中二病/ガルパン/新世界より/テンペスト

中二病でも恋がしたい!・最終話。デコモリさんは何や知らん美少女に戻るがあんまし戻りきれておらず、くみん先輩まさかの中二病罹患もチラチラと地の天然が顔を出す。そして「普通の人」になろうとあがいているリッカちゃんその人は、DFMモードのユータさんによって二度目の屋根上逃避行に至る…とまあ、誰も彼もが極端には振れず、ある程度の中二/平凡のブレンドの状況であるのを提示して話は終わる。いやここで終わりではなく、みんなこれから一生中二病とお付き合いするのだろう、と1話から呼応する大塚芳忠ボイスで、シメだ。

中二病とは卒業すべき代償行為」でも「リアル全てクソなるべし」でもなく、みんなにそれぞれそういうトコあるよね、という結論の中庸具合は妥当だろう。まあ極端に振って作品の印象を強める手法も充分アリだろうけど、ことこの作風の京アニ作品としては極端はちとそぐわないかね。

多かれ少なかれ、人は年齢と経験によって変容してゆく。その一スライスにおいて、中二病として切り出された要素はたまたま大きな注目を浴びているのだけどね。でも、環境などによってその変容が強制されてしまうってのはやはり、不幸なことだ。そういう意味で、リッカちゃんがユータさんによって変容のイニシエーションを受け、どちらの方向に行くにしてもある程度の納得を得ることができたのは幸いだったのだろう。無論それは、ユータさん自身にとっても同様である。

夜の海辺で沖を見て「あれは船の光。ただの光」とつぶやくリッカちゃんに、作品中最初で最後のスーパー妄想エフェクトでもって、ただの光を神秘の魔法とするDFMユータさんが優しいことだ。リアル世界も中二世界も、見方による変異であり同じもの。少々の恥ずかしさを消費すれば、世界はいつでも中二的な光に満ちるのである。

●総評。まあその、タイトルどおり中二病のお話である。現在進行形のリッカちゃんと決別したはずのユータさんが出会ってアレコレソレコレ。そして話の焦点は中二病に仮託されるリッカちゃんたちの心と環境のありように移ってゆく…というね。

作画や演出はもう流石の京アニで、何度も出てくる妄想上の中二バトルアクションもすげえのだが、当然平常時の実にさりげないしぐさや動きをバンバン盛り込んでくるあの贅沢さは、他の制作会社にはちょっと無い。個人的には「そこまで気合入れなくてもいいのよ?」とか思ったりするが、この作品の場合は中二病という「過剰さ」がテーマであるし、割とフィットしてたかなとかも思う。

お話の方は当初のお気楽な中二話を少しずつ離れてゆき、後半は割と個人の心と他者世界への関係性などのシリアスじみた方向へとシフトする。ワシは割とこういう作品において「別に終わり近いからってマジメにならんでもエエのにな」とか思いがちな人間であるが、…うん、最期までかなり素直に享受することができた。作り手の中二病というモノに対する視線がそこそこ普遍性を持っており、かつ(ちょっと軟弱かもしれんが)優しいものであったのがワシ如きオッサンにとっても良かったのだろうか。

作品総体としてはそこまでインパクトのあるキラーコンテンツとは言えない、どっちかっつーと小品に近いものだったかもしれんが、だからこそ身構えることなく気軽に鑑賞できたのはエエトコだと思う。とまれ、楽しうございました。うんうん。

ガールズ&パンツァー・10話。対プラウダ戦は勝利、次はラスボス黒森峰。いやひょっとしてあの融通利かないお母んがラスボスかもしれまへんが、とにかく次はお姉ちゃんとこである。うん、まあその、ティーガーIとIIにパンターにIV駆にエレファントにヤク虎にヤク豹、あわせて20輌という…。そんなもんドイツのどの時代でもちょっとねェくらいの超攻撃的ラインナップにお姉ちゃんの本気を見る、っちうか(毎度言うてるけど今回はホンマモンの)オーヴァーキルにもほどがある。ダージリンさんが暗に「黒森峰の戦いはツマラン」っちうてたのも判りますわな。その辺含めて西住流、なんでしょうけども。

