荒川/四畳半/さらい屋五葉/刀語

荒川アンダー ザ ブリッジ・12話。お父さんが怖いリクさんは、その最後の一跳躍をどうしても越えることが出来ないのでありました、っちう話。当然それは住民たちの格好の嗜虐対象となるワケでござんして、この世界のターミナルアニマルというかつつき順位トップキャラというか、まァマリアさんにエエようにもてあそばれることになるのである。ついでにニッチの類似した星の人も一緒にね! かわいそうね!


第一話のリクさんとご同様な行動パターンでぱんつ姿になっちゃうお父さん。紆余曲折の末、父さんは何とかリクさんを一時保留として認めるに至る。ここでの携帯電話使った話の転がし方がちょっと上手かったな。父の超克とニノさんとの結びつき、双方を同時に表現するまでの流れがなかなか。


んでもってえーと、最終局面のリクさんの努力を手助けしたあの和装の野郎は…声からして村長か。事態がリクさんの与り知らぬ所で解決しちゃったのはモヤモヤするが、それがこの作品の味とも言えるし、また村長をそこまで動かしたのがリクさんのおかげ、っちう見方もできるか。ま、ホンマに村長かどうか判りませんけどさ。…あと、流石に今回の「風景BG連打連打攻撃」はちょっとウザいと思ってしまった。要所でズバンと効果的にツッコんでくるならまだ判るんだけどなあ。


四畳半神話大系・9話。先週までのラブラブ三失敗を受け、今回の主人公は見事にダークサイドでワルっちいのである。既出のアヤシゲな団体である図書館警察と自転車整理軍を擁する秘密機関・福猫飯店…ひみつきかん? その通り、60年代的ファナティックデザインのヘンテコ組織だ。…図書延滞者の情報集積が母体となって、結果的に権謀術策組織になっちゃったってのは妙なリアリティがあるなあ。


主人公はこの人生において、組織の力によってカネとオンナとケンリョクを恣にするのだが、これは真の幸せではないと嘆いてまたぞろやり直しを願うのである。こーなるとこの兄ちゃん、何がどうなってもやり直ししたい、っちうかやり直しそのものが目的なんじゃねーかって気もしてきますけどねェ。…明石さんとの約束を果たす状況になってさえもやり直しだしたら笑う、し感心もするな。


悪っちくて即物的な、今回の享楽の対比として置かれているのが樋口師匠の世界。無意味に器のでかそうな師匠の言葉や立ち居振る舞いは、確かにちょっとスガスガしくはある。他人の自転車盗んで走り出しちゃう人ではありますが。にしてもホンマ、師匠といい羽貫さんといい明石さんといい、小津さんとの付き合い方は皆さん上手い。実は主人公もそうなんだよな。メインヒロインだけのことはありますよ小津さんもね。ええ。


今回も作画状況はタマラン世界。飛行船の上を走り抜けるイヤミ上司の人、っちうものすごく判りやすい「エエ絵」があったので、そこら近辺をクライマックスのヘソとして、お話にキレイな目鼻立ちがついてたかな、と思ったりした。


さらい屋 五葉・10話。ヤイチさんの過去とヤイチという名の話。イチさんの本来の名は誠之進だったが、ちょっとゴタゴタあって唯一心を開いていた使用人の名を使っている。名を継いだというよりは…負い目として引き受けた、って感じだろうか。そして誠さんと…えーとめんどくさいな、トゥルー・ヤイチさんは八木のおっさんによって繋がっていた、というね。いろいろと知っちゃったマサさんがそれとなくゴマ化そうとすんだけど、あくまで彼のレヴェルの「それとなく」なので八木のダンナにはバレバレなのがかわいいっちうか何ちうか。


毎度ながら話の転がし方が地味でじっくりなので、この程度の秘密要素でもなかなかにシリアス味が感じられますな。今回は特に、人々の関係性の描き方の地味さ、あるいはさりげなさが効果的でよかった。黙然と転がってるだけのヤイチさん相手に女将がいつもの調子でずけずけと喋ってて、ヤイチさんのそれ受けた答えが「姐さん、莨くれ」とそれだけ。んで女将も身を乗り出して煙管渡すだけ…とか、「誠之進を知っているか」と訊かれたご隠居がフツーに「こないだ来たところだ、すまんが黙っててくれ」と答えたのに「もちろんだよ」と返す旧友、とかね。この辺の機微が心地よいわな。


あと、輝かしいばかりに妹キャラな妹さんもよし。簪を呉れたマツさんに対し「ああ、アチシって罪なオンナ」とか思っちゃう辺り、かわいくイタいぞ。


刀語・6話。なんでか酷寒の蝦夷へと来てしまったお二人さんである。ここの刀の所有者について「寒い所のパワーキャラ」という設定があるってことは…まあ、年端も行かぬ明るい幼女さんだってのはこの作品の傾向としてある意味王道だわな。そしてこの怪力幼女さんが、なんと七花に初の黒星を与えるのである。寂しいから遊んで欲しかった、ってことで充分に反省するなど、周囲と比較してかなり真っ当な性格の持ち主である幼女・こなゆきさんの「規格外れの素人」という設定が、七花の敗北とその後のまにわにに対する勝利の理由となるってのが実に「らしい」ギミックだな、と思った。


んでもって毎度の如くこなゆきさんも死んじゃうのかなあ、と思ったら少々強引な手法で命を救う七花さん。ま、双刀・槌を運んでもらうというエクスキューズはあるけどね。あるいは逆に、ここでまた「殺さずに勝つ」という状況を作るための幼女キャラだったとも思われるか。…前回の戦い以降、少しずつ人間性を獲得してきている七花さんだが、それは成長となるのかあるいは弱点となるのか。とがめさんにもイマイチ掴みきれていないようで。そしてこの二人と刀たちの物語がどういう帰結を迎えるのか、という少々不穏な匂わせもあり。とがめさんの背景の重さからして、素直なエンディングにはならんでしょうしねえ。


あと今回はまにわにたちの描写だわな。相変わらずキャラの立ったヤツばっかではあるが、中でも協定修復に向かった鳳凰と川獺の二人が強烈でした。協定破棄の代償として刀集めに最も寄与するであろう川獺の命を断つ。鳳凰の極限までの合理性も然りながら、川獺のキャラが印象的。人情味もある快活な人間だが、己の命でさえ「あいよ」で消費できる。物語に登場する忍者の能力として定番だけど、ここまでの「軽さ」はちょっと異質だ。


そして次回は…あー、お姉ちゃんが立ちはだかるか。そら怪物やろなあ。予告映像だけで充分コワいよ。