クロワーゼ/シュタインズ・ゲート

異国迷路のクロワーゼ・9話。承前、ブランシュ家にお邪魔するの巻・後編。クロードさんとカミーユさんの微妙な関係は、その源を幼い頃の邂逅に辿ることができる。会えば外の話ばかりするくせに、いざ外に連れ出そうとすると「興味ない」と素っ気なく断るカミーユ嬢ちゃん。その時は「なんだワケの判らない意地悪女め」といらだっていたクロード坊ちゃんであるが、多少の年月を経た今の目から見れば、判ることもある。


野良猫、自転車、自動車、鉄道。カミーユさんの話題は全て外の世界を走るものばかりである。それは彼女が外に出られないことを認識している裏返しだし、また外の世界に属するクロードさんへの精一杯の歓待の意味もあるのかもしれない。無論、この時点でのクロードさんはそんなことに気付くはずもないが…カミーユさんの方は多分、そうではない。


外に出ようと誘われカミーユさんが「行かない」と断ったとき、後ろの窓をちらりとメイドが横切る。別に監視しているワケでも何でもなくただそこを通っただけなのだが、絵による状況の説明としては十分な効果である。彼女は家と社会システムによって規定されている。彼女はそのことを判るほどに聞き分けが良すぎ、また頭が良すぎるのだ。その「よく出来たご令嬢」としての人格は子供らしい熱心さや興味とアンバランスである。数年の後、現在、そんなアンバランスさも歪みもコルセットとともに抑え込み、カミーユさんはクロードさんに…いや、ユネさんに対して何を思うのだろうか。


…いや何だね、こういう自我を押し殺した人が一旦はじけると予想外にスゲエような気がしてきた。二三十年後にはウーマンリヴの闘士のハシリとかになってたりして。あるいは放蕩庶民生活を満喫してたりして。ま、それは判らんですけどね。


今回バストアップ以上の寄りの絵で顕著だったんだけど、主線にメリハリ付いた気合の入った作画がそこここにあってなんか豪華だったな。手作業だとめんどい/か、あるいは相当上手い修正作業だと思った。エエね、あれ。


Steins;Gate・22話。元の世界線に戻ればクリスさんは死ぬ。このままで居ればマユリさんは死ぬ。オカリンは苦悩煩悶懊悩するが、クリスさんは「マユリちゃんを救って欲しい」と言い置いて去ってゆく…。もとからこの問題はアンバランスであり、この物語の登場人物としてのクリスさんにほとんど選択の余地はない。いわば今までの話全てがマユリさんを救うために構築されていたようなものだから。意地の悪い言い方になるが、意地の悪い選択をしなければならないように「脚本が作られている」のだから。


さて、こうして、フェイリスにゃんの父の存在やらルカ子さんのアイデンティティやらクリスさんの命やら、それら全てをオカリン一人の肩におっかぶせた状態で状況は終了した。マユリさんの命を救うためとはいえ他の人間の存在を天秤にかける「重さ」がどうも足りない、とか今まで言うてきたけれど、オカリンが決断して背負ってしまい他の誰もそのことを知り得ない、という現在の状況は充分に重いものがある。「終わった終わった」で済ませられないものがある。これからオカリンはその持ちきれない重さを抱えたまま生きていかねばならないのだ…ってとこで急転直下! まだお話は終わっていない!


…まその、アニメ作品の場合は残り話数が決まってるので、それほどのサプライズにはならんですけどね。それでもエンドロールの途中でノイズと音声が入ってきて本編再開、っちう流れは面白かったり。


てことで今回は30分まるまるクリスさんの喪失に至るまで、を情感とともに語る話。「俺はお前を助けられない」とか「004の人は居ないよ」とか、要所での台詞の置きに来方が上手かった印象。来週以降の逆転劇にそなえての「タメ」としても充分だったのではないでしょうか。…しかしクリスさんが亡くなることは避けられないにしても、第一発目で死んでいた理由…殺した者はだれだったんでしょうかね。その辺も謎としてからんできそうだけれど、ふむ。