たまこまーけっと/新世界より/ガルパン

たまこまーけっと・最終話。南の島よりメチャ王子様がやってきて、さあどうするっちう話。まあその、大方の予想通りたまこさんのお妃様話はお流れとなり、ゆくゆくはチョイちゃんがその役割を受け継ぐのかなと匂わせておしまいとする。お妃の証したる香り・ほくろ・もち好きの三要素それぞれに一応の落とし前を付けてたりして、最終話の体裁として割とまとまってたのではなかろうか。去ってったデラさんが一瞬で帰ってきたにはベタなツッコミをかましたくなったけれどもさ。

さて。今回の見所は変化に対応する/対応しきれないたまこさん、というモチーフである。本人の気持ちは置いてけぼりでどんどんと騒がしくなってゆく周囲、そんな状況を心もとなく思い戸惑うたまこさん。彼女の心のよりどころの象徴が商店街メダルである。今まで暮らしてきた世界の全てがそのメダルに直結している。そんなに大事なものだからこそ、たまこさんはあれだけ思い切ってチョイちゃんにプレゼントしようとしたのだろう。

最終的にはもとの日常に戻り、日々は続いてゆく。ザショウマストゴーオン、ではあるがこのファンタジィじみた商店街風景にも少しずつの変化は訪れている。シオリさんが友人となり湯屋の娘は嫁ぎデラさんはこの地に残る。やがてはたまこさんも旅立ってゆく日が来るのだろうか、あるいはここに残るのだろうか。その日がいつになるのか知らんが、まあ備えよう。モチゾーもミドリさんも、当然お父んもね。

●総評。京アニ山田監督の新作オリジナル作品。シリーズ公正やキャラデザ含め、けいおんスタッフ再集結っちう感じ。まあそういう前情報の割には結構肩の力の抜けた(いや京アニだからアンバランスに作画は丁寧なんだけど)、ちょっと古臭い下町商店街ほんわか物語が出来上がってきたワケですけどね。

いやホンマ、モデルとなった場所やらがあるとは言え、ノリも人物造形もいまどきやおまへんで、ってな感じの古臭さでして、高度成長期の市井ドラマみたいである。通りはさんだ幼馴染がケータイもあるのにわざわざ糸電話してるとか、この辺はかなり意図的なものだろう。おかげで何というか、一種逆説的なファンタジィ世界のような雰囲気を持っている。そらガンモみたいな鳥もおっこちてくるし、漠然とした「南の国」もあるやろな、って感じもしてこようというものだ。…しません? じゃいいや。

上記の鳥、デラさんたちの存在を除いて、波風の立つような事故や事件はほとんど発生しない。なら日常系のノリかっつーとそうでもなく、一応1話を通して一つのドラマは語られてるんだけど、それがとにかく大人しいのね。よく言えばやさしい、悪う言うならどうでもいい話。学園モノやら上記日常系ならそれなりのフォーマットに即したネタも振れようが、そういうのもあまり無い。いや…ミドリちゃんの恋心、ほのかと言うにはちと濃厚気味な百合心は特記すべきですか。

ま、客観的に見て、インパクトや訴求力に乏しい作品ではある。世間的な評価もその辺に落ち着くんじゃないだろうか。んで、ワシにとってはどうだったかってェと…うん、まあこれはこれでいいんじゃないかなーと。おっさん趣味だってのは重々承知だが、こういうほんわかぽんやりした作品も嫌いじゃないのよ。ダラーっと見る分には何の支障にもならん。

京アニ作品には毎度「これはちょっと作画に凝りすぎではないか」という感想を持つんだけど、ことこれに関してはぽんやりしたスジに対する良いアクセントだったとか思うのよね。視聴者は勝手なもんである。ワキ声優にやたらと芸達者な人々をキャスティングしてんのも、そういう作品的な取っ掛かり作りって意味もあるような気がする。

ま、この1クール楽しませていただきましたよ。他人事ながら、何か知らん10周年記念作品がこんなぽんやりしたのでエエんかいな、って気はせんでもないが、まあワシはあんまし関係ないし、いいや。

新世界より・最終話。悪鬼と思われていた「子供」は、バケネズミに育てられた故に人に対して攻撃抑制が働かない、と。ああ、やっぱそういうことやろね。んでもってそれをひっくり返す手段ってのが「人間に化けたキロウマルを殺させる」という…これはこれで結構エゲツないな! とまあ、切り札を失ったことでとうとうお縄についちゃうヤコマルさんであり、ここに今回の一大革命闘争は終わりを告げる、というね。

