氷菓/もやしもん/夏雪

●あれっ、夏雪の最終話の録画失敗してる…。ううんしょうがない、アレコレして補完します。

●えー、氷菓・最終話。お雛様に扮したちたんださんたち男女たちがムラを練り歩くというお祭り。ははあ、そんなんあるんだ…とか思ってたら、人手足りなくて奉太郎さんがその傘持ちに引っ張り出されるのである。また省エネとは程遠いこってすな。とは言えここ数話はちたんださんに頼まれて省エネ主義を放棄してる話ばっかしだったものね。今回もまた、強烈なエフェクトにスローモーションにと奉太郎ヴィジョンのちたんださんが何というかもう…ほとんど夢の世界のお嬢さんやがな。里志さんの一言で一気に画面がフツーになる演出で何故か笑ってしまったよ。

今回はまた今までにも増してミステリ要素の薄いお話である。事件は起こるがすぐ解決し、そしてそのあとに問題も残らない。ちたんださんと奉太郎がそのリクツを考えるパートもあるが、判ったからってどうということもないし、主題にもほとんど絡んでこない。うん、そうね、つまりは奉太郎さんがちたんださんにプロポーズもどきをヤりかけて止めちゃってウヘヘヘ熱いのうお二人さん、というね。…されど、そういうもどかしさも奉太郎の、あるいは若いお人たちの特権でもある。因習としきたりといささかのアクシデントによって、遠回りする雛たちなのであることだなあ(詠嘆)。

というストーリーとはまた別に、凄まじいばかりのゲストキャスティングの豪華さにビビる。石塚運昇西村知道二又一成田中正彦、そう思ってたら千葉繁、満を持しての永井一郎である。諏訪部順一が小物キャラ扱いなのがなんかもう、ねえ。比較的小規模な映画にシブいところの名優が大挙して出てくるような…ラストだからって大盤振る舞いに過ぎますわな。いやスゲかったわ。あとあの神社さん、広くてチリ一つ落ちてなくて清潔な、ちょっとよそよそしい感じがあるあるですわ。

●総評。「学園ミステリ」という言葉の印象からはちと離れた、かなり地味で規模小さくてトリビアルな作品である。(劇中劇はともかく)誰一人死なず傷を負ったりもしない、俯瞰して見ればどーでもいいレヴェルの事件しか起こらない。じゃ作品としてもしょーもないのかというとそれはまた別の話。

人ってのァその周囲の世界に合わせて感情の枠を設定するものであり、他者から見て些細なことであっても当人たちにとっては重大であるという非対称性が往々にして存在する。この作品の場合は全体世界からのエピソードの切り抜き方が上手いので、人死にが無くても警察が出張らなくても、エピソードの最後にはキッチリと重量感のある余韻を残すことができている。「青春は甘いばかりじゃない」ってこったよね。いや、うん、後半は奉太郎さん結構甘い思いばっかしてたような気もするけどさ。うん。

主人公の奉太郎さんがちょっと頭良すぎたせいで、気付かなくてもよいある「残酷さ」を掘り当てちゃって盛大に落ち込んで終わり、という自主映画の話も捨てがたいが、白眉はやっぱ文化祭の話だろうかなあ。数話かけて楽しいお祭りとその裏の興味深いミステリという雰囲気で進めといて、最後の1話でドミノ倒しのようにバタバタと各キャラに挫折を与えてゆく、という…痒い所に手の届く意地悪さ、っちうかね。あの「天狗の鼻折られ感」は、若い頃チョーシに乗ったことある人ならだれしも味わったことのある苦さじゃなかろうか。いや、若くなくてもいいけど。

あと個人的に、ワシがこういうリクツ先行でどんどん構築を進めるような話が好きだってのも大いにありますけどね。話によってはミステリの推理が終わっても、それが本当かどうかの証明が特に提示されない回さえある。とにかく「おもろいリクツ」ができちゃえばそれでエエのだよな。

京アニ作品なので作画・演出共に驚異の細密さ。一話二話の頃は例によって「ちょっとディテイル過剰かなあ」と思って見てたけど、上記のように小規模でトリビアルな世界の話なので、そういう寄木細工のような丁寧な手触りがあったればこその雰囲気になってたな、と印象を改めたりする。でも、説明や回想シーンの諸々の演出は、ちょっと奇を衒いすぎなケースもあった…ような気はする。まいいや。

てことで最終的にとても面白く視聴したのですが、しかしまあ、ようこんな話アニメ化しようと思ったよな。いろんな意味で、京アニだからできたっちうところだろうか。…原作をどこまで消化したのか知らないけれど、また続編とかやったら見たいところであります。

もやしもんリターンズ・最終話。フラれた長谷川研究員と頑固なマリーさん一家、それぞれ問題のとば口に立ったという所ではあるけれど、しかし彼らの前には進むべき…いや、進みたいと思える方向への道がある。言わなければ、話さなければ判らなかったことの何と些細な、それでいて大切なことか。マリーご一家との別れのシーン、地名その通りである金色の光の中に去ってゆくマリーの姿が、ちょっとベタであざといながらもエエ感じの一段落ではある。

