこそが彼らにふさわしいイヴェントではある。無為に戦って勝敗が付いて「君はどこに落ちたい?」「あっ流れ星」やって、最後それでも死ねずに拘禁状態のスレインさんを見せてシメ。ううむ、念の入ったスレインさん受難話である。

2人の戦いでカギを握るだろうと思っていたスレインさんロボの未来予知能力が、早々にお釈迦になってスのド突きあいになってったのがちと面白い。戦闘のネタ的には残念っぽくもあるが、スレインさんに未来は見えなくなってしまった、というドストレートな比喩として機能してんのね。無理やりこじつけるなら、過去の宿痾を断ち切ったアセイラム姫・現在を過剰解析する目をやっと置けたイナホさん・未来を見通すカタフラクトを失ってしまったスレインさん、ってとこか。うん、こじつけやね。

アセイラム姫からのステートメントを聞いて動揺する火星騎士たちの中に「やはりトロイヤード卿は下賤…」とか言うてるのが居たり、最後までスレインさんは「報われない人」っちう属性を身にまとってましたな。主役三人が同じ空を見るラストシーンの、パンチの効いた対比がなかなかに意地が悪い。束の間交差した彼らの道は、また別方向に向いている。姫様が「美しい思い出です」ちうてるのがまあ、そういうことだ。

●総評。地球と火星の戦争を道具立てとして主人公たちの流れゆく運命を語る話。近未来のロボ戦争となるとどうやっても定番描写になりがちってとこを、火星側が軍じゃなくて中世騎士社会のカリカチュアみたいなヘンテコ野郎ばっかりとすることで一気に面白風味が出た、という構成意図だろうな。実際次々出てくる一芸入試ロボどもはそれだけでなんか面白くて、その一芸ぶりを上手い策略ですっ転がしてゆくイナホさんのキャラも立つという寸法である。

そしてやっぱしスレインさんですわな。出自も経緯も結果も翻弄されっぱなし、運命に身を任せても自ら道を切り開いても悪意悪名と共にある人。決着ついたのち、イナホさんに対してザーツバルム卿と同じポーズで殺せと言い、同じ結果として命を永らえることになるという皮肉。…こういう悲劇っぷり見るだに、やっぱこの作品はスレインさんの話であったんだろうなと思う。いやあ、脚本の人の「コイツどないしてイジったろか」という邪な笑みが見えるようでんなあ。

アルドノアとは何だったのか、火星第一世代たちはどうやってこの世界を構築したのかという根本ネタ。停戦成立とはいえまだ各地に火種の残るこの世界、そもそも生き残っている各キャラたちという今後のネタ。ともにやろうと思えばスピンオフのやりようはなんぼでもありそうである。その辺はまあ今後のお楽しみってとこですかね。