クロワーゼ/シュタインズ・ゲート

異国迷路のクロワーゼ・8話。ユネさんが風邪引いたときにお世話になっちゃったので、クロードさんは心ならずもブランシュ家の招待を受けることにする。まァアリスさんの、ユネさんに会いたい会いたいそらもう会いたいの大攻勢がめんどっちいのが「心ならず」の一因ではあるのだが、わだかまりの源はそれだけではなくて…というね。

今回のお話のフォーカスはアリスさんの姉・カミーユ嬢。常に落ち着いており人当たり柔らかく、完璧なブルジョアとして振舞う彼女であるが、視聴者から見ると明らかに…その立ち居振る舞いは「過去自分の中の何かを犠牲にした末」のもの、であると伺える。自由、社会的立場、家族内立場。一見華やかに見える彼女たちの子供部屋は、楽しい場所であると同時に外界へのアプローチを否定する規制物である。幼いアリスさんがカミーユさんに語るドラゴン譚は、その壁を越えてゆける想像の翼。…ラスト鳥を見てついと窓を開け、柔らかい風を受けて微笑むカミーユさんは…少しでも、僅かな間でも、心を自由にさまよわせることができたのだろうか。


作中でもかなりのキャラ的/精神的な強さを持つカミーユさんだけど、経験を土台とした「硬い」その精神にすっと働きかけることができるのは、当然ながらイノセントの象徴であるユネさんである。一見全く反対側にいるように見えるアリスさんとユネさんのキャラだけど、イノセントさという意味では確かにアリスさんの言うとおり、似ているところがあるのかもしれない。少なくとも、カミーユさんにとってはね。もう昔のようにイノセントではいられず、異なる価値観を手に持ってしまったカミーユとクロードのちょいとギスっちい会話がよい対比。もしもまた素直に語りあうことができるとするならば、その手にある価値観を一旦下に置くことが必要だろうなあ。


割とめんどくさいことになりそうなこのイヴェントを「あいつ(クロード)にとっちゃ良いことさ」と言いのけるオスカー爺さんは流石の年の功ですな。もうヤることヤりつくしちゃった上での自然体、って感じ。てことで多分、作中最強キャラはこのジジイである。というお話。


Steins;Gate・21話。マユリさんを救うべく世界と時間の改変を行うならば、物語の語り起こしの如くクリスさんが死んでしまう。ここに及んでオカリンは懊悩し、当然その姿は周囲に「なになにどないしてん」の空気を撒いてしまう。それでも世界線変更以外での問題解決策は無いものか、ああ無いものか。そしてオカリンはどんどんと擦り切れてゆく…というね。


今回については大きな物語的展開は発生しない。その代わり俎上に上がっている各キャラクタ、つまりクリスさんとマユリさん、とりわけマユリさんについての内外面描写に大きなリソースを割いて語られる回である。夜道での表面的/かつ深層的なオカリンとマユリさんの会話、祖母の墓前にて訥々と語られるマユリさんの独白。この作品におけるイノセントの象徴のようなマユリさんは、彼女自身特に大きな行動こそ行わないけれど…構造的にコアに当たる重要な位置を占めているのは間違いない。いや、今まで積極的に物語介入していなかったからこそ、象徴として存在できているとも言えようか。言えませんか。じゃいいです。


さて。このエピソードを踏まえ、オカリンは何をどう決断するのだろうか。んーん、何となく「抜け道」っぽい解決策もありそうな気がするんだけど…ま、その辺は特に予測せず(ちうか予測できず)に楽しみに見てみますか。いやまあ、誰も救えず世界もかたぶくスーパーバッドエンドでもいいのよ? それもアリっちゃアリなのよ?