ヨルムンガンド/サイコパス/ロボティクス

ヨルムンガンド PERFECT ORDER・最終話。ヨナがココの元を去りキャスパーの部隊に編入されて二年、世界はもうなんかエライことになってんのである。第六次中東戦争に始まり新ソ連だの中華連邦だの何だの、欧州はテロの巣となってビッグベンが倒れたり、そんなような。そんな世界とこの期に及んで武器商人として毛ほどもブレないキャスパーとを交互に見て、ヨナくんは「あ、こらワシの精神衛生上あきまへんわ」と気付いてココの元へと戻ることになる。二年間は70万人の犠牲と折り合いをつけるための期間だったっちうとこやろね。…70万という犠牲の数字、それを量と見るか質と見るか。普通の人間には酷なことではありますな。

「空までもを手に入れたヨルムンガンド」もて、ラストシーンでココは世界をひっくり返すに至る…ってところでおしまい。以前にもエスケープフロムLAみたいだという感想を言うたけど、ホンマそのノリは共通しているな。変化の風を受けて皆空を見上げるのだが(車内のアマーリアさんまでも)、スケアクロウとショコラーデのお二人だけは何にも変わってねーのは実にらしいところ。変わってないと言えばその筆頭はキャスパーでしょうけどね。空が無くなれば海運で、それもダメなら戦車で銃で棍棒で儲ける。武器商人とはそういうモノだと嘯く彼の言葉は、実際武器商人だけじゃなく人類普遍のものであるような気がする。ココと対極の存在をそのまま置き続けるというバランス感覚は悪くない、ちうかワシもなんかこっち側の人間のような気がするよ。いや、人間の器じゃなくてそういうことになるやろなあっちう考えでね。

ヨルムンガンド計画を肯定したキャスパーが「何を驚いた顔をしているのか」とココに訊くシーンがよろしい。ココの表情は一切変化していないが、キャスパーにはココの感情が判るのだ。てことは、笑みはともかく今までのイライラやらビックリやらの全ての感情表出も、ココにとっては単なる上層レイヤに過ぎなかったのではないかという想像が出てくる。やはりココさんは底知れず狂っているのだろう。世界とどっちが、ってくらいに。

…あと、この続きの世界を描くってのは蛇足にも程があるとは思うが、状況だけ見たら「かつて一人の狂人に空を奪われた世界を救う!」みたいな語り起こしで、逆の視点からのアクションSFとかの舞台設定やよね。そーゆーのもおもろそうだなと思ったりした。

それとあと、やっぱしジェーニャがロシア語喋ってました。ガルパンに出なかったのが不思議だったけど、まああっちは上坂さんがいらっしゃるからエエか。

●総評。武器商人と少年兵の奇妙な道中のお話。背景にはてんこ盛りに出てくる武器兵器と、それらしく飾り付けられたポリティカルなネタ、それらはお互いによくマッチしている。お話の大構造のヨルムンガンド計画…序盤から周到に伏線を張られたトンデモシステム。かなり議論の分かれるネタをドンと置き、その主体をココというイカレた人物に任せているのが非常に面白い構造だと思う。でも個人的に、この作品の魅力はやっぱし各々のキャラとその動き…もっと小域的なものにあるなあという印象が強い。

ココのどこか実体を伴わない陽性な雰囲気、ヨナの思いつめた鋭さとトシ相応の子供っぽさが同居した雰囲気。どちらも物語主人公の典型からは少し外れた奇妙な魅力があり、初めの頃に感じていた違和感もやがてそれ自体が欠かせぬ個性となって定着してゆく。声優の演技も相俟ってなかなか魅力的なキャラだと思う。

あとまあ、当然ながらこういう複数人のキャラの出る作品だし、サブキャラの突出加減も心地よいよな。超神兵のレームもヤバいヤバいワイリもいいけど、やっぱしバルメねーさんのキャラ造形にとどめをさすってもんだ。元フィンランド軍の少佐にして腕の立ちすぎるナイフ使い。対人戦闘ではほぼ無敵のスーパーウーマンであり、その上であのワケ判んないレズ性格。巨乳腹筋巨女という外見のインパクトも相俟って、もうこのねーさんが創出されたってだけでこの作品の価値がある。ああ価値があるね。あるとも。ゼヒぶっ飛ばされたい。死なない程度に。

