氷菓/もやしもん/夏雪

氷菓・21話。バレンタインであってまーたイチャイチャしやがって…とか思ってたら何か知らん、どんどんとめんどくさい方向に転がり進む事態ですなっちう話。前回に引き続き今回も、推理やトリックの要素はそれほど大きなウェイトを与えられていない(奉太郎さんの推理は登場人物の多くに自明である)。主題は学生世界の中における、精一杯の入り組んだ感情について。人間関係については「あまり感じやすくない」奉太郎さんの視線を介することで、曰く言い難いセイシュンの情感を何とかロジカルに語ろうとしているワケで。当然全てをロジック/言葉に委ねることはせず、余韻とニュアンスを残して終わるのではありますけれどね。

今回の焦点は里志さんがどんなけめんどくさい兄ちゃんであるか、そしてマヤカさんが彼のめんどくささにどんなけ付き合ってあげてるか、というお話。自身の平凡を自覚し、熱心さから距離を置いている…言ってみれば中二病の後に高二病に罹患しているような里志さんが、しかしマヤカさんへの思いの強さに自ら戸惑ってギクシャクと歩む。まあ何だ、この若さ故のイヴェントですよなというか。天文部は純粋にとばっちりでしたけどね。

全て終わって電話で会話する奉太郎とちたんださんのシーン。「いろいろありがとうございました」と言うちたんださんの、ちと粘っこささえ感じさせるような絵と間合いの丁寧さがよろし。何気ない台詞に乗っけられた大き目の感情、そんな様子がよく感じられるシーケンスだったと思う。あとアレだ、ちたんださんに「本当に親しい人には贈り物をしないのです」と言われてチョコもらえなかった奉太郎さんの「それって! …どうなの?」が正に「どうなの」って感じでおもしれェな。どうなんでしょうね! うん。

もやしもんリターンズ・10話。それぞれ自分のルートがよじれつつもフランスでのドラマは続いてゆく。そのルート…主な流れは二本、長谷川研究員サイドとマリーサイド、それらの共通主題はディスコミュニケーションである。面と向かってちゃんとお話しすることの難しさ、なぜならそれは怖いから。本当に、話している相手は自分の勝手な印象どおりの人物なのだろうか。…あとは親父の影っちうネタもあり。長谷川さんは間に龍太さんというワンクッションを置いているけどね。

そんなこんなで決心して、相手と正対することを選択するもやっぱりすぐには上手いこといかないワケで。それぞれの立場ですれ違う会話をグイと転向させるキッカケになるのが、両方ともタダヤスさんの能力がらみってのは一応主人公してる証やろか。基本的に巻き込まれ系で頼んないタイプの主人公ですからねえ。

マリーの方のお話は次回以降の展開もあるようだが、長谷川さんと龍太さんの話は今回で一応の顛末はついている感じ。双方のすれ違いと合一の象徴が「木登り」という単語なのだが、繰り返し出てくるそのイメージの使い方はなかなか上手いな。自分に出来ることと出来ないこと、あるいは出来るようにみせかけちゃうこと。「あなたは木登りなんかしなくていいの」「多分ボクも結婚を望んでいない」。これらの会話により、親からの影を振り払って自分の言葉で話してゆけるかどうか、っちうのが彼らにとっての今後やろね。

あと今回、「足」の演技がそこここで印象的だったなとか思った。父と家業についてマリーに向き直って話すタダヤスの足、決心してトンとイスから下りて床に立つマリーの足。口ほどにモノを言い、っちうとこかしらん。

夏雪ランデブー・10話。亮介さんはどうやら本格的にシマオさんと実体/幽体としての立場を入れ替えられちゃったようだ。絵本世界ではシマオさんの顔になり、現実世界では物理干渉のできない虚像となる。いやあ…これホンマに悪霊のやるこっちゃよね。

当然亮介さんは、自分の思い人が他者といちゃついてるのを手も出せずに見せ付けられる、というシマオさんの幽霊的体験をそのまんま味わうことになる。おまけにその「他者」ってのが体は亮介さん自身のモノであったり、ついでに髪の毛とメガネも知らんうちに変わってたり(あとお金が減ってたり)、とヤヤコシイ事態この上ない。どう考えても取り返しの付かない、空恐ろしい状況なんだけど、でもどこかコミカルな雰囲気が感じられるのはまだ現実味が薄い(ってのもヘンな表現だが)せいだろうか。

「折角俺の顔と店長がイイ雰囲気なのに!」とかヤキモキしたり、知らんうちにデートの末一発ヤっちゃったのを聞いても「でもその時は俺だと思ってたワケだし…」とか思ったり、亮介さん危機感薄いぞ! 判らんでもないけど! とか思ってたらロッカちゃんの方も「ならば私の好きだった葉月くんはどこにいるの…」という問いかけが。ああ、まあそれはそうだよね。これまたヤヤコシイ話だけれども。

今回は今までと逆のアングル、福山潤による中村悠一エミュレートが一つの聞き所であろうな。いやもう、これはこれでホント上手いんだよねえ。ついでに大原さやかさんも福山エミュ演技披露してたりして…うーん、やっぱ声優ってスゲエな。