蟲師

蟲師 続章・12話。平凡ながら温かな家庭を持つ男・カオルだが、彼のそんな日常は僅かな既視感と花の香りがともにある。べつだんそれで困ることもないのだが、そんな感覚は少しずつ強まっていくように思える。ある日ふらりと立ち寄った蟲師・ギンコは彼の話を聞き、そして「それは多分蟲により人生が円環とされている。花の香りのする洞には近づかぬことだ」と言うて去るのだが…というね。

今回は何時にも増して寓話のテンプレート性の強い話の印象ですな。ギンコは話のヘソながらほぼ舞台道具であり、重要だが僅かな見解を述べるだけであとは何もしない。カオルという一人の男の人生そのもの、そしてその人生に付与された奇っ怪な効果が主役である。一度は自分の意志によりループを回避するものの、伴侶の死という重い事象の発生にカオルの精神は耐えきれず、伴侶を巻き込んでのループにまたもやはまり込んでゆく。

彼(と彼女)の人生に必ず顔を見せることになるギンコ、この存在が今後(?)どう影響を及ぼすか、やねえ。…よく考えたらこの状況、ワシのような人間にとっては別に苦でもないな、なんかエエ時期を見繕ってループしてくれへんかな…とか言うのはヤボであります。カオルさんの根っこの部分にとっては多分、こうしたループは不健全なモノであるのだろうしね。新たな人生が開始した時の「幸せな悪夢を見ていたようだ」ってな台詞がよろしい。

ループする男・カオルさんに古川登志夫。最近ちょいちょいワンポイントで見ますな。老成しながらもどこかエバーグリーンなキャラという役柄にはなかなか良いキャスティングではなかろうか。となればその伴侶に実ヨメの柿沼紫乃が来るのも当然ではあろう。いや、平野文というテもあるけど、平野ねーさんのお声はこの作品にはおツヤがありすぎる気がしますしな! な!