侍/妖奇士

SAMURAI7は最終回。野伏せりとウキョウ一党を倒すため、サムライたちはその身を挺して刀を振るう。そして物語は例の「また生き残ったな」「勝ったのはあの農民達だ」に繋がるワケだ。後者の台詞、原典の映画よりも前向きなニュアンスで語られるのがちと面白い。


崩壊しつつ爆走する巨大な都とか、重機動メカサイズの攻撃を刀一本で受ける剣戟シーンとか、最終回らしいスペクタクル満載の展開でよろしかった。足だけを残して散ったキクチヨ、こういう見せ場を作ってもらえたのは素直に嬉しい。好きだし。…ウキョウの迷走ぶりはどうかと思いましたけどね。「なかなかくたばらない」という仕掛けがあまり有効に働いてなかったような。


総評。事前に思っていたよりもずいぶん行儀の良い作品でしたね。作画的にそういう固さ、というかぎこちなさがあって少々息苦しかったのだが、例の奥野/森回というサプライズのおかげでとてもリフレッシュできたのは確か。その後もちょいちょい面白い絵があって、その辺は思わぬ僥倖だったですなあ。


オリジナル展開である後半は、設定が巨大になりすぎたのを制御しきれていなかった感じ。カンベエが捕まったりカツシロウが失望したりキララが三角関係だったり、そういった個々のエピソードがほとんど有機的にからまないまま投げ出されててね。ウキョウのメゲない悪辣さが楽しみで見ていたのだけれど、クライマックスで急速に能無しになっていったのもどうも納得行かなかった。


…まあ、こういったある種のユルさは必然だったのかもしれない。骨の髄から訴えかけてくるような原作映画の「必死さ」や「本気具合」、そういうのを娯楽TVアニメで見せられても困るから、とかね。半年の内の1話か2話くらいそんなんがあっても良かったとは思うけど。とりあえずキクチヨがかっこよかったのでいいです。


天保異聞 妖奇士6話。何か知らんが、一介の小娘にケツァルコアトルが憑いてて大変なことになる話。友を殺したが復活したので殺したことをキレイサッパリ忘れる、というユキさんの記憶の封印っぷりの恐ろしさとか、若本規夫遠山金四郎のモノマネをしつつ馬がお白州に出てくるとか、そういうディテイルを含めて…なんじゃこの展開。すげえな。


見てる方は良く判んないが作ってる方は判ってるらしい展開ロジック、語ることが多すぎてエライ詰め込まれたシナリオ、やたらとデカイ世界観がごく小規模な登場人物に繋がる設定。…なんかこれ、カルト映画みたいになってまへんか? 江戸の異形を退治るゴーストバスターズ、みたいな設定の作品で、序盤の段階でここまで迷走したシナリオを持ってくるアドバンテージが今ひとつ判らないが…カルト映画だと思えば「なるほど」と思えんこともない。


細かいディテイルがすっ飛ばされているにも程があるので、どうも判りにくいんだよな。結局普通に会話するようなシチュエーション(若本は「いいところに来た」とまで言う)なら、「縄で縛られる一行→見張りの女がクモシチに驚く→その隙をついて体当たり、不当に脱出→誰っにも咎められることなく奉行の部屋へ到着」、と、わざわざツッコミどころ満載の展開にする必要は何なのか。それはもう、製作側の意気が高いからでしょうね。世間的瑣末事に拘泥してるヒマは無い、と。ますますカルト映画ですよこれは。


とりあえず、大仰なBGMの元で「馬がUFOとなって空を飛び、そののち黄金龍ナースになる」という絵面にはしこたま笑わせてもらいました。かなり後ろに引いた構図のモノクロ風景に金色のUFOが飛び、拾遺的な文章が乗っかってジャジャーン! と音楽が鳴る、というリアルとギャグの界面みたいな状況は、最近のアニメとしてはちょっと無い体験ではあった。