ノブナガン/弱虫ペダル/サムライ

ノブナガン・最終話。ジャックの中に在るのはナイチンゲールの遺伝子…ああなるほど、この兄ちゃんが二人の英雄を身に宿してるんじゃなく、切り裂きジャックイコールナイチンゲールってことやったのね。謎のウィルスの大流行を未然に防止するため、罹患者を止むを得ず殺して回った宿業の女性がその正体、ってことか。てことでジャックさんの真の能力「極めて重要なポイントがあれば自動的にそれを知らせてくれる(ただし自分で制御は出来ない)」ってなシロモノの力を以って、戦艦型の侵略体をやっと倒すに至る。あとついでに別働隊もなんとかなりました。

ま、地球の危機も話の流れもまだまだ続くだろうが、一旦のシメとしてはまあ妥当な区切りではなかったでしょうかしら。一応のラストに相応しく、参加キャラ皆さんそれぞれに見せ場もありましたしね。最後にくっついてきたジャックさんとノブナガンさんのらぶらぶスタートエピソードは、野郎の方のキャラを考えてもゴマカシはナシだよなあと思ってたので悪くない。けどこれ、典型的な吊り橋効果じゃねーかしら? あと日本の百合本妻も気にしなきゃダメっすよ。知らんけど。

●総評。歴史上の偉人のパワーを得て侵略宇宙生物と戦う能力者たち、というまあ実にキレイなB級志向の作品である。それはセッティングや設定など、原作の時点での方向性がまずそうなんだけど、…そうねえ、アニメアダプテーションの段階にあっても別の意味でB級っぽいことになってんのは否めない。ま、ぶっちゃけバジェット的なあれこれのことですけどね。

実際超絶にリッチな画面でいっぱいだったとはちと言いづらいんだが、でも多分、与えられた枠内でどうヤラカシてやろうかしら、という制作側の明確な意図はよく感じられる成果物だったとは思う。多くない予算とリソースであるならばアイデアで勝負だ。脚本の細かさや色彩設計の大胆さでエンタテイメントを作れ。うん、このちょいと安っぽい雰囲気、嫌いじゃないっすよ? 

てことで、1クールのアニメ作品としてそこそこにまとまったお話だったと思う。これぞ一大傑作と言うつもりもないが、キャッチーなツカミと適度なエログロ、それに割と端正な設定というB級精神は捨てがたい美点ではあろう。…あと主役の武藤志織さんですか、いかにも新人っすよという初々しさと意気込みがキャラと作品に合っててよかったと思いますよ? できれば今後もエエキャラに出会えるといいなと思う。何かね、頑張ってる若い人見るとね、無条件にエエなとか思うてしまうんよね。オッサンやからね。関係ないか。じゃ!

弱虫ペダル・25話。VSハコガク泉田さんとのスプリンター勝負、その決着。計測点まで残り300mの距離を1話かけて語り、その中には逆転々々の流れやら各人の回想やら長い語りやらと盛りだくさん。こういう「一瞬の時間が際限なく引き伸ばされる」ってのはスポーツモノにようある手法ですわな。海外の感想とか見て回ってるとキャプ翼が代表とされてるみたいで、なんか面白い。まそれはともかく。

技巧も必殺技も使い果たし、最後に頼るのが「気持ち」という泥臭さが田所・鳴子コンビである。泉田さんはシステマティックに整え、鍛え、自らを「鋭く長い槍」と称する一方で彼ら二人を「汚れた槍」と見下す。しかしその汚れは彼ら二人にとって戦ってきた証であり、なりゃこそこの勝利につながるバイタリティでもある。最後の最後、風に吹き飛ばされたカラーコーンへの対処で明暗が分かれてしまう展開はまあ、ご都合と言えんこともないが象徴的でもある。…最終的にど根性が勝利する、ってのは直線勝負のスプリンターならでは、ってとこもあるだろうなあ。

