●昭和元禄落語心中・9話。先週とっつかまった親分は結局6年の実刑となる。親分を思い意気消沈するアニキ、うつむいて落涙するので涙が一粒グラサンに引っかかってんのがなんか細かくていい。さて、そうとなりゃ親分とこへ慰問にでも行って見ましょうやと八雲に提案する与太公である。煮え切らない八雲を翻意させんのはやっぱし信乃助のぼっちゃんですよね、という。てェか親子(?)三世代、風呂場で一緒にお話してんのが実にほのぼのっぽくていいなあ。ケンがあってヘンコな八雲だけど、与太さんをちゃんと弟子としてフツーに対応してんのがよろしい。
んでその慰問で演るネタってのが…ああ、ここでたちぎれ線香やんのか! 満座の囚人ども相手に「軟禁されて思い人に会いにいけず、結局思い人が死んじゃう話」をやらかし、その上でコッチの世界に引き込んじゃうのが最高に八雲ですね。前に検索した時、小糸を江戸落語バージョンではみよ吉と言い換えることもあるってのを知ったけど、ここでキッチリみよ吉っつぁんが出てくるのはお約束だよなあ。
そしてある晩、八雲は十八番の「死神」とともにあの世にいこうとするが、未練あってそうはいかない。演目の死神やってたら芸事の死神が出てきて、それは先代助六の姿にやつしている、ってのは八雲にとって皮肉なことだ。あるいは八雲自身の身の内から出てきた、そういうイメージでもありましょう。攻殻機動隊で死に掛けたトグサが「家族の姿を見た」つって、バトーが「そりゃ家族じゃない、死神ってやつだ」と言うシーケンスがありましたっけか。そういやトグサくん、山寺さんでしたな。…この辺の死神のシーン、空調入れてない高座で僅かに八雲の息が白い、ってのが実に寒々しくてよろしかった。