大学に戻ればいつものメンツ、ちうても長谷川研究員はちょっと変わった? とか言われてますけどね。あと美里さんと妙な雰囲気になってますけどね。まァ変化も人生において重要なことであるし、あと蛍さんはタダヤスを殴ったことについてちゃんと自己外部化しておくように。言わなきゃ判んない以前に自分でも判ってないようだから。

大団円の後に加納さんをチラっと出して、続編への色気見せてますけども…この人気ならまた、そのうち続編やるやろか。でも沖縄蛍さんも出して欲しいな。

●総評。前アニメ化からの直接の続編であるが、間隔が開いたこともあってキャラデザとかはちょっと雰囲気変わったりしている。でもノリはそのまんま…いや、続編の強みか前作よりもこなれてていいテンポの作品になってたと思う(冗長な微生物薀蓄も含めてね)。もともと肩透かし気味な、熱血展開とは裏スジっぽい味わいの作品であり、その肩の力の抜けた雰囲気が心地よい空気感になってますわな。

そんな風情の主な功労者は美里と川浜、一言で言えば「ダメ先輩」ポジションのお二人やよね。いやあ、いいわコイツら。無駄に知識と行動力があって欲望に忠実で肝心な所でヘタレるけど、ここぞってとこでちゃんと後輩(タダヤスたち)への視線を保っている。何つーか、大学生として「ある意味で」理想的先輩像の一つではなかろうか。あるいは理想的大学生活者像ではなかろうか。

ああ、後半のマリーと長谷川研究員のお話も良いと思います。ただまあ、この「リターンズ」から見始めた人にとっては、長谷川さんの通常生活描写の薄さからイマイチ感情移入しにくかったと思いますけどね。それは言うても詮無いことではある。しかしマリーは良かったなあ、具体的には沢城さんの演技が。最近彼女によくある極端な演技要請が薄い、ナチュラルにかわいい(気の強い)お嬢さんとしてのお声がよろしかった。

てことで、えー…うん、特に文句もないや。そのうちまた続編でもやって欲しい。


夏雪ランデブー・最終話。とうとう出会って心通じ合わせたシマオさんとロッカちゃんであるが、さてこのあとどうするつもりなのか。また元の状態に戻り別れるのか、それともこのまま残るのか。多分その辺は半ばなりゆきのつもりだったのではなかろうか。そうでなくても高まりすぎちゃった情感を持て余すお二人(とあと一人)である故に、どういう結論を下すにしてもそうアッサリとはいかないところ。ってことで、たっぷりと時間を割いての「二人の儀式」についてのお話である。

こうなれば心中するかという結論になってシマオさんが鋏を振り上げたとき、あー二人で死後の世界ってのショッカーオチとしてアリだけどひねりはないな…とか思ったが、なるほどね。「相手の首筋に歯形を残す」という、妙に生々しく生理的な行為がこの作品らしいギミックである。そういうまあ、二人のたどってきた歴史をも感じさせる夫婦のドラマに比して、亮介さんの言動行動がちと軽いのはしょうがないかね。ロッカちゃんの言葉に「そっかー…両思いかー」と喜んでるのはちとどーかとか思いますけども、まあ。

いろいろあって年を経て、エピローグはなんと数十年後の孫の代か。んでもってまーだその辺を迷うておるシマオさんがいささか怖いよ? 孫に自分のことをおじいちゃんと呼ばせるとかさあ。…あと今回は、大原さやかさんのほろ酔い演技が聞けたのでとてもよろしかったです。何だそれ。

●総評。幽霊に体とられて大弱り、っちうお話。基本的には未亡人ヒロイン・彼女に惚れた若者・幽霊の元ダンナ、の三人のみ(あとサブとしてダンナの姉ちゃん)だけのごく限定的なメンツで延々と続く人間関係の物語である。終わってみれば初っ端の印象よりもかなり内面的な…うんそうね、モノローグ過多なお話だったなと。どっちかっつーと苦手な部類のジャンルなんだけど、それでも丁寧な心理描写は見ごたえあって結局最後まで引き込まれちゃったな。

少人数の登場人物による内面的な作品ってことで、この作品に一番フィットする形態ってのは多分、二時間の映画ってとこだろうな。無論実際にはそんなんムリだ(いい作品だろうけど劇場に掛けるにはとてもじゃないがインパクトが足らん)から、このノイタミナ枠が次善ではあるのだけれど…でも多分、毎週20数分ずつ見るよりは連続して話追ってった方が情感も乗せやすいだろうな、とか思う。中盤辺り亮介さんずうっと絵本世界に行ったっきりだしね。

作品内容的にワシの立場からどうこう言えるのはそんなとこだけど、あとそう、声優さんね。さぞかし演じ甲斐のある作品だっただろうなあと。とにかく目立つのはボディチェンジに伴う相手演技のエミュレートですが、それをのけても微妙なニュアンスや繊細なタイミングの多い芝居であったと思う。上で映画云々書いたけど、若手演技派連れてきて単館規模の実写映画として、あるいは舞台劇として構築するなら結構ハマるんじゃねェかって気はする。もちろん演技や台詞は相手俳優のエミュレートでな!

てことで、ちょっと言い方はヘンだけど、いかにもノイタミナらしくまとまった小品だったという印象。あまり経験の無い(ちうかワシだとほぼノイタミナでしか見かけない)ジャンルだったけど、うん、楽しく視聴させていただきましたよ。