謎の彼女/アクエリオン/ちはやふる

謎の彼女X・12話。前回卜部さんのすっぱだか見ちゃったもんで、何だか悶々としてしょうがない椿さんである。なんしかその情動は卜部さんの方にも感染しちゃったりして、鋏の手元が狂って椿さんのデコに傷をつけてしまう。そこから始まる二人の「ぎゅっ」のお話でして…ってもう、変態的なくせして甘ったるいなあ! 第一今回、卜部さんのお声が始終ソフトでスイートでそら椿さんも興奮するよ。卜部さん、完璧にデレルートに進み始めてますねえ。うんうん。

唾液でお互いの思考と感情を確認できるという、何よりも濃い結びつきをもっているお二人さん。今回はお互いに感情が上昇しあってゆく、というギミックだったので余計につながりの深さが強調されてた感じ。今の段階でこんな調子だと、のちのちもっと親密になったときに正のフィードバックループが暴走しちゃうぞ。まあ別に暴走しても困らんか。じゃいいです。

夕暮れのいつもの坂道でいつもの儀式をやった後、思わず卜部さんをぎゅっと引き寄せた瞬間に身体の陰になってた夕日が差し込んでくる、という絵がなんか美しかった。こないだの真っ赤な夕暮れともまた違う、生命的な夕日の色に見えたりして。あと冒頭、アグレッシブに相手に攻め込んでいく丘さんと戸惑いつついなしきれない卜部さんの辺、お互いかわいいっちうか…仲いいなあんたら。本人は気にしてないだろうけど、それでも卜部さんにちゃんとお友達ができてんのを見るとほっこりするわ。それがあの丘さんであろうと、だ。うん。

アクエリオンEVOL・最終話。最終決戦ってことで、ミカゲさんの心理的牢獄に囚われているゼシカやカグラを含め、皆さん総出で駆けつけるという状況である。そんな中、やるぞやるぞってとこで理事長さんに交代させられちゃったモロイさんがなんかかわいそうです。まあ出撃があっただけ、同輩クラスのサザンカさんよりはマシでしょうかね。

さて。いろいろあった後にいろいろやってハッピーエンドである。着地点は期待通りだしバトルも満載。クライマックスとなる「巨大アクエリオンにアマタ/ミコノ/ミカゲで合体して世界を救う」という構図もエエ感じで、話の頂点としてのこのシーン自体は高評価なのだけれども、そこに至るまでの過程がね。終盤近辺で感じられた迷走具合は相変わらずで、何か語りたいテーマがあるから「そうなっている」のかもしれんけど、もうちょっと単純にして勢いを持たせた方が良かったんじゃないだろうか、という印象が抜けない。

アクエリオンという作品自体がそうなんだけど、必殺技といい発生する事件といい基本的に「何でもアリ」という世界観なので、何がどうなって世界が危機になろうが「まァ多分愛のキセキがなんとかしてくれるやろ」と思ってしまう危険性があるのだよな。そこら辺を感じさせぬよう、勢いなりネタなりで誤魔化しちゃうと気にならないんだけど、今回はちと弱かったか。まいいか。

●総評。なぜこのタイミングかイマイチ判んないが、とにかく過去話題になった河森ロボアニメの続編である。パラレルかなとか時系列が同じ程度かなとか思ったら、後半は過去の映像や設定を積極的に出したりしてガッツリと「続編」してるのが意外ではあった。前作のファンだった人には素直にうれしいこっちゃなかろか。…うつのみや回が出てこなかったのは残念だと思ったけどな! な!

妙に性的なアナロジーを多用し、なかばギャグなかばシリアス、総体としては「マジメな顔でバカネタをやる」というデッドパンな雰囲気がアクエリの本性だろう。その上でカワモリ的なスピリチュアルネタをあちこちで咲かせ、めったやたらに大仰な演出と音楽でデコってお出しする、と。そんな楽しさ面白さを期待する分にはしっかりと応えてくれる作品だったと思う。

後半、この世界の本質や人間関係の種明かしなど、「本題」がメインとなってきた所で展開がもたつきだしたのは残念。これはそういうお話にあまり興味が無い(しょーもないフィラー話とかスライスオブライフが好きで、大ネタの本筋にしてもどっか振り切れてないと興味が続かない)というワシの悪癖によるところも大きいと思うが、それにしても各キャラのコマの進め方や舞台のセッティングにちぐはぐさがあったのは否めない。シリアスとバカのどっちかへの振りが中途半端だった、っちうかね。そういう意味で、ワシは前半辺りの一話完結フォーマット、マクラ振って危機が訪れてバカチンな解決策と必殺技繰り出してドーン! という、どっちかっつーと志の低そうな話のほうが好きだった。ま、これは贅沢な言い草だろうけれども。

