オオカミさん/刀語

オオカミさんと七人の仲間たち・最終話。…あー、やっぱ前回までの羊飼さん話はあのまま終わりなのね。原作ではどうだったのかは知らんけど、アニメへのアダプテーションとしてもうちょっと「ケリ付いた」てな感じに持ってっても良かったんと違うかな、とは思う。今のままじゃエエもワルイも、何にもオチが付いてないものね。せめて頭取のお返しとやらがどんなもんなのか、てな示唆くらいはあっても…とか。まいいや。


てことで今回は1話完結。これが最終回ってのも少々ユルい構成だが、どーなんでしょう、新シーズンとかを見据えての構成なのかしらん。とりあえず登場したるはマッチ売らずのマチ子さん。リョウシさんが大金持ちだと勘違いしてあの手この手でオトしにかかるという、ヒロインをヤキモキさせるにちょうど良いキャラである。お約束のパンチラでケツに自分の名前を大書してあるとか、頭の悪いギミックはそこそこ楽しかったが…やっぱ中途半端かなあ。一連のギャグっぽい描写と、「御伽銀行が親が持ち逃げした借金をチャラにした」という妙に生臭い解決法がどうも馴染まない。別にそれはその、親を見つけて説得して…とか、そういう甘っちょろいシカケでも良かったのではないでしょかね。


●えー、なし崩しに総評。ラノベ原作の学園アニメというそこそこよくあるジャンルだが、世界観のモチーフがおとぎ話だからか、かなりゆるゆるっとした志向の作品。それはある程度意図的なものだろうけれども、んー…齟齬があるとすれば表現形式かしらん。この脚本/世界観で、あの最近のJ.C.STAFFのキャラデザ方向ではちょっとカッチリしすぎたかな、というね。毎度ながら手堅く遺漏の無いよい仕事なんだけど、ことこの作品の場合はもっとハデで俗っぽいキャッチーさがあった方が違和感なかったかも知れない。これは好みの問題もあるでしょうけれど。


悪役もお邪魔キャラも、大きな構造として用意・管理された世界なのですよという(少々ディストピアくさくもある)前提条件を示しといて、その枠を逸脱気味なボスキャラ勢力を提示する、という構造も判りやすい。ただ「一区切り」という程度にもなってないボスとの決着はちょっとな、とは思いました。原作との兼ね合いもあるだろうが、そこはもうちょとがんばれよ、とね。…待てよ、おとぎ話世界っちうシバリであっても、グリム/アンデルセン以前の土俗的でダークなキャラが登場、ってのは充分ありえるな。ま、それはそれとして。


あとはまあ、あの異様に前に前に出てくるナレーションだわなあ。どうやら原作の地の文もメタ気味なテイストが施してあるようで、そのアニメ的アレンジってことでああなった、のでしょうな。新井里美さんのイロモノ芸は楽しかったし感心もすることだけど、流石に登場人物の会話にカブるのがデフォルトってのは作品侵攻の阻害じゃないかなと思わんでもない。他の部分はともかく、これは最後まで慣れなかったなあ。


てことで、大きなインパクト勝負だったり革新的だったりという要素とは無縁の、どっちかというと小品に分類されるようなアニメだったってとこですかね。あんま褒めてないな。でもワシそんな嫌いじゃないっすよ? 続シーズンがあるならば…えーとまあ、保留で。保留かい。


刀語・9話。今回の刀は王刀・鋸、所有者は汽口慚愧。双方とも実にイカツそうな名にして、刀は単なる木刀で持ち主は求道的で落ち着いた女性、と毎度の外し方が心地よろしい。虚刀流としては無類の強さだが刀を持ったらカラキシな七花さんを相手に、慚愧さんはなんと自分が稽古をつけてやろうと言う。なんかミョーな流れになるとともに、とがめさんのジェラシーボンバーも大爆発でありますよ…というお話。


とにかく実に害のないお話でして、ラストシーケンスにおいてそのこと(やりかたによっては一瞬でカタがついていたこと)をわざわざ表現していることでも意図的なものである。つまり今回は、絶望的に剣の道に適性の無い七花さんと、きゅんきゅんしちゃうほどヤキモチ焼いてるとがめさんの行状を賞玩する回だった、と言っていいでしょうな。それであって何やらすげえ面白いし、毎度々々いろんな趣向を考えるものだ。特にとがめさんの行動言動は、田村ゆかりの演技も相俟って見ていて飽きない。しぐさがいちいち寸足らずでかわいらしいよね。多分経歴や背景には重いものがあるんだろうが、とりあえず童子(ロリ)属性なのでしょっがねーよな!


無論「刀を持つことが呪いのような七花さん」というシコミとか、裏ストーリーの真庭忍者/エモンさんの血腥く容赦ないお話とか、そういう真面目な要素もちゃんとあるんですけどね。…鴛鴦さんとエモンさんの戦い(銃で撃って早々に決着)はあれ、レイダースのオマージュかしらね。しかし「銃の機能を持ち銃という名を持つ刀」ってもう、改めてなんでもアリやな。


さて。上でも書いたが七花さんは一般的な剣術の適性は全く無い。これは何でしょうね、彼自身が刀だから「刀が刀を持つ」なんてことはアリエネーとかそういうことなのだろうか。刀を集めて回る話だってのに、折角手に入れた刀をほぼ生かすことができない設定なのもアヤシイとこだ。なんかこう、物語的な仕掛けがあるんでしょうな。ま、それもよし。