タイガー&バニー/輝きのタクト

●新番組・TIGER & BUNNYサンライズのヒーローモノ、ってことで見てみる。…ははあ、この多分に米国っぽいテイストはビッグオーさとうけいいち監督らしくはあるな。表層と裏側の二重構造ってのもビグオーと共通点はあるが…まあ、あそこまで額にしわ寄せたノリではないだろうけれど。てことで、なんか近未来の米国っぽい街にて、視聴者参加型のエンタテイメント自警団番組が行われていて…というお話のようである。要するにチキチキヒーロー猛バトル、っすかね?


あくまで意図的なのだけれど、前半の「ヒーロー番組」シーンの胡散臭くてうざってェノリは大概である。演出にしてからもそうなんだけど、各ヒーローに乗っかってる実在企業のロゴがその胡散臭さをグンと加速させてる印象。昨今では割とよくある方向性だし、また劇中での扱いも「ホンマに宣伝しているところに乗っける」と判りやすいのだが…このウソ臭さはどうしたもんかねえ。これって各企業から文句来たりしないか? しないならいいですけど。でもペプシソフバンはともかく、牛角が出てきた瞬間は笑ってしまったので一旦ワシの負け。うん。


さて、うーむ。平田広明ロートルヒーローというサイドからは面白そうだが…どうかなあ、このまま割と平板なお話になってったらちょっと辛いな。ヒーローになると全CGになるのは省力化として正しいのだけれど、反面ワシ好みのダイナミックな絵面からは離れてっちゃう要素だしねえ。ちょっと様子見ましょうかね。


STAR DRIVER 輝きのタクト・最終話。かくてラスボス・ザメクは蘇る。それを可能にしたはスガタ、それを掌上にしたはヘッド。「未来」を消さんとするヘッドに対し、タクト渾身最後の戦いが始まる。しかしそれはタクトだけの戦いではない…という。


とにかくもう、前置きとかエピローグとかも取っ払ってギリギリ一杯、バトル一本やりで語る最終回である。リビドーをテーマの一つとしているだけあって、巨悪ラスボスとの戦いは非常に快楽原理に忠実な、そして大盤振る舞いな構成になってて満足しました。そのためのスプリングボードとしての、タクトさん側の苦難苦労の描き方も徹底していたな。気力だけで立っているような主人公に絶望的な数の敵が対峙する、っちう辺りとか。あともんすごキモチ良さそうにラスボス演技してる石田彰兄さんとか。いい笑い声だなあ。


んでもって反撃ののろし、強大な存在を前にかつて敵であった者たちと協同して戦うっちうのは(ンマいこと描いてくれるなら)やっぱ燃えるものがある。できたら島から去ってった他の巫女さんたちも駆けつけてくれたら面白かったと思ったりもしますけどね。とまれ、キッチリと気持ちよく幕を下ろしていただいたのはかなり高評価でござんしょう。…DVDやBDリリース時のボーナストラックとしてエピローグ話を描いてくれてもいいのよ? 人死にを出さず終わるってのはこの作品の演劇的側面の表れだろうけど、ならば皆さんのその後とか見てみたいと思わせる要素でもあるしね。これからヘッドとかどーすんだろ。毎日絵ェ描いて息子に殴られる生活でも送るか?


作画に関しては流石に豪華そのもの、ワカメ影のロボ描写もシツコイ板野サーカスも堪能。…そして何だ、今石洋之のおっさんの絵は判りやすすぎる。ブレないお人ではあります。


●総評。五十嵐-榎戸コンビによる青春演劇ロボリビドー話。榎戸脚本作品としては割と口辺りの柔らかい作品で、これは五十嵐監督の普遍性によるところがある程度大きいのかなとは思った。まァそれでも、いちいち変態的なコスチュームでカッコつけた喋りしなきゃなんない悪の組織とか、何かかんかヘンテコな要素はたくさんなのですけどね。


タイトルどおり、上手くやれば(あるいは下手したら)宇宙規模にまで広がりそうなネタを並べておきながら、2クール通して舞台は小さな島からほとんど出ることはない。まるで島の外には必要最小限のモノしか無いような…あるいは、島という「舞台」に物語を全て盛り込んでいるような。この作品がセカイ系の典型だと言うつもりは無いが、少数個人的関係性が大域構造と直結するという「セカイ」性を描くとしたら、こういう演劇舞台な構造はエエ選択肢かもしれん。


上記の普遍性ですが、放送前、あるいは一話見た後の印象だと「ひょっとしたらウテナ辺りまですっ飛んだ表現形式の作品になるかも」とちょっと期待してたトコはあんですよな。そこら辺の期待はまあ、ソコソコ程度で終わってしまった。…てんこ盛りにすればよう判らんと文句を言い、慎ましく作れば物足りないと不平を言う。すんませんねえ視聴者ってのはワガママで。いや、全て通して振り返れば十二分におもしろ演出なネタアニメとしての側面も大きかったと思いますよ。うん。


個人的嗜好で言うならば、もちょっとロボ描写のフェチ心のウェイトが高かったらな、とかは思ったりした。ワカメ影でエイティーズ風味だったりはたまたキューブ破片の21世紀風味だったりと、気合の入ったロボアクション連打連打の上でまだそんなん望むか! とか言われそうですけど、そこまで力を傾注した割にはどうも「ワンパン決着が多かったな」っちう印象が拭えませんでね。まあ、いろんな要素のうちの一つであるメカ描写っちう立ち位置だし、そこら辺ばかり掘り下げたらいびつな作品になりそうだけどね。てことでこれはワシの偏った嗜好感想ですよ、と繰り返しておく。…ラスボスバトルでその辺はかなり補完されたっちう面もありますしね。


少々散漫な印象もあったが、そこは華やかなイメージと言うこともできる。全体的に、日曜夕方のボンズシリーズとして上手いこと役責を果たした作品だったな、と思います。実際ワシ、この時間帯のシリーズとしてはかなり上位ランクの好みだわ。それはワシがロボアニメ好きだからだろうと? うん、そう思う。…ま、それはそれで。