少女終末旅行/キノの旅/宝石の国/魔法使いの嫁

少女終末旅行。生きるって何だろう、とかテツガクなこと言うてたらユーにド突かれるチーちゃんである。そしたら目の前のビルが大倒壊、その土煙の中から…ああ、彼女たち以外の人が(回想以外だと)初お目見えですか。カナザワと名乗るそのおっちゃんは、周囲の地形をマッピングしつつこの世界をうろついている。彼にとってその地図こそが生きることである。…ここで「ほなその地図燃やしたろか」みたいなこと言えてしまうユーがユーであり、おもろいお嬢さんではある。

物語の後半、しかしその地図はホンマに失われてしまう。すっかり無気力になってしまう彼であり、じゃあ死ぬのかっちうとそうでもない。人間って/生きるってそんなもんなんだろう。この世界、多分死のうと思えばいつでも死んでしまえる。だからこそ、まあ、もうちょっと生きて先に進んでみたろかしら、ってな「間合い」が、ここでの生に対しては適正であるのかもしれない。

普段からのほほんバカっぽいユーさんが、カナザワに対して序盤ずうっと警戒を怠らないのがなんか面白い。こういう大型犬っぽさが彼女の要素の一つなんだろうな。あとそのカナザワさんは石田彰。てことはコイツが黒幕じゃん、とかそういう擦り切れたメタネタはともかく、技量の高いベテランがこんな感じでどこか気を緩めた演技するっての、なんか好きですな。しかしこの人も若いねえ。

キノの旅・3話。タイトルは「迷惑な国」。巨大な自走式国家であり周囲を蹂躙しながらただ進んでゆくこの構造物が当該の国家かと思わせて、実は今回の蹂躙対象も指しているってことが判るような、そんなお話。冒頭でキノさんが困ってフテ寝してんのも、移動国家にいつもの三日ではなく五六日滞在すると言ったのも、見終ってから「あーなるほどね」って気付くような構成ですな。

この移動する国、内部的にはおだやかながら対外的にはかなりテメエ勝手な無頼国家である。蹂躙されて嘆いている農場主とか荒らされた自然とか、そういう描写をぶっこんで来るのでそれはかなり意識的なのだが、キノさんは焦ったり気に病んだりもせず「ま、見なかったことにしよう」という態度。このドライさはなかなか面白くて、かつ寓話的な世界設定にも割と合っている。…移動国家のインダストリアルデザインが、どっか管理国家的な過剰クリーンな感じになってんのは皮肉の一種でしょうかね。

宝石の国・3話。月からのでんでん虫に取り込まれたフォスくんだが、その無力化されたでんでん虫そのものが何となくフォスくんっぽい感じがするのでダイヤさんは困ってしまう。自分が不用意に口にした言葉が彼をかく変身させてしまう引き金となったのではないか。しかし、やっぱあの殻にある緑色部分がフォスじゃねーの、っちうことでいろいろあって戻ってきましたという話。

本当になんか夢の世界のロジックみたいな話で、それはダイヤたちのスタイリッシュでしなやかなアクションや「体が毀損して宝石の目玉が露出するフォス」というややグロなイメージなど、ちょっと他のアニメでは出てきそうもない演出によって補強される。…これ、ガキっぽくて能天気なフォスさんとか「恋愛脳」なダイヤとかが居るからこの程度の雰囲気で済んでるけど、ガチで推し進めたらルネ・ラルーとかそっちらへんの雰囲気にもなりそうだなあ。

ちっこくなっちゃった月人のでんでん虫に斎藤千和。ほぼうにゃうにゃとワケ判んないこと言うてるだけなのにきっちり感情が判る演技してて流石だなあと思った。どうやら次週ちゃんとした姿になるみたいだけどね。

魔法使いの嫁・3話。アイスランドくんだりまで来てドラゴンにさらわれるチセせんである。これはめんどうな敵が出たと思ったら、浪川声のイケメンでありその上エリアスの知己のドラゴンマスターであった、という話。巣で出会ったエンシェントなドラゴンとの会話/記憶共有を通じ、チセさんは彼女にとっての生きる意味、とまあそんな大上段なものの一片についての知見を得たりする。

人生、もとい龍生を終えて巨大な樹になるジジイ龍。彼の記憶を共有するチセさんというなかなかファンタジィなシーンは、特に情景の色彩が印象深くなるよう設計してあって面白い。見ているうちにどんどん色の変わる海原とか、こういうのってCGI時代ならではの効果・演出やよな。

ジジイ龍に大友龍三郎は面白いキャスティング。深みと力量のある、人生のとんでもない先輩キャラってな役が良く似合う。あと名前に龍の字入ってるしね。