海月姫/屍鬼/荒川

海月姫・9話。敵陣にズイズイと乗り込んでゆく稲荷さんは、関係者たちに様々な波紋を生んだり生まなかったりする。結構な強引さでありヘタ打てば危ない行動だとは思うが、多分稲荷さんにとってこういう状況は何度も経験済みなんだろうなあ。ていうか、折角の釈明チャンスを前にして逃げてっちゃう修さんは流石にダメだ。高齢童貞だのトラウマだの以前にダメだ…ってまあ、そうしないと話が転がらないから舞台からノけられたってことなんだろうけどね。


状況を受けてのジジイ会談。一部始終を見ときながら、どっちかっつーと二人をくっ付ける側に回りそうなジジイどもがなんか頭痛くて笑てまう。ま、割とどうにでもなるわェってな感覚なんでしょうな。麦人千葉繁の演技と相俟ってなかなかに酷い雰囲気がヨシ。ヴェテランの味だわな。


てことで、今んとこ稲荷さんの思惑は大枠で成立している状況。海千山千っぽい彼女相手に修さんはどーしよーもない。ただ稲荷さんも「あーこらマジ童貞だわ」と毒気抜かれた独白もあったりすんので、心理的にどう動いていくかはまだ判らんですけどね。ひょっとしてこの二人、マジでくっ付いちゃったりしますか? 地上げ抜きでさ。あと、今回も子安運転手さんは本当にダメでありこのまま行くがよいと思った。この人の世の中にはベンツしか無いのな!


屍鬼・20話。反撃の人間サイドであるが、群集としての彼らは当然のごとく暴走気味である。尾崎医師がある程度の抑止力として働いてはいるのだが、「まだ人だけど暗示を受けている者」の存在が状況をややこしくしている。それは操られているのではない、裏切り者だ。白と黒とに単純化しなければ立ち行かない程に極限状況なのだろう。そしてとうとう、人間に対する最初の杭が打たれる…。そこから後は一気呵成、となるや否や。


金正のダンナとスナコお嬢さん等、屍鬼の側からの内面も語られる。屍鬼は悪なのか。そうしなければ消滅する、それに抗うことが赦されないのか。…当然ながらどこに対しても通らない主張であり、スナコさんもそれは自覚している。それが通るのは清信和尚に対してだけ、であろう。まあねえ、村人たちにとっては「死にたないっちうのがアカンのかィワーレー」と言われたらそのお言葉そっくりお返しいたします、でしかないだろうしねえ。心ならずもここで作られ、あっというまに犠牲となっていった屍鬼たちに比べれば、その数十倍は生きながらえてきたワケだし…ねえ。


加速度的に抑制が効かなくなってきている村人たちの描写がブレなくて良い。金正屋敷での大川爺さんの「首は落とさなくてよいのか」っちう台詞が効果的で、あーもうそこまでやるんだ、って感じでしたよ。もうどう転んでも血の祝祭にしかならんだろうなって状況だが、どんなシメになるのやら。原作マンガはまだ続いてるようだけど、まあ小説があるしね。さあて。


荒川アンダーザブリッジ×ブリッジ・最終話。荒川下王様ゲームはクライマックス、シスターVSマリアの一騎打ちである。…えーまあ、シスターもいろいろと述べているのですが、正直マリアさんの負けるヴィジョンがちいとも見えませんね。案の定優勝はマリアさん、かくて荒川下世界は加虐なる女王の支配する世界となりました…というお話。


まァマリアさんもこのコミュニティは好きなので(あと女性に対しては「なるべく」Sにならないようにしてるので)、女王様としての望みは「飼っている羊に服を作って着せてあげること」とまあかいらしモノではあるのですが。そして当然のように野郎どもは屈辱の待遇を受けるワケで…。こういう時、シレっと居なくなってる村長がズルいよな。シロさんや立木文彦もそうだけど。てェか残った野郎どもが似合いすぎるってのもありますが。M的扱いがね。


…んで、割とキレイなエピローグと幕引きをつけてシメ。前シーズンのような大事件はなかったけれど、これはこれでまあ良いシメではあります。そういや金星行の話はどうなったのだろう。第三シーズン…はちょっと苦しいか? ウェブOVA、あるいは劇場版?


●総評。前期から引き続いての荒川河川敷異世界ギャグ、である。前シリーズはワシ、楽しく視聴したものの「やっぱし新房演出は苦手な部類だ」っちう認識を新たにしたのであった。作品本体が基本的にギャグでありストーリー要素に薄い状況で、止め絵連鎖等のあの独特な演出画面はどうも、だんだん食傷してくるのだよな。あんまし必要性が無いなとか、思ってしまったり。


それを受けてのこの第2シーズンですが、今回はかなり普通に楽しむことができたなあ。当然ワシの慣れもあるのだろうけれど、今シーズンは比較的ストーリー指向なネタが多くて上記演出がそこそこ自然に見えたとか、そもそもそういう演出があまり出てこなくなったとか、そういうことかしらん。


それと今回はリクさんの立ち位置ですかね。これも個人的嗜好の問題だけれど、主人公にせよ脇にせよ、ただ理不尽に不幸を被る状況ってのがワシあまり好みではないのだ。前シーズンはリクさんの立場がどうも不安定で、何かにつけてひどい目に遭ってオチ、ってのが多くてちょっと印象が悪かったりしたのだ。一方の今回の彼は、一応教師というニッチを持っているし、エライ目に遭うにしても何か「あ、そらしょうがないよね」ってな仕込みがあったりするし、何より普通に楽しそうなのがよろしい。高井さんたちを通じて外界ともそこそこやりとりをしていることもあり、ひょっとして荒川下において彼が一番エエ立ち位置なんじゃないか、と感じることもある程だ。


そしてまあ、ニノさんがかわいいってのも当然ある。一般の人から比すると相当ヘンテコではあるが、彼女は彼女なりに一貫したコードを持ってリクさんが好きであることを表現している。そのコードに乗っかれると、本当にニノさんはかわいく見えてくるのな。これも今シーズンになって強化された魅力…あるいは、やっとワシの方で気付く事ができた魅力、だと思う。


てことで…うん、楽しかったっすよ。