サニーボーイ

●サニーボーイ・最終話。ナガラさんの戻った現実世界は、モノクロの服と雨と傘と生徒で構成されるモノクロの世界。そしてその世界ではノゾミさんはアサカゼさんとくっついてて…いやまあ、正確には一旦生命としては途切れているんだけども。ともあれ、バイト先の先輩に怒鳴られ彩度の低い弁当を喰う、そんな世界でもナガラさんは「自分の選択したこと」だと言う。…カッチョエエけどもこれ、かなりの度合いで経験をシンクロしたミズホさんの存在と邂逅のおかげで200%くらい救われてるよなあ物語的に。物語の最後、ノゾミさんと交差してそのまますれ違う流れは何というか…そういうアンチクライマックス的な美しさはあるよなという所でして。ここで前回の会話をキッチリと呼応させれば「君の名は」のような2時間映画としてガッチリ成立する、のかなあ。でもまあ、上記のごとくミズホさんとの記憶継続を示してくれたおかげで俺のような心の弱いオタクも即死を免れた。そういう屈曲屈折した救いって、あるよね? 少なくともヤマビコさんはなんかエエ感じに生活してるらしいしな! 

総評。理不尽な試練を負わされた若者たちの話。若者の中での主役もヒロインも悪役も、このシチュエーションの中でいいように踊らされている…そのさまを一つ二つ上のレイヤ(≒アニメ視聴者)として見て楽しむという、設定としてはよくある構造の悪趣味なエンタテイメントと言えましょう。架空の話ならどんなに苦役を科してもええのんか。いや、それはええのんですよ見てる側が悪辣にだろうが清浄にだろうが楽しめれば。でも俺個人としてはなんかこう…ナガラさんもアサカゼさんもノゾミさんも、若い身空でお前らそんな苦しんで道を切り開くほどのスティグマもねえよなあ、とそんな目で見てしまった。これは作品の欠点ではなく、登場人物がおっさんおばはんならば不条理SFとしてすっげえ受容できそうってとこ含めて俺自身の視点の偏りの問題ではある。

別の視点から言えば、先の見えたおっさんとしてのキャラクタではなく若者であることで、これから先ナガラさんたちにはいろんな可能性があるんだろうな、という開かれた未来としての前向きさもある。ていうか、そのレッテルにすがってるとこもある(主に視聴者たる俺が)。だからいいのだという視点とそこがアカンねんという視点と、俺の中に心が二つあるんですけどね。ともあれ、最後に通俗的な解題がされるとは思ってなかったとはいえ、ここまで「情感として落ち着く」ようなラストがくっついてくるとは思わなかったのでそれはよし。実質、ラス前の話でエエ感じの最終回ノリではあったよね。

…んで、でかちち先生と大川透は何だったんだろうな? 俺今メタ的な登場人物となれるならあの二人ぶん殴りに行きたいっす。この辺の感情も制作側の掌上なんだろうけどね!