バケネズミたちの正体は呪力を持たない人間、要するにワシらの末裔である。極論するならば「人ならざるもの」とは視聴者側が一応感情移入してきた主人公たちの方である。バケネズミたちの革命がいずれまたあるのではないかというモヤモヤを残し、しかし新たな世代がどうなるかはまだ判らないという、希望と不安を双方持たせたシメ方はよろしいと思う。…ヤコマルの裁判シーンでの、隠しきれず漏れ出てしまう「人間たち」の驕りを見るだに、今のままでは進歩は無さそうではあるけれど。つーか、ヤコマルさんはある意味での主役ではあったわな。ヤコマル…いやスクィーラさん視点でこの物語を語りなおせば、アンチクライマックスのエエ話になるかもしれん。

割とどーでもいいことながら、結婚式のシーンのサトルさんがなんか妙にかわいったらしいのが腹立つな! 不浄猫相手にじゃれたり何だり、あざといな! 

●総評。独特の世界となんかねっとりした暗さを感じさせる未来SF。未来っちうても一旦カタストロフィを経た後なので、超テクノロジよりもどっか異国的な風情の強い印象の世界っすね。それで語られるのは超能力持ちと奇妙な従属種族の物語。主人公の成長に合わせて世界の謎もゆっくりと剥がされてゆくという、両輪シンクロした構造は親切やね。

この題材でこのフラットなマンガっぽいキャラデザインはミスマッチかなとも思ったが、上記の通り雰囲気が陰鬱な話も多いので、キャラまでリアル寄りだと総体としてちと重ったるくなりすぎちゃうかもしれん。そう考えるとアリですなっていうか、まあ見てるうちにすぐ気にならなくなったのですけども。

途中の何話か山内重保演出回があって、まあいつもの独特演出で「この人も変わらんなー」とか思ってたけど、でもこの作品の一エピソードとして見れば結構アリな感じもしますわな。元々精神世界が大きなウェイトを占める作品だし、ちょっと陰のある作風にもマッチしてたように思う。でもまあ、目を引きはするよね。

流石に原作がカッチリしてるだけあって見てる側をグイグイ引っ張ってく物語は見事なんだけど、同時にその原作の分量が結構なものらしく、毎度々々30分枠に詰め込むのに苦労してんなーという印象もある。ほぼOPらしいOPがなく、そこの時間も使って語り進めてる辺りでもよう判るわな。割とキレイで、かつ結構インパクトのある着地点だったし、また終盤の盛り上げもなかなか決まっていた。全体としてようまとまったお話だったと思います。ちょっと地味だったとも思うが、それも味でしょうな。

ガールズ&パンツァー・11話。いろいろとアレした後にやっと再開の11話。えーとどこまで進んでたっけ、と思ったが三式が吹っ飛んだの見て思い出した。まあ出オチとして印象的だったもんね。てことでVS黒森峰の圧倒的戦力差を前にどうすんのか西住殿、の巻。煙幕使っていいのかーとか思いつつ、擾乱の後に標高の高いところを陣地にとって有利に立ち回る、遊撃車がそのスキにサイドアタックする、肉薄攻撃で動揺を誘う、とまあバラエティに富んだ戦術の流れで面白い。ヘッツァー待ち伏せに使ったりP虎が早々に機関故障したり、定番の戦車ネタを外さないのも律儀やね。…走りながら修繕してるってのはちょっと自動車部素晴らしすぎますな。スゲエや。

前半でヤークトティーガーが出てきた時も大概な威圧感演出でええなーとか思ってたが、今回ヒキのマウス登場シーンのとんでもないラスボスっぷりがさらに上手だ。個人的にはのっぺりし過ぎててあんまし面白みを感じない車両なんだけど、こういう立ちはだかる壁みたいな役割としては合ってますね。木漏れ日迷彩で見た目の情報量増やしてんのも悪くない…っちうか、大洗相手にはオーバーキルすぎるわな! 死んじゃう!

西住殿のトラウマを払拭する渡河作戦シーン、戦車八艘飛びの作画がみょうにぬるぬるしてておもろかった。なんかカリ城のルパン思い出したよ。橋をぶっ壊しながら渡りきるP虎はナウシカ思い出したりして。まああんま関係ないだろうけど。んでもってその落とした橋の名が「玲萬言橋」ってえーと、レマゲンか。またキナ臭ェ名前の橋だな!

