アウトレイジ

●録画してた「アウトレイジ」を見る。北野武の映画の中では、初見のインパクトのせいか「その男、凶暴につき」が一番好きなワシとしては大いに面白かったっすねえ。スジらしいスジもなく、ヤクザとチンピラが裏切った故に死んだことで報復を受けたから拷問したのを理由にぶっ殺したのを根に持って銃撃して…という、延々と続く血と暴力によるドミノ倒しをただ眺めるだけの映画であり、そのトッピングとしてバカ野郎コノ野郎をちりばめたお話、である。

そんなムチャクチャな作品なんだけど、北野作品らしい独特の演出センスのお陰でまた無闇にカッチョいいんだよね。説明描写を極力排す一方で、意外なシーンにタップリと時間を割く。よってサクサク話が進むのに映像的な余韻は充分にある、といういつものテイストが心地よい。良いのか? うん。

個々の暴力描写は相当にエゲツないものの、上記独特の演出によって大仰なハデさとはちと異なる感じ。タメてタメて大振りにドカーン! というよりは、淡々と歩いてたら出会い頭にバットでぶん殴られる、みたいな即物的なノリ。なもんで、後半にある「マシンガンダンスで組全滅」っちうシーンの方がいささか浮いているくらい。…ちと関係ないがこのシーン、エライ目に遭ってるボスがふとイヤな予感を持って自分の組織に電話掛けたら案の定不通、カットバックでその組織は銃弾の雨あられで大壊滅…という流れであり、オタのワシがまず思い出したのがパトレイバー2の二課壊滅シーンだったのでした。うん、どうでもいいね。

言い方は何か変だけど、全体として妙に「純粋でストイックな低俗暴力作品」だなあと感心するのは多分、少々の例外を除いてその暴力の範囲があくまでヤクザ屋さん世界に限定されてるからだろうな。なのでワシら一般人が身近で巻き込まれそうな怖さというより、一種の別世界…コロッセオに放り出された奇妙な民族の殺し合いを鑑賞しているような、割と無責任に面白がれる風情があったりする。

キャストは誰も好演。普段エエモンの役が多い北村総一朗三浦友和が悪々ゥい役やってんのもいいし、椎名桔平の狂犬かっこいい演技もよいが…やっぱ、要領と厚顔と二枚舌でヤクザ世界をこすっからく立ち回ってでも自滅しちゃう直参の國村隼と、もうやることなすことやられること情けなくて悲惨にも程がある弱小ヤクザの石橋蓮司、このおっさんコンビだよなあ。この辺が画面に出てきてひどいことしたり言ったりヤられたりするたびに頬が緩んじゃうよ。ええぞもっとやれおっさんども。

てなワケで楽しかったよ。無論あんなギョーカイ実際に関わるのは真っ平ごめんですけどね。うん。