にしてもやっぱ泉田さんは面白いなあ。大胸筋左右にアンディとフランクってな名前を付ける段階で既に面白いんだけど、それぞれに別性格があって可愛がっているとまで来るともうすげえ。何でしょうねこの筋肉至上主義ともまた違う、筋肉キャラ萌えみたいな扱いは。それで掛け声がアブ(腹筋)というのもよう判らん。おもろけりゃいいけどね。

あとCパートの二年生組2人、青八木手島のコンビはもう結婚しちゃえばいいと思った。なんだその銀婚式夫婦みたいな阿吽の会話。

サムライフラメンコ・最終話。ゴトーさんの心の闇に乗じて「ハザマさんに対する究極の悪」となろうとする澤田さんである。取り返しのつかないトラウマをもたらす事でハザマさんに「ダークヒーロー」となってもらう、ってのはまあ判るけど、それにしても他人からお仕着せのダークヒーロー要素ってのも大きすぎるお世話ではあるよな。確かにハザマさんはその辺のダークさとは無縁ではあるが、そのワケ判んないピュアさが彼の身上でもありますから。

てことで、そのワケ判んなさで押し切って、裸のヌーディスト状態でゴトーさんと「結婚しましょう」ちうて、澤田さんの論理をぶっこわして勝利するハザマさんである。かたや裸、こなた銃持ちの状況でお互い程度の低い口げんかしているというそんなシーンに、情感のあるBGMを乗っけてエエシーンにしちゃうという演出がなんかこの作品らしいなと思った。ハザマさんの気合入った「バカですよバーカ!」とかの言い方がよろしい。最終的にフラメンダイヤさんの乱入とちんこストンピングで終わる辺りもね。…そうか、そういやハザマさん第1話でもヌーディストでしたな。入れ合わせはついたァる。

とまれ、こうして一応は平和を取り戻した世界。いくらかゴタゴタも増えつつある状況であり、彼らヒーローや警官の活動もまた続いていくのだろう。一旦は絶望を見たゴトーさんであるが、こうして見てみれば澤田さんによる携帯メモリ消去も重要なイニシエーションとなったと言えんこともないな…ってまだメール続けとんのんかい! 進歩しねーなおっさん! あとゴトーさんの彼女の失踪理由は最後まで謎のままなのね。世間に掃いて捨てるほどあるただの事件、しょせんそんなもんですよってことなのか。チェーホフの銃ってワケじゃないだろうけど。

●総評。市井のヒーローとして苦闘する一人のイケメンが世界を変えていく話、と言えば良いか。初めのうちはキックアスのようなヒーローモノのメタ作品かしらと思ってたら、中盤チョイ手前で劇的に舞台が引っくり返って別の意味でのメタ要素が大挙襲来してきたワケで。オリジナル作品の「いやあ、コレ一体どうなっちゃうんだ?」というキモチを存分に味わわせてくれた作品であった。マジであのギロチンゴリラの出てきた瞬間の衝撃たるや、フツーに「ええええ?」って声出しちゃったもんなあ。

流れとしてみるならばいささか蛇足にも見える、最後の澤田さんのシーケンスだけど、どうなんだろう…まだ舞台は続いてゆくという緩やかな繋ぎを演出するには割と必要なものだったのかもしれない。一人の人間の話からどんどん世界が広がり、そして最後にもう一度小規模な人と人との関係に収束する。本人の言うとおり、澤田さんは刑期が終わったらまたハザマさんに対するネメシスとして振舞うだろう。それを含め、ヒーローのお仕事。ある意味澤田さんの歪んだ言辞は、一面から見ればそれもアリ、なのだろうね。

えー、そうねえ。ものすごく質の高い画面の作品であったとは言い難いが、今期の2クールの作品の中でも毎度楽しみに見させていただいがアニメだったですよ。制作側のヒーローモノへの思いに割と共感できそうな、そんなトシであるからってのもあるかもしれんけど。あとちょろっとだけ出てきたアメコミヒーローがもうちょっと種類出てきてくれたらワシ好みだったな、ってそれじゃ視点がブレますか? まいいや。