Fate/宇宙兄弟

Fate/Zero・最終話。聖杯戦争終結、「この世全ての悪」となってしまった聖杯はセイバーによって破壊され、その余波をもって冬木の町は壊滅してしまう。セイバーは失意と共に自己の力不足を嘆き、キリツグも同じく存在意義を失って彷徨し、カリヤは最愛の人の娘に侮蔑されつつ妄想の中に沈んで死んでゆく。ワケ判んないまま何故か受肉したギルガメシュと、そのついでに死者として復活したキレイを除き、勝者も何もなくただ無為に都市が壊滅するのみ…という、実に見事なアンチクライマックス。「大事の前に小事をつぶす」というそれまでのモットーが総瓦解し、目の前の子供を救って安寧を得る…とまあ、キリツグさんも一応希望もて次代へのツナギを見せているけれど、まァ言ってしまえばそういうことやよね。

てことで散々な状況だった今回のイヴェントだが、結果的に一番エエ経験したなあ(?)ってのはキレイさんですか。「邪悪成すべし」という生きる糧と目標が出来たっちう意味で、死につつも生きている彼の状態は象徴としても相応しいと言えるだろう。最後の葬式のシーン、「親父の形見だ」という名目で親父殺しの得物をその娘に譲渡する辺りの表情がエエね。小バカにしつつその表情を抑えているという微妙な作画がよし。ちうかギルさんは受肉時なんですっぱだかなの? 趣味?

一人ちょっと離れた立ち位置ながら、本作品の感情的な意味でのクロージングを任された格好なのがウェイバーさんですな。ヒネった悲劇の多いこの作品において、かなり真っ当で素直なドラマを構築してもらえた彼は逆に異端っぽいキャラであろう。豪快ながらどこかガキっぽい、征服王ライダーの部屋の跡がらしくて良かった。

●総評。万国びっくり英雄残酷ショー、分割二期のシメである。登場人物のどいつもこいつも、一部の例外を除いてだあれも幸せにならないお話で、悲劇を演出する為の労力とアイデアを惜しまないそのダウナー志向の徹底加減がスゲエ。その白眉はカリヤお兄さんでしょうな。とにかくこの人は事前設定からキャラの立ち位置から本人の性格から関係者の配置から、これでもかってくらいの悲惨ドラマ一直線。これで底かと思えばまだその下がさらにその下がっちうあの転落ぶりは、いっそ古典的な芝居話のような風情さえあった。

グランギニョルっぽい悪趣味見世物の風格もあり、なかなかの大作であったと思う。一方で話運びや演出にどこかバランスの悪いとこもちょくちょくあって、それが原作に起因するのかアダプテーション側の問題なのかはともかく、ストレートに物語へ没入するのを妨げてたりもした印象がある。でもまあ、上記の退廃耽美劇場っぽい側面からすると、そういうアンバランスも味の一つとして享受できるようなモノかもね。

そんな雰囲気を支えてる支柱のひとつが声優さんですが、ガッチガチに手堅くて定番に過ぎるキャスティングが却って特色っぽくなってんのはワザとか結果論か。一昔ほど時代が古いとも言えるキャスティングは、いかにも芝居っけたこの作品のカラーによく合致してたとは思います。中でもライダーの大塚さんが、その押し出しとともに一番印象的だったかな。

最近はTVアニメは少々ご無沙汰気味であったUfotableだけど、こうして健在であるってのが判ったのは個人的に大きかった。多少振り幅はあったとはいえ、非常に力の入った作画が毎度見られたのが素直にうれしい。ちょっと面白かったのが、ただ周囲を歩いてるだけとか手前向こう方向にゆっくり移動するとか、アニメートする上で結構な手間の割に地味なシーンがそこそこ見られたこと。いくつかのシーンはCGかもしれないが、明らかに手描きでわざわざ動かしてたり、なんというか…無駄ストイックというか。現場の人は大変やったんじゃないでしょか。ワシは面白がって見てたからエエのですが。

てことで、えー、面白かったです。ですけれど、もっかい通して見るかと聞かれたらちと躊躇するなあ。そんなけ見る方にもパワーを要求する、ヘビーな作品でした。一期と二期の分割箇所がなんか妙だったのはまあ、いいか。

宇宙兄弟・13話。新田さんが気にしているのは生体モニタとしての腕輪である。あー、ワシが腕時計と勘違いしちゃってすんませんねえのあのリングはそういう機能のものか。試験官は冷静さを評価するだろうと判断した彼は、とりあえずムッタ兄ちゃんをちょこちょこアオりつつ自分のペースを保とうとする。ムッタさんは次々とやってくる課題をどんどんとこなし…はできず、割とヘッポコであって先が思いやられる状態。ま、主人公だからそのヘボにもちゃんとドンデン要素があったりすんですけどね。

課題の一つ、宇宙開発に否定的な意見に反論するにはどうしたらよいか、という小論文。ファラデーと発電機の昔からこれは実際大きな問題であり、マンガやアニメのネタとして持ってくるにはちょっとした気合が要るものだと思われる。実際正解なんて無いワケでして、各班の回答もそんな感じで多様性を持たせたシナリオとなっている。

ムッタさんの「反論なんてしなくても今世間の流れはそうなっているし、何ならその人物に経験させてやればよい」ってのはハッキリ言って試験的正解からは遠いのだが、主人公的・物語的には正解として妥当ではあろうか。文明と人間の進行をアリに喩え、デボノの水平思考っぽい論を展開する中途のシーンにしても、反対派からすりゃ「いや石を越えるより前にあのアリのケガを治すのが先やろ」とか言われるだろうけれど。ま、本音と建前やね。…このシーンの宇宙飛行士の野口氏は as Himself。演技的にド素人なんだけど、その素人さを前面に押し出しつつ、講演会っぽい言い直しやフレーズをそのまま収録した現実っぽさが自然だった。台詞としては浮いてたけど、ちょっと面白かったな。