夢の話は誰も聞かない

●夢を見る。何だか知らんが格闘技を見て帰る。「解説の馬場さんに、みんな大きいですね、って言われたらそりゃ萎縮するよね」「あの人より大きい選手、一人しか居ないよな」


会場を出るともう空が暗い。O川は「さて。みんな久しぶりだし、俺らちょっと麻雀するわ。じゃ後で」と言い、麻雀組は去ってゆく。A野先輩は「みんなお前の家泊まりでいいのか? 俺の家もOKだが」と言うが、自分は「いいですよいいですよ。今の時期なら泊まれます」と答える。


そこから家までI村と歩く。「O川、あいつ手術するんだろ?」「うん。俺もだよ。でもまあ、明日のレポートには支障ないだろう」道の左右には延々と本棚が並んでいる。「本の森だな」とI村は言う。様々な色の背表紙が並ぶ。あの本は何だっけ。シドニィ・シェルダンだっけ。よく判らない。


これが夢である事は判っている。そしていつかは夢から覚めなければならない。覚めるにはI村に「本の森なんて状況は現実にはありえないよ」と言えばいい。I村は言う。「前に来た時、面白そうな本があったんだ。たしかあの角らへんだと思ったんだけど」そんな角は無いんだよ。面白そうな本も無いんだよ。そう言えばいい。


しかし言えない。夢から覚めたくなかった。そのまま無言で、自分の家に向かう。


そこで目が覚めた。