少女終末旅行/キノの旅

少女終末旅行・最終話。原潜の中を探検する二人プラスワン。システムとカメラが同期して大量の過去データ…人と人類の歴史が見られるのは、なんかこうグッと来るものがありますな。今はもうないそれらの人・世界。そして島本須美声のエリンギさんたちは、強大な兵器とともにそれらの過去も無力化して去ってゆく。どうやら、この場所にはもう、チトとユー以外には誰も居ない。…目指すは上層、そして月だ。あの空の向こうの…って空が破れてますね。上層ってかなり高いぞ、これ。

テーマとしては過去と未来。ちーちゃんは本やカメラなどで記録(≒過去)を大事にするところが大で、それは刹那的なユーにとって薄い要素なんだけど、ユーさんはそれについて「寂しくない気がする」という観点で理解する。この話のラストは一応明るい感じで〆てはいるけれど、二人が居ればそれでいい、ってのは寂しさを受け入れなきゃならんってことで、ちょっとした悲劇要素ではある。絶望と仲良くなるにはそのくらいの悲劇性が必要、ではあろうかしら。

●総評。終末的な世界をバディでゆく話。1話でも書いたけど、廃墟をただ進んでゆくというのはある種の人にとっては快感であり、余計な要素を極力廃してその欲求と直結したような設定のこの作品はほぼポルノであると言える。女の子がそこに主役として据えてあるってのも非常に判りやすい構図でありいいことでありますが、ここまで突き詰めてあるとちーちゃんとユーのゆるいゆりっぽさも無くていいかなとさえ思ったりする(個人的な意見です)。

1話の感想で「もっと尖ったビジュアルの方が合ってんじゃないかな」と言って、今もまあそう思ってんだけど、通して見ると色彩をストイックに絞ってシンプルに徹したこのデザイン方向はアリではある。主人公も背景もザックリとした単純さがあるので、アニメ的に画面として間を持たせるには結構センスが要るよな。そういう意味でもよく仕事してあるな、と思いました。

過剰さを削いで「良さ」のエッセンスを正しく提示する。雰囲気アニメの側面からしても、とてもちゃんとした作品だったと思う。この先原作がどこまでストックされてんのか詳しく知らんけれど、続編があればかなり積極的に見たいところ。期待して待ちましょうか。

キノの旅・最終話。羊たちの喧騒、あるいはヒチコック的悪夢。のどかな草原を走ってたら理由もなく(一応オチに理由は明かされるけど)獰悪な羊の群れに襲われて九死に一生を得る話。あのキノさんがここにきて絶体絶命になっちゃう、その理由が人喰い(喰わないけど)羊、ってのがシュールである。襲い来る羊を車で撥ねるわ銃で撃つわ火で焼くわとえらいことやった上で、その原因が動物愛護の観点からこうなりました、ってのが笑いどころ。

羊のキャストに浅野真澄小林ゆう金田朋子松田利冴。なんだろうねこのムダ豪華なメンツ。めーめー言ってるだけでしゃべりもしないのにこれだ。人っぽさを出すことで恐怖感は薄れたが、動物虐待要素もちょっと薄れた…のかな。あと、ここで一旦終わりですのエピローグをくっつけてシメ。

●総評。バディものロードムービーというか寓話連続話というか、そんな感じ。主人公二人がともにそこそこ自立自活でき、かつ精神性も割り切りがあってそこら辺のストレスが極力少ないのはよろしい。舞台である各国の様相を浮き上がらせる為にそういう設定にしてあるんだろうけど、やっぱテメエでなんとかできる主人公ってのは好みであるな。

話としてはそこここに無理があったりもするんだけど、それは上記の通りある程度寓話性を持つシリーズなのであえてのことだとは思う。何度か言うたかもしれんが、そのように寓話性が高いこととこの作品のヴィジュアル設計の食い合わせが若干個人的な好みから外れちゃうな、ってとこはあった。もっとクセやアクのある一点突破な特徴のある絵柄・BGの方がしっくり来たんじゃないかなと。なまじ端正なデザインであるだけに、話の大づかみさとの齟齬があるようなエピソードが時々。あとこれも寓話性とのカラミだけど、雰囲気や間合いがちょっと足んなかったりね。

全体としては丁寧なつくりで、また1話完結で舞台も変わるってんでなかなか飽きず楽しめたのではあります。多分原作ストックも多いだろうし、人気あれば続編もイケると思うので、もしあれば見たいかなと。うん、まあ、そんな感じ。