コンクリート/うしおととら/ワンパンマン/おそ松さん/ルパン三世

●コンクリート・レボルティオ・9話。辻真先御大を召喚してサザエさんネタをやるってだけでもう腹いっぱいに近いのだが、彼らは悠久の時を越えて永遠に行き続ける超越生命体家族であり、それを滅するために米国から超ロボット生命体っぽいモノがやってきて、武器としてオキシジェン・デストロイヤーを使うのであった…という、いやあもう何喰ったらこういう本を書けるジジイになれるんだろうと捻りすぎた首がねじ切れるほどのお話である。おまけにサブタイは小松左京だ。辻先生、キレッキレにも程がある。

まあ一つ一つのネタやギミックは、平らにすればそこそこアリモノのアイデアと言えんこともないのだけれど、その構成具合と味付け、そして何よりこの作品において「辻真先が本を書く」ってところでキレイに画竜点睛がハマったなと。いやはや、何が出てくるか判らん作品ですよなこれ。…聞けばこのアニメの小説版は辻先生の女性バージョンがメインキャラとか。確かにまあ、戦後アニメ史という枠で考えるとこの爺さんはそういう位置になるわな。それが実際にスタッフとしてやってくる…メタフィクションというかメタリアルというか、ねえ。

超人サザエさんたちの中でタラちゃんの役割持ってる赤ちゃん(でも多分女の子)が何故かブルース・リーのトラックスーツっぽいベビー服着てたんだけど、見ててふと「タラちゃん…タランティーノキルビル」と連想して膝を打った、というか「バカじゃねーの!?」と思った。いや褒めてんですけどね!?

うしおととら・22話。お役目様の死を受けて腑抜けておるうしおさんに対し、多分自分でもあまりよく判ってないままに手荒な元気付けをやってるとらさんである。ツンデレってのはこういうのが身上よね。「なんでこんなにアイツが気になるのかしら…」だよね。流兄ちゃんにはキッチリ解題されてたりすんですけどね。

てことでキリオ一派に槍を奪われ破壊されそうなうしおさん、の巻。敵(?)の本拠地である古びた洋館に乗り込んでって、おそいかかる異形の人造生命体をぶちのめしながら先に進み、重要人物のミイラと手記を発見し…とまあ、この辺はものすごくADVゲームというかテーブルトークというか、そんな雰囲気濃厚でなんかワクワクした。いやまあ古典ホラーのこういう雰囲気を再現したのがゲームだから本末転倒の感想っちゃそうなんですけどね。中ボスっぽいのが省略されてたのが少し残念…あのメイドホムンクルスはなんとなく記憶にあるぞ。

今回はアクションも然りながら、絵や演出の雰囲気がすごく藤田マンガっぽくてそこが心地よいなと思った。イナサの「恐怖のポーズ」とか、オーバーアクションにも程があってギャグに片足突っ込んでんだけど、そのすれすれのおどろおどろしさが原作の味だよね。そしてラストの斗和子の目、これは相当に注力しただろうなあってなおっそろしい雰囲気。同じくらい原作っぽい、流兄ちゃんととらさんのちゅーとかもね!

イナサのぼんさんに坂口候一。こういう線の細い腺病質なサブキャラにマッチしててよくお見かけする人である。これがハタ皇子だってのがスゲエよなあ。

ワンパンマン・9話。深海王・後編。当然サイタマの前にはワンパンで滅することになるのだが、今回の工夫は「相対するまでにいろいろあって手間がかかった」という方式にて状況を引っ張ることである。それだけだとやっぱりマンネリ気味だろうけれど、周囲のヒーローたち(特にジェノスと無免ライダー)のドラマ、そしてサイタマの「泣いた赤鬼」っぽいエピソードで上手いことドラマを繋いでるなと思った。

