ゲームウォーズ

アーネスト・クライン「ゲームウォーズ」読了。最近はとんと読書もしてなかったんだけど、こないだのアメコミレオパルドンネタをネットで見てたら「クライマックスでレオパルドンが活躍する米国SFがある」という話があっておもしろそうなので買ってきたもの。んであらすじ、舞台は近未来の米国。エネルギー危機やら環境汚染やらで貧富の差が激しくなった状況下、人々の娯楽と逃避先は超強力なネット世界となっている。ある日そのスーパーネットを構築した天才おっさんが死去、彼は電子的遺書として「俺の巨万の遺産が欲しけりゃくれてやる。探せ! この世の全てをネットのどこかに置いてきた!」とてクエストを設定する。こうして世はまさに大ネットハッカー時代…とまあ、そんなようなお話。

ワシはあまりラノベにも詳しくないのだけれど、ジャンルというか初期的舞台設定はかなりよく見るタイプのアレですわな。サイバーグラスとパワーグローブで没入型のネット世界にダイヴし、人はもう一つの人生を生き、そこで激しい争いと競争を繰り広げる…というね。話の構造もお約束で王道のパターンをよく踏まえていて、主人公はギークでオクテだがネット世界では活発な青年、一癖も二癖もある登場人物、謎をまとうシニカルなヒロイン、そして強大で驕慢な悪役…とまあコマは揃っている。基本の筋が上記の如く宝探しであり、その時点での状況が「ハイスコア」として常時表示されていることもあって、話の目的と進行度がすごく判りやすくて読みやすい。そういう判りやすさとのトレードオフで話の深みやボディに堪える読後感とかの辺りはいささか薄いが、まァエンタテイメント作品としては悪くない戦略のチョイスだと思う。実際、読み終わるまであっちう間でしたよ。

しかし上記のレオパルドンで判るとおりキモはそこではない。シカケ人の天才おっさん(まあ作者)が「そういう人」だったおかげで、この超宝探しクエストはほぼ純粋な80年代オタクの遊園地になっちまってるワケだ。トレジャーハンター(劇中の呼称で「ガンター」)たちは、出会えばドットやベクタスキャンのゲームついて自慢しあい、会話すれば「ハイランダー」や「ホーリーグレイル」の台詞を引用し、クエストの謎にマグマ大使の知識を使い、D&Dの古いサプリメントにヒントを見つける。まあ実に頭の悪い情景であり困ったものである。方向性を判りやすさに振ったエンタテイメントなので、物語上必要なネタには割と丁寧に解説が入っててそこら辺で戸惑うことは少ない。…というか、年代のせいか米国ネタがベースにも関わらず大概理解できる状況なのには参った。いかん、こいつらは俺だ。

それでも話の大部分は(当然ながら)日本ネタはそこそこ程度の顔見世なのだが、クライマックスで上記レオパルドンを含めた「ジャパニーズ巨大ロボット大集合」になった辺りでかなりのバカ。しかしその直後「トクサツ世界夢の大対決」に至ってあまりの絵面に大笑いしたよ。これ、映画化が進んでいるそうだけど、各キャラの権利をクリアするだけでシュガー・ラッシュどころじゃない大概な手間とカネがかかるぞ。やる以上は中途半端なことでは意味無いし、大丈夫かしらん。

てことで、なかなか楽しいお話だった。結構説明されてるとはいえ、触れるだけでスルーしちゃってるネタも多そうだし、その辺解説してるサイトとかないかなとか思ってるとこ。よく判んない人名とか固有名詞とかは大概元ネタがありそうでねえ。…主人公が潜入工作の際に使った偽名がサム・ローリー(ラウリー)とハリー・タトル、これは未来世紀ブラジルやんね。