氷菓/坂道のアポロン/つり球

氷菓・5話。時の姪、「氷菓」の由来話のシメ。エエ感じの一区切りになってて、あるいはこれでシリーズの最終回でも悪くないくらいの雰囲気はあった。…過去の昏いエピソードにまつわる怨嗟の言葉、されど奉太郎さんまで数十年間誰も気付いてあげることのできなかった呪いの叫び。それを作品タイトルにしちゃうってのはなかなかのダウナーギミックではありますねェ。とは言いつつ、アイスクリームでI scream、ってのはワシの世代的に榊原郁恵とか思い出しちゃうのであり、ネタの昏さの割にどうもほのぼのしていけねェやな。

今回は謎解き回だけあって場面展開もそこそこ起伏多く(関係者集めて種明かしってのは推理モノの定番じゃよね)、こないだのように凝った演出が目立ち過ぎるってほどでもなかったかなとか思った。クライマックス近辺のイメージシーンとかよりも、図書室に入ってきて糸魚川先生と会話し始めているシーンの「一見普通の感情の表出と会話に見えるのに、何故か場面の雰囲気が重い」っちう辺りの方が印象的だったですね。どこか素直じゃないレイアウトにしたりカット尻を微妙に長く残して鈍くしたり、何かありそうだなという予感を漂わせる演出が上手い。…糸魚川先生は「氷菓」の由来を本当に知らなかったのか、ってのを曖昧にして置いていくってのがまた、苦い余韻を残す要因ではあります。

あとはアバンの奉太郎と里志の会話ですか。灰色バラ色隣の芝生は緑、色に関する会話にいちいち画面の色彩を呼応させる。ちょっとあざといくらいの見せ方なんだけど、開始早々に視聴者を掴むという意味ではこのくらいのあざとさの方がエエかもしれない。シーンラスト、何故か雲の影の中に居る里志さんが思わせぶりですな。軽薄で饒舌なこの人も多分、何らかの闇を抱えているっちうこっちゃろね。

…にしても、上記の通り割と重苦しいネタではあったのに、それを封印することなくフツーに文集にしちゃうのな。そんなけ吹っ切れたのだっちうことでしょうかねえ。

坂道のアポロン・6話。皆さんアレコレと恋を思う状況であるが、いかんせんその矢印は一方通行にも程があるのである。交わらず向き合わず、ただ一方向に流れるのみ。割と無頓着に一喜一憂する千太郎さんが一方の端っこなら、極端に意識して揺れ動き続けるボンはその対極。そしてそのステージに、岡本信彦声の魔性っぽい青年が介入してくるのであって…っちうね。何やら企みがちで小悪魔っぽい様子だけど、根っこんところは案外人情家っぽい感じもするな。まだよう判りませんが。

とまあそんなゴタゴタの一幕なんだけど、メインはやっぱしとことんめんどくさいボンの姿でしょうねえ。過剰なほどに気を回そうとして空回りしたり、言わなくてもよい一言をつい言ってしまったり、かと思えばちょっとした言葉に過去のトラウマを刺激されて遁走してしまったり。なんちうか、大時代的な耽美ヒロインのようなよろめき方だ。エピソード一つ々々を取れば結構ダウナーな雰囲気なんだけど、これだけ天丼でめんどくさい行為を重ねられるとちょっとギャグの域に踏み込みかけているような気がする。

…これ多分、原作ではもうちょっとエピソード間に余裕があるんだろうな。アニメ化でまとめてしまった故のギャグっぽさかもしれない。いや別にその軽さはワシ嫌いではないけども。変に重苦しくなるよりは、ね。

つり球・6話。もうすっかり打ち解けてフツーに釣り仲間としてつるんでいるお三人さんである。その様子を横目にどうも踏ん切れないのがインド山田さんであるが、何だかんだでどんどんとデレてっちゃってんのがちょろいというか。とか言うてるうちに、何やら雲行きの怪しい要素が見え隠れするのは何だろう。行ってはいけない謎の海域。踏み込んでしまったことで起こるハルの暴走と時間の欠落。…とりあえずはその辺をチャラにして、何とか日常に復帰するご一統であるが、しかし…というね。

それまではのほほんとした雰囲気であった話の流れが、ガクリと急激に方向を変えてちょっとしたホラーっぽい雰囲気にまで踏み込みかけるクライマックス。この監督の作品のつかみどころのなさを再認識したってとこかしら。ハルさんの暴走は彼の使命と彼の意思の相克によるものだろうか。「それ以来ハルが心から笑うことは無くなった」ってのもちょいと不穏。…不穏っちゃァ、ケイトおばあちゃんが退院してきたのも要らん心配を感じたりするんだよなあ。本当に恢復したから退院した、のだろうか? ワシの考えすぎだろうか?

龍と神隠しに詳しいファンキー宮司古川登志夫。確か1話のアバンも古川のおっさんだっけか。ケイトおばあちゃんの平野文とペアで出てくると、やっぱなんちうか…感慨深いよね。たまゆらでもそうでしたけどもさ。