刀語

刀語・最終話。とがめさんは死し、七花さんは進む。彼の往く先に待っている、否定姫とエモンさんの意図は何か。行けば判るし別に判らなくてもかまわない…それもまた、四季崎の思惑の上なのだろうか。っとその前に、11+1名での死亡遊戯バトルをやってってね! というお話。いやー、このカマセ犬11人衆の無駄に立ったキャラがよろしいわなあ。極端でキャッチーなキャラを考えてるだけでも楽しそうだ。あと、早見さんだけ死んでないよね? 刀身の無い刀持って「流石にこれ、どうしようもないんですけど…」という、ちょっとメタ的なぶっちゃけギャグに笑ってしまった。そうだよね。


前四半分をまるまる使ってのとがめさんの死は、二人の演技もあってなかなか見せるシーンになっていたな。道中あんだけ見せていた人間らしい感情がウソである…という、ある意味定番な設定をさらにひっくり返して「それらの感情は全て本物だが、しかし全て駒に過ぎない」てな構造はなるほどって感じ。七花さんの言うとおり、この設定で一番傷つくのはとがめさん本人である。業というか何というか、そらまあ「道半ばで死んで幸せだ」と思いもするわな。


そしてエモンさんとのラストバトル。トリに相応しいパワーを持ったアクションシーンであり、血と破壊そのものといった表現がすごかった。その前の11連戦も(一部を除いて)結構な作画だったのだけれど、それらをあっさり押さえ込むようなコッテリ感がありましたやね。


結局、敵味方関係なくほぼ全ての状況と思惑と人物が「負け」に集約されてしまうという、またものすごくヒネった結末のつけ方なんだけど、その上でキッチリと「ああ終わった、エエ話だったなあ」と思わせてんのは流石に力量だわよね。ラストのモノローグもそうだし、何だかんだで「不忍」のお面つけてる否定姫という細かい描写たちもそうだし。…あるいは、いろいろと負けたり失ったりしつつも「生きよ」というとがめさんの意思を守ることのできた七花さんは、唯一勝ったことになるのだろうか。池田ナレの言うとおり、理不尽な世界で生きて死んだ人々の、最後に残った希望の体現者としての七花さん…というね。


●総評。放送型式にせよ内容にせよ、かなり異色のアニメではある。ボリュームとしては30分枠2クール分なのだけれど、一年間かけて月イチの一時間枠、ってのは相当の冒険だと思う。言語偏重かつヒネリタップリのシナリオだけに、一回に一時間分の放送という量感は確かに効果的ではあったよな。30分の細切れだとちょっと、追っかけるのが大変だったかもしれない。


意識的にお約束ネタを使ったり外したり、作品構造自体への言及(に見えるもの)があったり、等のメタな要素をガンガン入れた上でそれらを踏み越えた物語を作ろうとするというのは西尾維新作品らしい指向性。上記の言語偏重性とあわせ、見る側はそのリクツっぽさも含めて賞玩するワケで、アニメ作品としてまとめるのもいろいろと苦労しただろうな、と思う。実際のところそのリクツっぽさはアニメとして完全に昇華されているとは言えないのだが、まァ…それも「再視聴を促す要素」っちう風に言えんこともないか。


「毎回奇抜な刀が一本出てくる」という基本構造は、何というか一種「怪獣モノ」っぽいちうか…「ふむ、今回の刀は一体どんなバカシステムなんだろう」という期待感を持たせてくれる良いヒキだったな。そしてその期待を裏切らず、ちゃんとヘンテコな特質とリクツを用意してくるのも律儀でよろしい。


とまあそんなゴテゴテっとしたスジとは対照的に、キャラデザインはかなり整理されたものになってんのは個人的に良い戦略だと思った。原作挿絵からこういう風らしいので結果論なのだけど、良い対比になってるよね。んで「こういう絵柄ならよう動いてくれるだろうな」ってな期待通り、毎回質の落ちない作画状況だったのはホンマに眼福。この「よく動く」という要素は本作の大きなウリの一つであろうな。うん、何度か繰り返し見た回もありましたよワシ。


果たして商業的にうまいこといったのかどうか、その辺は判らんけれど…うーん、個人的には毎月楽しみな作品だったですなあ。この枠の後継がホイホイ出てくるとは思いにくいけれど、一つの型式として今後もアリなんじゃないかと思う。おもろかった。