夢の話は誰も聞かない

●夢を見る。まず第一幕、細長いオフィスで何か事務仕事をしている。そこそこ年期の入った建造物であり、なんとなく古い小学校の職員室といった趣がある。古臭いデザインの窓外はすぐに崖、そして海である。外の天候は少々荒れ模様のようで、雨こそ降っていないが風は強く、空には鼠色の雲の帯が渦巻いているのが見える。


海側の壁面にアルコーヴ状の凹所があり、パーティションで区切られて編集長だか部長だかの机がある。白髪を後ろになでつけ鶴のように痩せたその編集長が、荷物を整理しつつ名残惜しげに周囲を眺めている。この部署を去るらしい。壁にレターラックがかかっており、誰か外国人と肩を組んでいる古い写真やらレシートのような紙片やら色々とさしこんである。編集長の思い出の品のようで、写真の裏には何か漢字が書き付けてある。


彼はワタシを目に留める。おお君もここは長かったよなあ、色々と世話になったなあ、とか喋っている。そして件の写真にまつわる話をしてくれているようだが、内容は良くわからない。編集長はこの写真を焼き増ししてやろうかと言ってくる。別にワタシは欲しくはないし、焼き増しの金がもったいないなあとも思うが、まあここはもらっといたほうが気ィ悪くならないかなあ、と思っている。


唐突に場面変わって第二部。草原にて犬を散歩させている。この草原はさっきのオフィスの裏手にある。真っ青な空ときつい海風で、否応なく爽やかな気分にさせられるような場所である(さっきの曇天は解消したらしい)。犬はやたらとでかいコリー犬で、かなり遠くの方をスローモーションの如く走っているのが見える。ああ、あんまし遠くに行くと迷子になるぞと思うが、この犬はそういう説教じみたことを言うと拗ねてしまう。そのくせ簡単に迷子になるのが頭痛の種である。


ワタシはその場に座り込んで何の気なしに草の葉をちぎる。ふとその葉を眺めると斜めに赤い線が入っている。あ、これは嵐の予兆だ。確か昔読んだ子供向け雑学本にそういう記事があった。早速帰ろうと思うが、さてあのプライドの高い犬にどう意思を伝えたものかなあと思案する。考えてるところで目が醒めた。


●以前別のところでも書いたけど、ワタシの夢に出てくる「犬」は大概の場合エロっちい印象が付きまとう。いや、夢見てるその時はそう思わないし、こうして文章に書き出してみてもそういうシチュエーションとは程遠い。が、目が醒めてつらつら思い返してみると、何故か「あー、あの犬はエロいな」と感じられてしまうのだ。今回のコリー犬は特にその傾向が強くて困った。いやホンマに困った。何がどう具体的に困ったのかは特に言わんけど。


●ほとんど関係ないけど、つまりまあ「犬」ってことにしか関係がないけど、カウボーイビバップの天才犬アインさんね、最近いろんなとこで「あの声は山寺宏一だった」という記述を見かけるのだけどホンマなのかなあ。確かに山ちゃん本人がそう言ってるのも見かけたが、アレは「ワイルド・ホーセス」の予告の時だけじゃないのかなあ。「あ、喋った」ってってる回ね。アリモノか新録かは判らんが、大部分はホンマモンの犬の鳴き声だと思うんだけどなあ。というまあ、そんなような話でした。おしまい。