ゴースト・トラップ

●ナンシー・A・コリンズ「ゴースト・トラップ」読了。こないだ読んだミッドナイト・ブルー」の続編でございますな。前作にて吸血鬼かつ吸血鬼ハンターとして覚醒したソーニャ・ブルー姐さんが、新たな相方と更なるヴァイオレンスを引っさげての再登場である。今回の舞台はウィンチェスター邸もどきの不思議迷宮家屋で、そこに潜む宿敵・モーガンとの対決がクライマックス…ってとこでして。


いやあ、ワタシ以前にも似たようなこと述べたんですが、こういう「お家が迷路になる」てなモチーフにとっても弱い人間でして。もうそれだけでメロメロ。またこの霊迷邸が通り一遍の迷宮ではなくてですね、量子力学だの何だのの効果によって平面図を眺めているだけで精神的に異状をきたすという、なんかダオロスみたいなすさまじい構造物なんですよ。そ、実はちょっとラブクラフトもハナシにちょっと噛んでたりしましてな。この邸宅が「魔女の家の夢」の元ネタですよ、とか。ワシ読んだことないけど。


クライマックス近辺では割と存分にその迷宮を味わわせてくださいます。がしかしああもっといろんなトラップやら不思議通路やらのシーンを見せて見せて、もっと迷わせて欲しかった! ってそんなワシの特殊な嗜好はどうでもいいですね。


前作は微妙な圧縮度の回想とか時制の入れ替えとか、話運びに少々素直でないところがあった。これはブルーさん自身の覚醒時の戸惑いや懊悩を表現してる点もあるし、また謎や奇妙さを提示することで読者を引っ張っていくという構成意図もあったと思う。それに対して今作の構成は実にリニアでして、ほとんど迷わず一直線に話が進む。…迷路を主題とした作品でズドンと一本筋、ってのもおもろい話だけんど。とにかく、そういう素直な構成なのでかなり読みやすかったですな。


…あと、この作品の裏テーマはTシャツです。登場人物はスキさえあればTシャツに書いてある文言で自己主張するのが義務付けられているみたい。「1990ツアーを妨害するぞ」とか「十字軍の罪はキリストが贖う」とか「死んでもサーフィンやれ」とか。ワシにはほとんどニュアンスを捉えきれないのが残念。ま、それほど残念でもない。どないやねん。