作画に関しては一定のレベルを維持し続けたってだけで結構なことであります。前作に比べてより普遍的で、割と今様なキャラデザになっていたのもハードル低くて悪くない。CGアクションについては…まあその、前作時点でほぼ固まってたというか、今回はそれほどのアピールポイントでもなかったかな。いや、実際見比べてみたらまた印象が違うかもしれないが。

てことで、ちょいとシメ方にバランスの悪いところはあったかもしれないが、まあ楽しく視聴させていただきましたよ。考えてみればそういう異形気味なところもアクエリオンの味だったかもしれない。…そのアンバランスの質と方向性がワシ的に合わなかったところがあったっちうこってすかね。ま、それは余談に近いか。

ちはやふる・最終話。様々な状況を乗り越え経験し、かるたを続けてゆくご一統。そして新たなシーズンが…ってとこでシメ。先への希望と新たなドラマを感じさせつつ一旦のお休みって感じで、最終回としてなかなか悪くない雰囲気ですな。千早が廊下で文言を読み上げ練習しているところにかなちゃんが合流するという何でもないシーンにも、最終回らしい思い入れのある演出がされてて読後感タップリ、って感じだ。

名人とクィーンの試合見てガックリしてる面々ではあるが、しかしコイツらはもう結構「強い人」ではあるのね。そういう意識のない、またはどうでもいい者ならばそんな試合見ても「うわスゲエなあ」って所で終わりだろうが、部員たちは「あの場所に居たら叶わないだろう」と、明らかに自分たちの舞台の延長として彼らの試合を見ている。人間、関係のないと思ってることには絶望しないものよ。…そういう明確な意思と方向性に乏しい名人たちは果たして幸せなのか否か。少なくとも、クィーンのしのぶちゃんはかるたそのものへの愛情が強くあるようですけどね。

それにしても…何ですな。昨今ここまで万全に手堅い最終話ってのもあんまし見なかったかもしれない。ある程度は原作つきであることのアドバンテージはあるのだろうが、やるべきことを遺漏なく盛り込んだ上でここまでの満足感とクォリティを出してシメ、ってのはそうそうできるこっちゃない。1話から最後まで、マッドハウスの圧倒的な力量を見せていただいたなあという印象。

●てことで総評に向かいますが、…うーん、これは面白い! 原作の良さとアニメアダプテーションの上手さ、双方ともが高いレヴェルで仕事している幸運な作品だと思う。競技かるたというどちらかといえばマイナーなジャンルで、ここまで血沸き肉躍りつつも地に足ついたドラマを構築してゆくってのもなかなかの手間だろう。…かるたマンガってこれ以外では、チャンピオンのそのまんま「かるた」くらいしか知らんわワシ。あれも好きな話だったんだけど打ち切りでねえ、ってこれは閑話。

原作段階であろう部分で言うと、各エピソードの面白さもともかく、群像劇として各人にオリジナルなドラマを丁寧に与えてあるのがまず好印象よね。そしてそれらが絡み合い、広い流れとして作品を形作ってゆく…ってまあ、そこらへんちゃんとしてんのが普通なんだろうけど、その普通がデケてない作品も多いからさ。

あとこれはワシの偏見だろうけれど、人のマイナスな部分を表現する切り口の生々しさ、これは少女マンガの強みの一つだなあと。幼少太一やクラスメイトたちの疎外方法とか、太一母の性格とかね。その上で、それらダウナーイヴェントをぐっと乗り越えてゆく描写を外さないのもよし。ワシの胃が痛くならないという意味で。ま、主人公の千早さんの猪突猛進ぶりで大概癒されるのではあるけれど。

そしてアニメ化サイドの要素。何かスノッブかつ知ったか臭い言い方だが、所謂本気のマッドハウスってヤツですかなーと。日常シーンのテンポの取り方、試合シーンの迫力の構築、どちらも分け隔てなくよき演出ぶり。個人的にはちょこちょこ出てくる川尻善昭の名前にちと感心したりしましたけどね。あのクィーンとの試合シーケンスはホンマ、白眉でございましたよ。

てことで、腹いっぱい堪能させていただきました。こういう普遍的な強さのある作品に出会えることがあるってのは嬉しい。今後もアニメ世界が豊穣でありますように。