アグレッサー・シックス

●ウィル・マッカーシィ「アグレッサー・シックス」読了。アグレッサーちうても、敵国ペイントの戦闘機は出てきません。敵性宇宙人との玉砕戦の中、相手エイリアンになりきって行動するテストを行う5人と1匹のお話。


解説どおり、冒頭のツカミがなかなかである。物語最初のセンテンスから「女王様とお呼び!」と宣言する上官と、「ワタクシメは犬です、犬でございます」とのたまう犬の大登場。何のプレイだ。


ま、敵宇宙人のロールプレイの結果なんですけどね。そこまでしなきゃ勝てない…というか、もうそんなことしかやることがないほどの完璧絶望の負け戦。そんなズタボロ描写ってのはある種の逆説的快感がありますな。


でもね、ちょいと中途半端なんだよな。ハードなミリタリSFとしてはどうも語り口がゆるいし、登場人物もプロっぽくなくて少し薄っぺらい。何より「主人公たちが異星人のシミュレートをしている」という設定が、象徴的な意味以外ではあんまり状況に寄与してないのがなあ。どんでん返しのきっかけは別キャラだし、ラストの展開はただの人間でも問題ないもんな…。


戦争原因のワンアイデアを核に中〜短編にするか、あるいは悲惨な消耗戦描写主眼でもっとじっくり書き込むか、どっちかのほうが良かったような気がする。てことで、長さも中途半端に感じましたねえ。