反逆者の月2

●デイヴィッド・ウェーバー「反逆者の月2」読了。コリン・マッキンタイアさんシリーズの2作目ですな。前作にてひょんなことから宇宙帝国巨大戦艦の艦長となってしまったコリンさんは、本作にて心ならずも宇宙帝国(ホンマは皇国)の皇帝となってしまう。うーん、すげえノリであって割と好きかもしれん。ま、国民さんたちはさる事情によってちいとも見当たらなくなってしまってるので実に寂しい帝位移譲であるのだが。


さて。前作はスペオペものではあるが「一戦艦内の叛乱」がテーマだったので少々スケールが小さかったかもしれない、とは言い条、月サイズの戦艦とか5万年に亘る叛乱劇とかを小さいとは言いづらいかな。とまれ今度はちゃんと大スケールの星間戦争が描かれる。しかしそれはコリンさんたちが事前に思い描いていた状況とは少々異なったりしましてな、という。


コリン組ははるかな宇宙へ、ホルス組は地球防衛に、と視点が二元化しているのが前半。両者が統合して巨大な敵に当たるのが後半。どちらの闘いも作者の筆致が割と鳥瞰的…大規模な艦隊戦寄りで、かつ戦場風景は限られた数の登場人物を通してしか語られないのであんまし「悲惨な戦い」という雰囲気はしないのだけれど、それでも「あー、地球ヤっちゃったかも」てな後戻りできない感はよう出ている。コッチ側の戦力はどんどん消耗するのに、敵のレベルはどんどんと上がっていくインフレ具合はヒーローマンガのよう。大量の物資と命がバカバカ掃討されてゆく戦いは見ていてアメリカーンな感じですわェ(よう判らんが)。


一方でファーストコンタクトものとしては少々物足りない、ってとこはある。人類含めた銀河系のあらゆる生物の敵であるアチュルタニ(アク=ウルタン)は四脚二腕の爬虫類っぽい生命体…とまあ外見はイカニモなんだけど、人類と彼らの思考パターンの差異はせいぜい「別時代・別文化の地球民族同士」程度でしかない。またその、割と異形な外見に比して仕草も妙に人間くさいんだよな。絶望しては涙を流し、いぶかしんでは首をかしげ、緊張しては胃がキュッとなる。そこらのおっさんとあんまし変わらない。


使用兵器や機械についても同様。ここまで精神的/文化的に近いと、「ひょっとして人類と過去に関わりがあったりすんじゃねえだろうか」と怪しんだりもするが、アチュルタニが単一の性のみの団体で大旅行したと聞いて「うそん、女(あるいは男)ナシでそんな長い間過ごすなんてムチャやんけ」と科学者が驚いてたりすんので多分ワシの考えすぎだと思う。まいいや。


ちょこちょこ感想。■コリン組の「仙台陸軍」は戦場での活躍は寂しげなものの、見せ場として気晴らしバスケにおいて1ゴール決めるたびに「バンザイ!」と叫ぶシーンがあります。なんかもう、嬉しィなってくるぜ。■皇国戦艦のAIボイスは何故か全て女性らしい。せくしぃだったりティーン声だったりとバラエティも豊か。それは良いことだと思います。■読み終わってから我が脳内に築き上げられたコリンとタニのお二人さんの姿は、陰影濃くてバタ臭いアメコミキャラそのまんま。故にカバー取って久々に表紙絵見てクラックラしちゃいました。オススメ。■太陽系内の小惑星数は激減している。理由は地球防衛軍が新兵器試射のためにあらかた粉砕しちゃったから…ってオイ!