昭和元禄落語心中

昭和元禄落語心中・5話。八雲助六の親子会にこぎつける与太さんであるが、懸案の居残り佐平次は彼の中でもうちょっとキマらないと見える。我を出せ欲を出せ自分を出せと言われても、与太さんにとっては落語自体が主体であって自分がどうこうというのはどうもピンと来ない。そして樋口先生は「我を出せということそれ自体も制約に過ぎないのではないか」とめんどくさい事を言う。名人上手の居残りを聞けば、皆が皆まったく違う…。ならばそういった、違うこと全てを受け入れてやったったらエエん違うかしら。自分だの何だのはどうでもいいや、だってオイラそれが一番楽しいからな! とまあ、不肖の弟子の言葉に頭抱えつつ「もういいや好きになさい」と諦める八雲さんでした…というね。

ならばその助六佐平次を見てみたいってのが身上だけど、その前に八雲さんが倒れっちまってそんなレベルの話ではなくなってしまった。…予告で線香使ってたからひょっとして立ち切れ線香でもやるかしらと思ったけど、反魂香(高尾)でしたか。そしてその香の中にみよ吉っつぁんを見て、八雲さんはひっくり返るワケだ。こりゃそろそろ、師匠にはあの世とこの世の境目が薄ーくなってきてんじゃなかろうかしら? しかしあの世の先代助六もなかなかエゲツないことをするが、それは幻を見てる八雲自体の意図意識でもあるんだろうねえ。

今回は親子会の二人、陽の助六と陰の八雲の対比がスッパリ決まってて気持ちいい。八雲がブツクサ言うくらい(実際あまりウケ過ぎると出にくいものだ)客席を沸かす、とにかく開放的で動的な助六が前にあるだけに、一瞬で画面がフィックスして色調も寒色になる八雲の雰囲気がいや増すってなところ。実際ツヤっぽいところのある話ではあるけれど、この演出だけ抜き出すとなんかやたらジメッとした話に見えるね、反魂香。聞くと割とクスグリも多いんだけどな。