遠近法時代

●夜中部屋でボーっとしてたら、いきなり耳元に蚊が飛んできた。ワタシの所ではこの時期にでもたまに蚊が出る。全く鬱陶しいことだ、と体の向きを変えたとたんに判った。蚊なんか居りませんねん。「羽音」の正体は遥か遠く、自動車のエンジン音。一旦そう聞いてしまえば、もうどうやったって蚊の羽音には聞こえなかった。


…こういうのってなんて言うんだろ? 音響的な遠近錯誤? そういや視覚的な遠近法は技術として様々研究されてて、それでアートとか娯楽とかに応用されてるんだけど、聴覚分野でそんなのってあんま聞かないね。音だけに聞かないってか。ゲハハハ。


例えば遠くのほうで銅鑼か何かを間断なく鳴らして、いきなり至近距離でそれとそっくりな小さな音を鳴らすことで、音源が遠くにあると仮定すると大音声じゃないか、と錯覚させてビックリさせる、てなシカケってあり得ますかね? …うーん、難しいか。じゃ、落語の「鷺取り」みたいなんってでけへんのかなあ。


●小さい頃親父にヘンなこと吹き込まれましてね。お空にある雲ってのは、どれもこれもほぼ同一の大きさである、というネタ。それ聞いた幼少時のワタシは思ったものだ。あそこのカケラのような雲。あそこのゴミのような雲。あれらも、今そっちに見えるでかい雲と同じ大きさなんだ。ということは…ああ、あの小さくみえる雲はなんという距離にあることか! 想像もつかない! 


…まるで無限に深い井戸を覗き込んでいるような感覚。よってワタシは、お空を見上げるたんびにクラックラしていましたとさ。ひどいやひどいやマイダディ。ええけどさ。


●似たようなことは、深宇宙の銀河写真を見ると味わえますね。銀河にだって大きさの差異はあるが、流石に雲よりかは揃っているので遠近感は結構味わえます。例えばこれなんかどうか。ホーグズオブジェクトとか言われてる銀河をHSTで撮った写真なんだけど、輪の内部真上ちょっと右あたりに小さなワッカが見えません? これ、同じくワッカになった銀河だと考えられている。てことは…なんと遠くにあることか!