ダンジョン飯/フリーレン/薬屋のひとりごと

●新番組・ダンジョン飯。満を持してのアニメ化、と言っていいだろう。ここまで引きしぼってのタイミングってのは原作側とアニメ側双方にキッチリした意識があるという証と判断し、是として捉えている。あの原作をトリガー制作でうえのきみこ脚本、という微妙にド定番から芯を外した(しかし高い力量は保証されてる)座組、さていかなるシナジーをまろび出すことか…というね。

ダンジョンをメインとした世界設定の遺漏のなさと構築具合は、話のために作ってるってとこもあるだろうけど純粋に「楽しいから細部をツメました」という雰囲気が感じられてそこがいい。メシがメインなので食材的要素はもちろん充実してるし、ファンタジィ世界やゲームや文学の定番な手ごたえを外さないその他のディテイルも豊富。…死体が蘇生可能であるっていう一見してユルい設定も、あとあと重層的になってくんのが上手いわなあ。

前座のVS赤龍戦は濃厚なトリガーテイスト、そっからあとはかなり手堅い話運び。ノッケからマルシルさんがかわいったらしいデザインなので後々の違和感は少のうございますな。とにかく各キャラのキャスティングが手堅くて、単なるタイプキャスティングでも縁故採用でもなく、各キャラ共通の印象をできるだけ掬い上げた結果が感じられる。特にマルシルの千本木彩花がかわいい声からきったねえ叫びまできっちりこなしてて感心した。あとセンシの中博史は個人的推しなので満足です。

うーん、いいのではないか。望みうるベストのアニメ化としていくつかあるバージョンのうち、確実に一つはこれなんじゃないかという雰囲気である(つまりまあ、このトリガー以外のベストもあっただろうという余地は感じられる)。これでちゃんと、長い期間を確保して、最後までやってくれたらこれ以上の文句はない。視聴継続します。

●葬送のフリーレン・17話。Aパートは遣らずの雨ならぬ遣らずのブリザード、別れそびれのザインはフェルンとシュタルクのケンカに仲裁したりする。ケンカっつったってこの二人の場合は非対称戦争でして、フェルンがまるまるぷんぷんしてシュタルクが泣くという、そういう感じである。仲直りした双方のセリフが「もっとやさしくして」「ごめんよぉ…」なのがもう…。そらザインも「もう付き合っちゃえよ!」って言うわなあ。要するにこのパーティはみんなどこか子供なんである。フェルンにシュタルクはもちろん、4ケタ年生きてもイマイチ心の機微に疎いフリーレン、スレたおっさんだがアカン意味でもガキの心を持つザイン。そういう不完全は不確定さであり、ひいては今後盤石の状況を打破するゆらぎとなる。んだと思う。多分。知らんけど。

Bパートは風邪ひきフェルン。心身定まらない時に手を握ってあげることの、心の支えってェそういう話。これもみんなが子供と大人の両方の属性を持ってるからこその、そういう狭間の良さがあったりするんかしらね。

今回絵コンテに川尻善昭、もうこのままずっと演出監督したらエエと思う。作画もできたら…ってその辺はキツくもあるかなあ。あとシーズン代わりで更新のED映像がすごくよろしくて、細密な絵とストップモーションアニメ的技法がいい感じのノスタルジー/ファンタジーさを醸し出してました。前世紀の東欧アニメっぽさもあるね。

薬屋のひとりごと・12話。前回フォンミン侍女の処罰関係先はマオマオにも及び、後宮からの解雇と相成る。マオマオの右往左往シーンはちょっと面白い演出で、走る彼女を中心に不安定に回り込むってな感じ。巨大な後宮≒国家権力と矮小な庶民の対比という絵面だろうか。…ジンシ/マオマオ双方ともフツーの上下関係であれば、マオマオは臆面もなく阿ったり陳情したりし、ジンシは「さようならば貴様はエコヒイキしてやろう」と裏的な職務したり、でどうとでもなっただろうがねえ。要するに一般的ラブコメのすれ違いシーケンスの変奏曲なんだろうなこれは。

マオマオさんは妓女としてババアんとこで再就職。あの薬毒学技量があれば他の道もと思うが、それはこの世界の理なんだろうかな。ともあれ、お呼ばれの宴席でジンシ様と再会、結構キモいジンシ様のボディタッチが結構キモい。ジンシ様・ババア・トップ妓女たちと強力なつながりを持ち、独自の判断力と知識もあるマオマオさんがこの中途半端な立ち位置、ってのは庶民時代劇から「なろう」モノまでの定番ですわな。

結局ジンシ様によって後宮にもどることになるのだが、ババアへの金子とともにマオマオさんへのお手当は冬虫夏草なのね。判りやすい。