●引き続きの二階建て、ガールズ&パンツァー・最終話。承前、マウスの威容に圧倒されつつ何とかせんならんご一統。大洗側の斉射によってケムまみれになりつつも無傷で再出現、逆にあっちが一発撃てば障害物ごと吹っ飛ばされる、というマウスのボスキャラぶりがエエ役者である。それに対処する戦法ってのが、ヘッツァーの傾斜装甲でマウスの下にもぐずり込んでルートを作り、八九式がマウスの上に乗り上げて横位置で砲塔を固定し、んでもって四式が土手上からのトップアタックで仕留める…というムチャクチャ作戦がとてもよろしい。そーか、マウスの砲塔デカいから回転してくれないとケツんとこのエンジングリル(?)が露出しないんだな。これで中ボスだってんだから贅沢よね。

M3が獅子奮迅の働きで二両も沈めたりP虎が弁慶の立ち往生よろしく隘路で持ちこたえたり、とサブキャラ(戦車)の渋い活躍の後にラスボス登場、みほとまほの西部劇的なタイマン勝負に至る、ってな流れが実に盛り上がる。このラストバトルはできうる限りの縦横無尽な爆走戦闘シーンであり、一対一のFP視点はバーチャロンとかそんなアレを思い出す。初っ端がほぼ正方形のフィールドだけに余計ね。最後は4話の再現のごとき回り込み、履帯も転輪もふっとばす勢いでのラストシューティングで辛くも勝利、でシメ。

…うん、こらまあ、期日までに上がりもせんだろうて。そのくらい気合の入った画面作りであるし、またそれ以上にバトルギミックと演出がよく練られている。すっげえ王道の大盤振る舞いシナリオで、良い最終話であったと思うよ。オトナの世界、そういうデキのよさがそのまま言い訳になるものでもないが、ここまで話題を引っ張ったという面においてある意味幸いであったとも言えよう。この点でヨシとするってのもまた、オトナの世界ではある。

あととうとう丸山さんが喋りました。狙いよったな。小松未可子さんですか…この人にしては割と珍しいタイプのキャラではあるな、つったって一言だけなんだけどさ。チェックメイト

●総評。お嬢さんが戦車に乗ってバカスカ撃ち合いをするという、アニメの即物的欲求としてはかなりありそうながら意外にも今まで無かったネタのお話。これはひとえに戦車という手描きアニメには向かない素材によるものではありましょうな。MGのマンガで宮崎駿も、描きづらいめんどくさいとさんざっぱらコボしてたもんねえ。そういう意味ではCG技術がある程度成立した現状ならではのコンテンツである、と言えるのだろうな。

ミリタリ+お嬢さんとなるとスト魔女スカイガールズなどを想起するが、いや実際発想の根っこんところは同じだろうけど、作品の構造としてはむしろ大正野球娘や咲などに近いだろうか。女の子があまりやらない活動に楽しさを見出して進んでゆく主人公たち、というね。

しかし相手は戦車である。無茶だ。この作品が上手いのはその無茶を通すための匙加減、アニメ的なウソとリアルさのブレンドが快適なのよな。また初っ端に「巨大空母学園都市」という大バカネタを叩きつけることで「ああ、うん、細かいことは言うてもしょうがないのだな」と判らせるという手法も上手い。実際一話のあのヒキでもう、かなり心が緩やかになっちゃったもんねワシ。

あとは主目的のお嬢さんと戦車。まずキャラ、あまりハデなデザインになってなくてともすればお互いに埋没してしまいそうな多数の人物をちゃんと捌いてる手腕は確かであった。んで戦車…これよね。そこここに興味深いネタをちりばめつつもさらりと流し、あくまでメインは戦車のカッチョイイ挙動にある。これについてはもうかなり満足。細かいことはいいんだよ! というね。

惜しむらくは1クールという尺の短さによる喰い足らなさかなあ。極限まで無駄を省いた構成であり息苦しくはないものの、ああもっと時間があったらここもこうしただろう、あそこもふくらませただろうというのが散見されててねえ。ま、この尺の長さにはそれなりの機微があるし、単純にもっと話数をかけるだけでもしょうがないのだろうけどね。

てことで、かなり楽しみました。事前の状況では「戦車と女の子か…ううん、水島努監督でどう化けるかってとこかな、まあ戦車好きなので見るけどさ」程度だったけども、ここまで楽しみになるとはね。そも八九式だの38(t)だのがあんなに活躍するアニメ…いや、映像作品なんてのは今までもこれからも多分絶無だろうし、もうそれだけで満足よ。堪能しましたわ。