正解するカド

正解するカド・9話。ザシュニナは真道/に対して更なる異方の「物」、ナノミスハインを提示する。ここで「4つ」と言いつつワム・サンサ・ナノミスハインと3つしかないのがちと気になる。カドやザシュニナを勘定に入れているのか、それとも言明されていない何かがもう提示済みなのか。ともあれ、このナノミスハインもそれまでに劣らず…いや、それ以上にヤバい代物であり、それは質量/慣性制御物体。真道は流通だの何だのどころじゃないオバケマシンであり、これを手に入れたら今の人類はごく短期間で社会構造(ヘタすりゃ存在そのもの)まで変革する。

何でまたそんなものを…という問いに、ザシュニナは異方とこの世界について解説する。40次元を持つ異方において情報の飢餓は深刻であり、情報を得るための繭として作られたのがこの宇宙と人類であったと。ここで即座に物理定数に気づくのが真道の回転の早さやねえ。「物理定数がごく僅かでも異なっていたら地球も生命も人類も存在できなかった」というのはSFネタの定番だけど、そういう人間原理ネタの回答の一つが異方存在ってワケか。

そして真道さんを異方に(多分情報源として)スカウトするも失敗したザシュニナさんは、恋愛ゲーのセーブロードの如く現真道さんを消してバックアップからやり直そうとする。いかにも「悪」な演出にしているが、これもジジイ博士の言うとおりどこに善悪を置くかの視点の差でしかないんだよね。…んでもってクライマックス、マジカルサラカさん登場のドンデンは大いに驚いて手ェ打って面白がったけど、よく考えてみてもなかなかエエトコ狙ったドンデンだと思った。それまでガチで地味な描写を重ねておいた上で、いかにもなスーツに身を包んだ救世主ヒロインが魔法の如く駆けつける…しかしその為の布石はシッカリ置いてあったことに気付く、という。

こうなると前回の、いささかダルなサラカさんの説得シーンも…というか、登場からこっちの「デキる人なんだけどどこかポンコツっぽい」という性格や描写自体が何やら別の意味を帯びてくる。文字通り次元が違う存在である異方の者が、人と付き合い説得するのにこれ以上なく人間っぽいメソッドを使う(あるいは使わざるを得ない)ということ。…今回の描写だと封印を解いて万能の異方存在になってカドの中に入ってったようにも見えるけど、あれって70時間(≒3日間)ホンマに経過してる可能性もあるんだよな。となるとあの壁を破ったのは品輪博士で、サラカさんは少なくともカドの外では普通の人間としての能力しか持ってなかったのかもしれない。いやあ、いろいろ考えられるねえ。

CGキャラと手描きの同居する本作だけど、ザシュニナが真道をスカウトするシーンの実に微妙な表情はあそこだけ手描きになってましたね。なるほどの使い分けというか、あるいはCGで作った絵にリテイクでも喰らったかしらん。