原作がマンガらしくかなりクセのあるキャラデザインの雰囲気に合わせたか、シャープでありながらウザくない背景美術の雰囲気も好き。とにかく真っ青な空の印象が強くて、これはココの抜けるような白さとの対比の意味もありそう。うん、見た目にかなりワシ好みな画面でしたよ。大量に出てくる銃器なども、信憑性は知らんけどとにかく「らしい」描写がキッチリしててカッチョ良い。

てことで、楽しかった。構造上これ以上の続編等は無さそうだけど、そうねえ…あの個性的な敵やサブキャラたちのスピンオフとかは見てみたいかな。ドミニク三人衆とカリー社長んとこのレストラン対決とかさ。

PSYCHO-PASS・11話。人間狩り会場に到着のご一統、当事者のコーガミさんは手負いつつも何とか勝利するも、マキシマさんはその上を悠々と去り…ついでに取り返しの付かないお楽しみをぶちまけてゆく、というお話。…事態が際限なく悪化してゆき、ジメッとした不穏さを引っ張って引っ張って、最終的にそのまんっま逆転せずに最悪の形で終わる、という周到かつ底意地の悪い話の流れ。これが虚淵さんの味なのでしょうかしら。

犯罪係数がちっとも上がらないまま平気で悪事を働けるという、マキシマさんの「異常」。うんまあ、犯罪係数ってのがどういう概念のものかイマイチ判んないが、こういうタイプって実際居るだろうね。シリアルキラーかあるいは戦場の英雄か、ってとこか。どのみちこういうケースを想定してないってのはシビュラシステムの欠陥ではあろう。やっぱ強制的なトリガーロックはヤバいって。こういう状況じゃなくてもヤバいって。

クライマックス、左右の手にそれぞれドミネータと猟銃を構えて震えているアカネさんのシーンは、境界線上でどっち側におっこちるかの分水嶺描写として象徴的でよろしい。今回はアチラ側に行けないまま悲惨なことになっちゃったが、さて次回があるならばどうだろうか。…つか、犯罪係数が上がりにくいってのはマキシマさんとアカネさんの共通点でもあるな。ひょっとしてご同類の道を進むというルートもあったりすんだろうかしら。

あと、セングウジさんの最期のシーン、脳殻含めて体の後ろ半分がまるまる吹っ飛ぶというゴアな死に方でしたけど、規制も何も無しだったな。体がロボで義体ならオッケーなのか。おもろいというか何というか。

ロボティクス・ノーツ・11話。君島レポートとガンバレル最終話について。あまり関係の無さそうなこの二つが実は密接にエンタングルしているのですよ、っちうお話。太陽活動についてのオカルトネタを暴こうとする者が何故かアニメ作っててそれでバラし、そしてその人物はフラウさんのお母さんやった、という流れでしょうか? ここにアキちゃんの姉やコンビニ姉さんが関与してくるワケか。まだ先は長そうだな。

ついでにネトゲのトップランカーが軒並み死亡しており、では今ここでこの通りゲームやってんのは誰やねんというオカルトもあり。死体があったか否かで事情は変わるけど、ネタとしてはアレか、ウォーゲーム的なナニか。ゲーム巧者を実戦バトルの兵士としてスカウトするという…。アキちゃんの姉が「戦うしかない」とかもらしてたのもソレだろうか。となると戦う相手は誰だろうってとこだけどね。相互にバトルロワイアル? 何のために? ま、それも先々のことで。

ガンつくのモーションキャプチャー主として大徳さんを採用するが、エンジニア役のフラウさんに対して心底おびえてんのがかわいいなあ。「大丈夫、怖いことないから」って、マジで全く別世界のお二方だってのがよう判る。