レインボー/荒川/四畳半/さらい屋五葉

●新番組・RAINBOW 二舎六房の七人。詳細は知らんかったが…ははあ、安部譲二原作ですか。当然ながら自身の経験が元となった作品のようだが、さてこの中のどなたが安部さんなのでしょう。小栗さん? 小栗さんがそうなの? まいいや。


てことで、少年院にご厄介になるどうにも後ろ暗そうなガキども七人の物語である。普通の路線ボンネットバスを使って護送される囚人たちだの、十円ハゲのガキだの、なにやら時代の雰囲気を出そうと苦慮されてるのが判りますなあ。一見おっそろしそうに見えてその実ガキ思いな頼れる牢名主、っちうステロタイプキャラだけで割と満足しそう。そうそう、最近こういうベタな道具立てのお話って少ないからねえ。…土師さん声のあの優しげなお医者さんは、やっぱモーホーで極悪で黒幕の手先かなんかなんだろなあ。


うん、特別大掛かりなアニメってワケじゃないが、フツーに安定して見られそうなので視聴してみよう。ただまあ、アニメでこういう「通俗ドラマ」をやるってのは意外に面倒なところもあるんだけどねえ。ま、それはそれで。キャスティングに関しては、非常に手堅い中堅演技巧者でガッチガチに固めてる布陣が印象的ですな。上記の主役・小栗さんを支えるって意味もあるだろうが、でもこの人も声優経験結構ありますしね。…あとまあ、謎の林原ナレーション。これはかなり謎。やっぱ野郎メインで華が少ないから? なの?


荒川アンダー ザ ブリッジ・最終話…だけど、この期に及んで録画失敗してた。あっれー、予約時間間違えたかな? しょうがねえのでゴニョゴニョして補完。てことでえー、先週までのいかにも「ラストに向けての大きな話ですよー」ってエピソードは終わって、いつものしょーもないギャグ連鎖、にちょいとエピローグ的な余韻をからめたお話。遊園地という概念でもって各キャラとリクさん、それにニノさんの関係性をぼんやり描き出す、っちうまあ、割とちゃんとした最終回風味だったのじゃなかろうかな…とか思ってたらヘンな人出てきた。なんだこのシメ? …第二シーズンへのブリッジでした。あはあ。


●もうこのままなし崩しに総評にいきますが、荒川河川敷という異世界に囚われてしまい、すぐそこにある現実世界に戻れなくなったエリート少年の物語ってことで。…こう書くとなんか不条理系のSFみたいだな。主人公のリクさんが何故ここに囚われているのか、っていう理由とかは結構どうでもよくて(そのイイワケである「借りを作ったら死んでしまう」っちう要素は早々に出てこなくなるし)、ひたすらに「常識」のコードが異なる異世界人・荒川下住民とのかみ合わねェ掛け合いで見せるお話である。


さて、リクさんがこの異世界に対するツッコミ役でもある以上、ある一定以上はこの荒川下世界に順応してもらっちゃ困るんだわな。自身の常識を疑い、ニノさんをはじめとする住民たちへの理解も深まってゆくけれど、しかし彼はどこまで行ってもこの世界における異分子としての性質を持たざるを得ない。その踏みとどまり具合に、ああもうこの人は学習能力が無いんだからなあ、っちう「またかよ」感が出ちゃったのはどうなのかな、しょうがないコトではあるんだけどな。


まあね、もともと基本的なお話の展開構造にバリエーションが少ないワケで。状況が限定的だってのもあるんだけど、ギャグの繰り返しパターンが「マンネリの面白さ」となるまでには至っていなかったなあ、って感じはある。眼球のアップ、橋梁や河川敷風景のカットのたたみかけ、などの多用されているパターンもその平板さに拍車をかけてたような感じ。後半部分は少々シリアス寄りな回もあったりしたので、余計にね。


とまあ、色々言いましたが、見てる間は割と楽しませてもらったのは確かです。新房監督への苦手感は…ちょっとだけぶり返しちゃったけどね。でも第二シーズンも多分、見ますよ。うん。


四畳半神話大系・10話。今回はどこのサークルにも属さず「四畳半主義者」としての主人公。この閉鎖空間こそが至高であり他の世界など要らんわい、ちうてたら延々と続く四畳半世界に捉えられてしまうのである。ありえた歴史、可能性の世界、このパラレル四畳半の迷宮から出してくれえ! という話。今まで経験してきた「枝」をちょっとずつ垣間見てゆく、っちう何やら作品の根幹に関わってくるっぽいエピソードですな。


微妙な差異をもって延々と繰り返される箱のような無限世界ってのは、劇中でも言及されてたけど「キューブ」とかのSF映画のようだ。ワタシはそれよりもドラえもんというか藤子的なテイストを感じたんですが、何よりワタシ、「迷宮の如き建造物」と「充足的な閉鎖空間」っちう二点がホンマにジャストミートなのでかなり参ってしまったよ。あそこに住みたいわ、正味。…カステラと魚肉ソーセージという生活物資だけは潤沢にある擬似的遭難状態、ってのはうる星2っぽくもあるな。


いろんな自分の歴史を見て回りつつ、彼は「どの住人も楽しげに見える」と思う。そうね、文句垂れ流しつつもそれなりに楽しくやってきたんだよな、大体の世界においては。うーん、やはりこうして「リスタートし続けること」こそが彼にとって意味の根幹をなす要素なのかもしれない。判らんですけどね。あと今回は浅沼晋太郎独り舞台の回だったんですが、吉野の小津さんの声マネやった時一瞬本人と聞き間違えちゃいましたよ。そっくし。


さらい屋 五葉・11話。ヤイチさんの過去が形を持ってやってくるの巻。かどわかしてきた少年は嫡子のはずなのに家からは見捨てられ、ヤイチさんは彼に対してやらずもがな、言わずもがなの振る舞いを見せる。五葉の面々はそれぞれ、そんな今の状況とヤイチさんの行動に少し違和感を感じているのだが…。そして、ジンという男が姿を現す。


どうにも底を見せない、他人との関わりを避ける傾向のあるヤイチさん。ご隠居は彼の若い頃に一度会っているが、その印象はかなり冷酷なものだ。兄貴分のケジメを付けろと言われ、躊躇無く兄貴の首を落とす若ヤイチさんの姿には虚無感と非人間性が滲む。その姿は現在とも、また少年時代とも異なっている。何が彼をしてこのようなキャラクタにさせたのだろうか。ジンさんとの行動時代に理由があるんだろう、な。


五葉という寄り合い所帯によって、ウメもマツもマサさんもある意味での救済を得たりした(オタケ姐さんはまだハッキリしないですな)。その立ち上げ人であるヤイチさんが未だこういう状態なのは皮肉でもあるし、らしくもあるわな。「過去にとらわれているのはヤイチ殿ではござらぬか」と言える、マサさんのヤボがあるいは救済をもたらしたりするのでしょうか。さて。…あと、ご隠居の回想シーンのキャストが、宝亀のご隠居を筆頭に石塚運昇だの西村知道だのとやたらオッサン豪華でよろしかったです。西凛太郎もね。