氷菓/坂道のアポロン/つり球

●新番組・氷菓京アニ新作ってことで結構な耳目を集めていた作品であるが…ははあ。学園ミステリモノですか。主人公の奉太郎さんはちとニヒル気味な探偵役、ヒロインのえるさんはお嬢様っぽいが行動力と好奇心の事件導入/発生役、んでもってサブ主人公の里志さんがデータと説明によるワトソンライクな役目…ってとこですかね。えるさんの髪の毛が突然伸び伸びしてきて奉太郎さんに襲い掛かるイメージシーンにちと引き笑いしかけたのだが、これはアレですか、えるさんは「周囲を巻き込むキャラ」だという表現ですか。ひょっとしてこのモチーフ、今後も定番として出てくるのでしょうか。エエけど。


さて。今んとこ彼らが対象とする「事件」ってのは割としょーもない程度のもの、何故か鍵のかかってしまってたドアだの誰が書いたか判らない勧誘ポスターだの、である。ゆくゆくはどの程度まで大事件化するのか判んないけど、ワシは割とこういう瑣末なミステリが嫌いではない。なんかこうアシモフの「黒後家蜘蛛の会」みたいですよね、つってたら本アニメにも「女郎蜘蛛の会」っちう固有名詞が出てきた。やっぱ意識してんだろうか。


アニメとしてのクォリティは流石に京アニ、一歩も譲るところのない超端正な作画と演出。ただ歩くだけ、話すだけ、何か所作をするだけの芝居に過剰なリソースを注ぎ込むヤリクチはもはやこのスタジオの伝統芸である。劇中奉太郎さんは「省エネ」を標榜し無駄なことはしないと言ってんのだが、作品の表現形式がその間逆であるのは一種の自己言及的ギャグだろうか。…見た目もシナリオもやたらと具が多いので、慣れるまでしばらくは「ちょっとウザってェなあ」とか思ってしまいそうだ。


ふむ、しかし、今んとこ面白そうである。もう大概今期アニメの本数も出てきてるのだが…これは見てみるかなあ。


坂道のアポロン・2話。薫さんが千太郎さんとりっちゃん(主にりっちゃん)に対して理解を深め、二人(主にりっちゃん)に近づいてゆくお話。今んところは「主にりっちゃん」というまあ、正しき青少年的なモチベーションではあるけれど、今後はジャズを通じて千太郎さんとの関係性を深めてゆくのだろうか。時制が過去の物語なので、ゆくゆくどーなってくのっちう妄想はいろいろと広がりますけどね。…これ、原作って完結してたっけ? まいいや。


りっちゃんりっちゃん書いてますが、薫さんはこのナヨっちい外見やヒネこびた1話の印象の割にかなり積極的ではあるのよね。二人っきりになったら即座にデートに誘ってる辺り、ちゃんと人間関係してますやんかいさ。んで千太郎さんの方は…こっちはよくよく喧嘩に縁のある人だ。ワルモノに囲まれて困ってるとこに颯爽登場、っちうシチュを今回だけで二度こなしている。二回目のイヴェントにてめでたく運命の人に出会いまして、えーとこれで薫→りっちゃん→千太郎→お嬢さん、という相関図が成り立ちました。これであの遠藤声のお嬢さんが薫さんにホれたら割と面白い。


地下室にてセッションに飛び入りさせられ、ジャズの世界に加わっていくというシーンはベタもベタなんだけど、それをアニメで充分に表現するのはかなりめんどくさい。ここだけで結構な準備と制作のリソースが注ぎ込まれただろうなあ、とかそんな下世話なことが気になったりした。


つり球・2話。なしくずし…というかハルさんの強引さによって釣りを始めるユキさんである。しかし周囲に居るのは言葉の通じない宇宙人に終始不機嫌な釣り王子という状況、もとよりコミュニケーションに問題のあるユキさんにとっては茨の道に等しい。一旦戦場から脱走したユキさんであるが、しかしある感情に気が付きまたもや釣りに戻ってくるのでして…っちうお話。


釣具屋のみーな姉さんや謎の宇宙人お嬢さんの言うとおり、ユキさんが釣りの世界に戻ってくるのは少々意外だなとワシも思った。んでちょっと思い返してみると、その理由ってのは「釣りのとき悔しかったから」じゃなくて「釣りのとき悔しかったということに気付いたから」なんだよね。彼にとって、そのような対人的な感情の表出それ自体が重要なことだったんだろう。釣りをすればひょっとして、また何らかの対人交流ができるかもしれない。その第一歩だった、っちうこっちゃろね。


病気の概念がなく人間の心情に疎いハルさんはマジで宇宙人なのか、あるいはまた別の超越的存在がそう思い込んでるだけなのか。金魚だったり女性姿だったりするおねーさんも割と謎ですけどね。ナツキ王子も家庭的にめんどくさいネタ抱えてるようだし、おばあちゃんもどうも身体が優れないようだし、ダウナーな方向に進む要素がチラホラ見えますなあ。さて。