未来日記/UN-GO/ギルティクラウン

未来日記・12話。病院篭城戦、そして4thクルス刑事の退場の巻。難病の息子のため神になろうとしたが果たせず、最後に全てのことに自らケリを付けてこの世から去るおっさん…という、なかなかシヴい役所をこなすクルスさんであるが、その余韻をイーイ感じにプチ壊すムルムルさんのオマケコーナー。「まあ聞け」という、物語作法上では「なるほどこの後ちゃんとした説明になるのだな」という定番台詞を連発しながらちっとも要領を得ないクルスさんのお話がバカでよろしい。そーか、おっさんギャン好きか。ふと気になって中の人である田中正彦さん調べたら二代目マ・クベなのな。てことはこのオマケ、アニメオリジナル? あるいはちゃんと原作にあるエピソードで、アニメ化にあたりこの瞬間を見越してのキャスティングだとすればスゲエ。スゲエっちうかバカだけどな!


さて。上記の危機を通じてなんかまた一歩進展してしまうヘタレ青年とガチストーカーのカップルである。SAT相手に走りながらの銃撃戦で場を制圧する超人的戦闘能力の、思い人に接近する人間は容赦なく排除する極端思考の、そして純愛の人。…前記「思い人」という単語がまず一発目の変換で「重い美と」になっちゃったのがあんまし笑えない。ユッキーの告白や結婚式イヴェントも「そんなフリをしてくれるだけで嬉しかった」とちゃんと気付いている辺り、単なる思い込みの激しい人というレベルではないのが判る。うーん、面白いキャラ設定よな。


一段落して次は誰が相手かね。みねねさんは今後も付かず離れず、ちょくちょく出てきてくれると嬉しい。ちうか通常は蓮っ葉口調なのに、西島刑事の前ではフツーの女性口調になっちゃうみねねさんかわいい。もう結婚しちゃえ…って、お互い悲恋に終わりそうだけどなあ。まあ。


UN-GO・最終話。亡くなったはずの海勝会長よりのご招待。群盲によって撫でられる象はその撫で役に新十郎探偵を使う。そして真犯人の指摘と…あとは別天王ちゃんの始末。なんか知らん、因果VS別天王のバトルだけいきなり「ボンズアクションアニメ」になって割とビビった。作画陣が「もう我慢できないよ」状態でしたか? あとあの、宇宙空間に浮かぶ発電プラントは監督つながりでガンダム世界への架け橋、なのか? まいいや。


最後までおいしいところを取ってったのはやっぱし会長でありました。通り一遍のラスボスや黒幕とも異なる、面白い立ち位置だったねえ。新十郎探偵がどこか頼りない、迷い悩むキャラであることを際立たせるためのブレなさ、安定感がなかなか。…にしても真犯人が速水さんでした、っちうそれ自体は想定の可能性範囲内だけど、「泉先輩が好き好きでしてん!」っちう動機とか自殺失敗しちゃうとか挙句の果てに泉ちゃんと一緒の車で護送されるとか、なんかもういろいろと残念なことになっててホンマ面白かった。ラストの車内、気まずいやろなあ…。


快刀乱麻を断つと言うには推理ミスもやらかしてたりしたが、それでも最終回は一応探偵主人公としての役目をちゃんと果たしてたな、って感じですね新十郎さん。「…大事件がね」と第1話の台詞を再帰させるとか、見得の切り方もサマになってたし。あとカザモリ兄様はほとんど台詞無かったものの、シメの時にツインテ姿見せるとか最後まであざといな!


●総評。坂口安吾の著作を大幅に換骨奪胎してアニメアダプテーションしたもの、らしいが安吾についてよう知らないのでその辺りの言及はしない。水島精二監督に會川昇脚本という、何と言うか「温度低くて湿度高い」雰囲気の調理者に、この濃い目の設定はよく合っている、ちうか合いすぎている。実際内容の濃度はかなり高く、特に一話完結形式の回だとあからさまに「ネタ多すぎて尺が足りません」っちうのが判っちゃう。駆け足気味だったり構成に工夫を入れたり、演出とコンテはさぞかし大変だったろうな、と思う。


