テンペスト

絶園のテンペスト・最終話。狙撃されたヨシノさんは別にたいしたことなかったし、諸々のお膳立ては整ったし、さあラストバトルだの巻。ハネムラさんが強大な力を持つはじまりの御柱に心砕けつつもサポートを得たり何だりで主役っぽく復活したりして、この作品にしては割とストレートで素直な王道展開ではあったな。いや元よりそんなヒネクレた作品ではないんだけどもさ。

そしてサブタイ「それぞれの物語」の通り、ここに集いし面々がこれから先どのような道を進むのかが示されてお話は終わる。引っ張って引っ張ってから最後に顔を見せる姫さまはなかなかにオイシイ役割ではあるな。

危機的なシチュエーションで「アイカならどうするだろう」と思い起こされたり、忘れ形見のビデオレターで場を統括したりと、アイカさんは最後までこの物語における最強キャラの立ち位置であった。しかしマヒロさんは彼女の行為を「間違っている」と評するのである。…アイカさんの強さはあくまで物語に沿った、舞台上の役者としてのそれであり、マヒロさんは何とかそのシナリオ(≒運命)を超越したとこに行ったろやないか、と思っているのだな。実際物語がここで終了することで、マヒロさんは語られざる未来によって超越性を得ているとも言える。彼がこれからどうなるかという広大な不確定性は、少なくともアイカさんには存在しない。…続編というある意味無粋なモノが出てきたらその優越はアッサリ逆転するかもしれまへんけどね。そもそも割と時間軸をいたりきたりするような作品なんでっけどね。ま、あまり言うまい言うまい。

●総評。初っ端の数話見た段階ではどの辺に進むのかちょっとつかみきれないところがあり、まあでもフロイラインのおねーさんが痛くてよろしいのでしばらく見てみようかと思ってたのだが、富士の樹海での長い長いVSサモンさんトークバトル辺りで一気に話の流れが強烈になったなー、ってな印象。後半になっても相変わらずお話の流れはどう動くか予測が付かないままなのだが、周囲の要素がカッチリしてくればそれは単純に良い要素となり、視聴継続の牽引力となる。実際、これってどういうジャンルのお話? と訊かれても一言では答えづらいよね。サモンさん萌えマンガ?

実際あの話近辺で、筋もともかくキャラの方もグイグイと立ち始めたですよな。サモンさんがあんなマジボケキャラとも思わなかったが、それ以外にもラブコメ免疫皆無でコロリとやられちゃう姫さまとか実際に出てきてみればすさまじい強キャラだったアイカさんとか、いろいろとおもろすぎる。何より面白いのが主人公の片割れヨシノさんで、パッと見ィや表面的な言動からはちとかけ離れた内面、奥行きの見えなさが興味深い。単純熱血とも策謀タイプとも違う、アニメやマンガの主人公としてはかなり独特の立ち位置ですよね。相方のマヒロさんが比較的単純(それでもその指向性の強さは尋常じゃないんだけど)なので、余計に目立つ。

作画はボンズらしくシッカリしたもので、要所に来るアクションシーンの豪華さも外しがない。言ってしまえば意外性は薄いんだけど、そんなけクォリティの高い画面作りを毎回やらかしてるってのはえらいこっちゃと思いますよ。

てことで、これは意外な収穫だったなあ。あとで原作既読者の感想とか見てたらやっぱし「サモンさんが活躍するまでがんばって! そっから一気にクるから!」とか言うてて、あーやっぱそうなのねとか思った。サモンさん人気高いなあ…。