今回もまた、そんな脚本以外の要素もことごとく突出しててよろしい。冒頭激しくブレて歪むバトルシーケンスは…あれバヒさんかなあ。いや名前と作風が一致してんのがそのくらいだってだけだけどさ。亀田祥倫作監だったり、何となくスペースダンディを思い出す作画スタッフやね。そしてまずすっげえイイなと思ったのが雨の描写。無免ライダーがへたり込み、それでも自分の意志を吐き出しているシーンでの雨の描写。地面に描かれる無数の水紋が、その陰鬱な色彩設計と相俟ってすごく印象的である。そんな状況を毎度の如くひっくり返すサイタマのワンパンにより一瞬で晴れる雨模様の爽快さも良い。…絵コンテ見たら先週に続き川尻善昭。この人も切っ先が衰えんなあ…。

結局今回もサイタマの職能は「状況を一瞬で終わらせる」というもの。まあそのあとの露悪的な演説も彼の本質として重要なんだけど、でもアクションバトルのメインはジェノス(とその相手の深海王)にならざるを得ないのよね。「連打」をバカにする深海王の言動は確かに真理であり、そしてその真理によって撃破されちゃうというギミックでもあるけれど、連打合戦ってのは「ちゃんとバトルしてる」ということでもありますからな、バトルアニメとしてはそれ重要よね。ジェノス、毎度毎度ぶっ潰れちゃうけどね。しょうがないよね。

おそ松さん・9話。アバンはなんか屁ェみたいな終わり方のデリバリーコント。ダウナーなだけで明確な笑いどころも設定せず、そのまんま終わってしまう雰囲気がなんかいい。そらハタ坊も無視するわなあと。んでAパートはカラ松とチビ太のおでん師弟話。説教くさいが一応は一般人っぽかったチビ太さんが実は暴走キャラであった、というギミックをお題として最大限まで枠を広げてゆく無茶さが心地よい。味見…味見って何だろう、とそういう感想が残るエピソードであった。

そしてBパートは謎の「ホントにエエ話」。いやエエ話に謎も何もないんだが、おそ松さんでこういうのやられるとなかなかにビビる。でも原作マンガだとこういう感じに人情話がちょいちょいあると聞くし、それは確かに赤塚マンガっぽい気もする。それにしても冒頭で十四松の十四松ぶりを見せといて、それを引っ込めた上で「実は彼女ができたらしい」と判った段階で、他の兄弟と全く同じリアクションを取ってしまう視聴者のワシであるよ。マジで「ええええ!?」つっちゃったもん。もうそれで向こうの勝ちだよねえ。

あと、その彼女が何故自殺しようとしていたか・おそ松兄さんはビデオ屋でナニを…どんなことしてる誰を見たのか・彼女は何故新幹線で去ってしまうのか、などの要素がはっきりと描写されないってのもいいと思う。判るよね、ってことやんな。そういう根っこんところはボカすけど、十四松の見せた芸や一発ネタがすべてシコミとバラシとして呼応している、という脚本の密さがこれまた興味深い。つくりが丁寧だよなあ。…なんか幸薄そうな彼女に桑島法子。またえらいとっから引っ張ってきたなあ。

ルパン三世・9話。五右エ門担当回。このおっさんは案外メイン張っての話作りがなんか難しいっぽい感じで、どうしてもある程度似た様なプロットになっちまうのはしょうがないかなと思う。ま、それでも五右エ門的イメージも崩さず、ちゃんと仕上げてあったと思いますよ。いつもいつも堅物ギャップでコメディやらされてるってのは見てる方も不本意だし、こうしてワケ判んないサムライマジック見せてくれるのは楽しいです。…そうと判っていれば銃弾の雨あられがまったく効かない、ってのは結構なチートキャラだよね。

てことでなんかニキータみたいな殺し屋お嬢さんと五右エ門さんの話。ストーリーのネタは割と早々に割れる…というか、なんでこのヒロインがそんな超絶的なスナイパースキル隠してたんだという疑問はあるけれど、まあその辺は「お約束」の範疇ってことでいいかなと思う。舞台も対象者も違う状況で連続的に人が死んでゆく、あのアバンの雰囲気はよろしいしね。あと浪川五右エ門はどんどんエエ感じになってて、あまり他の浪川キャラでは見られない雰囲気があるな。この演技あればこそ、あのラストが生きるなと感じたりしてね。いやスーパー斬撃の方じゃなくて、指きりを見て「むっ」と気付いたのを次元に「人違いだよ」と笑っておし留められるシーケンスね。この「語らなさ」はシブくていい。