特異なのは助手の因果さんの存在で、「なんでも一つ自白を強制させる」という彼女の能力はオーソドックスな推理モノであれば到底登場できない類のものだ。一応作中で因果能力に対するエクスキューズも行われているが、さらにここにはもう一つの真実を扱う海勝会長の存在もあるワケで。故に、この作品は「真実は一つ」という金言は通用しない。シリーズを通し、新十郎探偵は真実の狭間で迂遠な道のりを迷うことになるのである。


それ考えると、上で推理モノっちうたけど、正確には探偵モノやね。そして探偵モノの主人公にしても結構な度合いで悩み、ぶれて挫折するのが新十郎である。むしろそうして、彷徨することがこの作品における彼の存在理由なんでしょうな。ジャンルを置き換えてみれば割と真っ当な「青年主人公アニメ」のテンプレではあるのだけれど。


新十郎以外のキャラもいろいろおいしくてよろしかったな。後半になってグイグイと株を上げてきたお嬢様と泉女史のヘッポコ加減もよろしいが、やっぱしカザモリ兄さまじゃよねえ。情報活動の申し子にして世界中のえろ知識の権化、んでもって外見はデッドパンなろりデコ娘。あざとい。折に触れて低いテンションで新十郎をおちょくりにかかる様子が面白くてねえ。…こんなあざといキャラにも、ぬいぐるみ形態でベロ愛撫させるという生々しいアレさを盛り込んでくるのが會川らしいっちゅうかなんちゅうか。


てことで独特の情念の詰まった、噛み応えのある作品だったと思います。もうちょっとエピソード増やして、基本2話構成ぐらいにして、しょーもないフィラーエピソードとかツッコんで2クールにしてくれたらワシが喜んだんだけどな。作ってる方はしんどくて死ぬでしょうけど。…映画も見たほうがエエんかなあ。


ギルティクラウン・11話。GHQの内乱により各地で結晶化ウィルス症が猖獗を極める。もうどーしよーもないなーっちう中、シュウさんは皆に頭を下げて助力を…ヴォイドの力を請い、ガイ兄さんといのりさんの許へと駆けつける。いのりさんの歌は世界を救い、シュウさんの力もそれを支えるかと思いきや、トンビにあぶらげかっさらわれて元の木阿弥となりました、というね。


今まで出てきたヴォイドをバラシ展開して要所で使い、吶喊しつつ敵陣中を突っ切ってゆくシュウさんたちはちゃーんと「主人公」しててよろしかった。何とかなったかという最後の最後で思わせぶりな人に台無しにされちゃったという、いかにも中盤の肝らしきサプライズもよし。これで日本は半崩壊してエライことになって、ってのが2クール目の展開っすかね。頼りになる(?)アニキがこの段階で退場しちゃうってのは…グレンラガンのカミナ的というか、エグゼクティブディシジョンのセガール的というか。いや、来週シレッと回復してるかも知れんけど、それはまあそれで。


今までガイ兄さんの後追いしかしてこなかった(それでも充分な成長ではあるんだけど)シュウさんが、最大の踏ん張りどころで「自分には自分のやり方しかできない!」と奮起するという流れはよろしい。その後吶喊攻撃中に「こんな時ガイなら退かない!」とガイさんの呪縛を引きずったままだったのは、まあご愛嬌として。…ただ、友人たちに「何故あのテロリストの味方をするのか」と訊かれて「彼らが今の自分に力と存在意義を与えてくれたから、だから彼らを信じ助けたい」と返すシュウさんはちょーっと危ういかなあとは思った。物語上は間違いなくそれで正解、正義の味方は葬儀社なんだろうけど(もし違ってたらそれはそれで面白い)、論理構造はそのまんま「悪のテロリストに懐柔利用されてる鉄砲玉」のソレやよね。「悪の新興宗教に操られてる木っ端信者」でもいい。スタッフがどこまで自覚的なのかはちょっと図れないけど、その文言に対するカウンター的な要素を置いてないので余計に危うくてさ。気になったりした。


あーあと、敵陣はやっぱしどいつもこいつもキャラ立っててよろしいね。陰謀ボステンプレの井上和彦さんはまあいいとして、単細胞ジョックを貫き通して退場したダンさんやら敵方にあっても更に裏があんじゃねェかって感じのセガイさんやらね。そしてやっぱし今回も負けてしまうダリルさんはもう、一直線に不幸怨嗟路線突き進んでて頼もしいぞ。このままいっちまえ!