てことで本編は決戦前夜、みなさんのご様子で一席である。ゲン担ぎのカツ尽くしの夕食だの(もちろんハナさんはドカ盛り)戦略大作戦見て士気を高める一年生だの(そこ泣くとこです?)、仲のよろしいことで。新戦力も増えてにぎやかになるのだが、まずキャラは…ああ、あの松零っぽいお人のグループはゲーオタさんでしたか。オンライン戦車ゲー…WoTみたいのかしら。すさまじく属性てんこ盛りのデザインにしてあっという間に退場、という一連の流れがとても潔い。

んでもって新戦車とバージョンアップ。ポルシェ虎(もちろん地面に沈んでエンジンが火を吹く)、38(t)はヘッツァー化キット(ちゃんと「ムリヤリ」という言及アリ)、などなどこのテの代物が出てきた場合のアリネタをきっちり盛り込んでんのがやはり丁寧。P虎の試験走行シーンのレイアウトなんてそのまんま「雑草ノート」やもんね。

上記のごとく勝利第一の黒森峰/旧来西住流に対し、対戦相手をみな魅了してゆくミホさんの対照性がヘソでしょうかね。最後の戦いを経て、ミホさんは姉や母と和解や止揚に至れるのであろうか。って次は10.5話ですもんな。ホンマ、現場が大変なのだろうなあ。お察しします。

…あと、今までの「強敵」と書いて「とも」と読む人たちのなかには、やっぱしアンチョビちゃんは入ってないのね。だろうね。うん。

新世界より・12話。承前、榊原良子声のクセにムチャクチャ若作りの倫理委員会議長とサキさんとの会談の巻。ここでサキさんは悪鬼と業魔について実例を聞き、自身が強い人間であること≒主人公的アレであることを伝えられる。「清濁併せ呑む」の「濁」の部分についてもっと明らかにしてほしいと願うサキさんだが、それによってサキさんではない他者が崩壊しかねない、とて拒絶される。鎖は弱いところから破断する…まさに後半、その事態に陥りかけているのだが、というお話。

悪鬼ってのは呪力を意識的に悪行三昧に使う者、業魔ってのは無意識に呪力が悪さをしてしまう者、ってワケね。いずれにせよこの時代の普通の人間には強烈な他者への攻撃抑制が存在するので、そういう者が一旦発生してしまうと対処が非常に困難になると。…なるほど、この社会において心理操作などによる予防拘禁的なシステムが選択されたのは、公安警察的な機構の構成者が存在し得ないからか。ふうむ。

後半のマモルさんの失踪は、上記の弱い鎖ってとこで合ってるかな。そうなると社会は彼を排除する方向に向かうだろうが、そのとき主人公たちはどうマモルさんを守るか、ちうとこですかね。やっぱりあんまし救われない方向にお話が進みそうですな、ゲヘヘヘ。あとえーと、あのポッと出友人の人、テキトーにあしらわれててなんかかわいそうになってきました。にしてもサトルさんはこういうときの口っからでまかせがすさまじく上手いな! 

絶園のテンペスト・12話。妹殺しが誰なのか、姫様はこちらの世界にもどれるのか、そんなことを瑣末事として全部吹っ飛ばす魔法樹同士の大怪獣バトルの勃発であり、どうやら世界はマジで関節が外れちゃうようである。ふむ、お話的にはここで折り返しってとこかしら。次回より舞台は大きく回っての第二章、ってとこだろうか。

登場各キャラ意思を持ってあがいてるように見えて、その実は魔法樹それぞれのコマとしていいように動かされていたに過ぎない今までのドタバタ。それを運命というのなら、これから先のお話はいかに運命に抗い、三行半を叩きつけることができるかってのが勝負になってくんでしょうかね。時間的孤立を強いられてきた姫様も戻ってきたこっちゃし(魔法スゲーな!)、さあこれから反逆だってとこで、マヒロもヨシノも「用済み」として樹たちに切り捨てられちゃうという、すさまじく大振りな無常ドラマがスゲエ。もう何だ、はじまりと絶園とどっちが善悪とかも無いもんだな。アイツら、人間とか割とどうでもよさそうだ。

んでもって相変わらずサモンさんは素敵にあわあわしておられる。地に突き刺した刀を前に膝から崩折れるわ、姫様に迫られて手ェぷるぷるさせながら釈明するわ、何というか小動物的かわいさに満ちたおっさんである。あとラストの大騒動の辺り、ヨシノさんと姫様・槍兄さんと28歳無職さん、というペアっちい組分けが発生してる中、マヒロさんはサモン兄さんとペアリングさせられてんのがなんか面白かった。お似合いよお似合い。